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「尊く拝みたてまつりました」と猟師は答えたものの心の内では
『長年法華経に精進する聖人に、姿が見えるというのはもっともだが、この子供や自分など、経も知らぬ者の目にこんなふうに見えるのは不思議なことだ。真偽をためしてみようと思うが、信仰を深めるためなのだから、罪にはならないだろう』
そう思った猟師は弓に矢をつがえ、ひれ伏している僧の頭ごしに、弓を強く引いて菩薩に向けて射掛けました。
矢が菩薩の胸に立つ──と見るうちに光は消えて、谷に向かって、地響きさせて何かが逃げてゆくようすです。
「これは、何をなさるのか!」僧は驚いて泣き叫びます。
「お静かに願います。ひどく怪しい思いがしたので、ためしてみたのです。けっして、あなたの罪にはならない事です」
猟師は様々になだめましたが、僧は泣きやみません。
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