Web 絵草紙
「大蔵の大夫紀助延の郎等、唇を亀に咋はれたる語」 4/4

どうやら出血がおさまったところで、刀傷などの薬とされた蓮の葉を煮て、その汁で湿布をしましたが、ひどく腫れ上がり、その後は化膿して長いことわずらったとのことです。
 
主人始め、これを聞いた人は誰も気の毒とは言わず、ばかにされ、笑われたということです。
もともと人の歓心を買おうと下らない真似をする人でしたから、こんな事になったのですが、その後は、悪ふざけも控えて、今度はその事で同僚に笑われたりしたものでした。
 
それにしても、亀の首は四五寸も伸びるものなのに、唇を寄せて吸おうとすれば食い付かれるに決まっているわけで、身分の上下を問わず、誰でも、そんな不用意な戯れ事はやめるべきでしょう。
こんなばかな真似をして笑われた男もあったという話です。