ほかの者も寄ってきて、刀の背で亀の甲羅を叩いたりしますが、叩かれて興奮した亀は、ますます力を入れますから、さらに歯は食い込み、男は手をふるわせて泣きわめきます。 取り巻いた人の中には気の毒がる者もいましたが、また、脇を向いて笑う者もいます。 そのうち、ひとりの男が亀の首を刀で切断しました。 それで、胴は落ちましたが、錐の先のような歯を男の口に食い込んだままで、頭ははずれません。 その首を板に押しつけて、亀の口の脇から刀を差し込み、あごを上下に切り離し、食い入った歯を一本ずつそっと抜いてゆきましたが、抜くごとにその穴からたくさんの黒血がほとばしり出るのでした。