Web 絵草紙
「愛宕護の山の聖人、野猪に謀られたる語」 4/4

夜が明けて、菩薩の立っていたあたりの地面を見ると、多量の血の跡があり、それをたどって行くと、だいぶ下った谷底に、胸から背に矢の立った大きなクサイナギが転がっていました。
まだ嘆き悲しんでいた僧も、これを見ていっぺんに悲しみの心が醒めてしまいました。
そんなわけで、聖人といっても知恵のない者は、こんなふうにだまされ、殺生を仕事とする猟師でも、思慮のある者は化け物を見破ることができたのです。
 
それにしても、このようなけだものが、人をだまして身をほろぼすとは、何の益も無いつまらない事だといった話です。
 
 
(クサイナギ: 野猪と書かれていて、イノシシとかタヌキといった説があり不明)