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そこで妻に向かい、
「おまえ、行ってやつを追い出してこい。俺を見て怖じ気づいて震えていたから大丈夫だ。女なら切られる気遣いは無い。俺はこれから大事な用事だというのに、間違って傷でも付けられたら縁起でもない」
そう言うと、着物を引きかぶって寝てしまいました。
「不甲斐ない人だね。そんなこって、弓矢をかついで月見でもして歩こうってのかい」
仕方なく、また立って見に行こうとした妻は、そばの衝立(ついたて)を引っ掛けて倒してしまいました。
それが上に倒れかかったのを、例の泥棒が襲いかかってきたのだと思って、男は大声で悲鳴を上げました。
「あはは… おまえさん、泥棒はとっくに逃げちまったよ。それは衝立が倒れたのさ」
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