今は昔、ある国司の家来で、勇猛な武士と見られたい為に、人前でひどく武ばった様子をする男がありました。 その男が夜明け前に出掛ける用事ができて、男の妻は食事の用意をしようと、暗い内から起きましたが、差し込む月の光に、烏帽子もかぶらないぼさぼさ髪の男の影が映りました。 てっきり泥棒と思った妻は、慌てて寝ている夫に駆け寄り、 「大変! あそこに、ぼさぼさ髪の童盗人(わらわ(髷を結っていない)ぬすびと)が立ってます。泥棒ですよ」と、耳元でささやきました。