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辺りを見まわした男は、倒れた衝立を見ると起きあがり、手に唾を付けてガッツポーズをして、
「やつめ! おれの所にはいって、やすやすと物を盗んでいけるとでも思っていたのか。衝立を倒して逃げ出しよって! も少しここに居たら、ふん縛ってやったものを。お前がドジを踏むから逃がしてしまったじゃないか」
妻は憎たらしいやらおかしいやらで笑いが止まりません。
世の中にはこんな馬鹿者もいるもので、実際、妻の言ったように、そんな臆病者ではどうして弓矢を持って主人の警護にたてるのかと、これを聞いた人は皆、馬鹿にして笑ったということです。
これはその妻が人に話したのを聞き継いで、こんなふうに伝わったのでしょう。
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