Web 絵草紙
「頼光の郎等 平季武、産女に値へる語」 1/4
Web 絵草紙
 今昔物語より
頼光の郎等 平季武、
    産女に値へる語
(よりみつの らうどう たひらのすゑたけ、
      うぶめに あへること)
 

今は昔、源頼光(みなもとのよりみつ)が美濃の国司を勤めた時、ある夜、頼光に仕える侍たちが、館の詰所で雑談しているうちに、街道の川の渡り場に出るという産女(うぶめ)の話になりました。
夜、その川を渡る人があると、泣く子を抱いた女が現れ、「この子を抱いてくれ、抱いてくれ」と言うのだとか。
すると、中のひとりが
「誰か、これからその川を渡ってみないか」と言いました。
頼光の四天王のひとりで平季武(たいらのすえたけ)という男が
「俺なら、今すぐにでも渡って見せる」と言います。
「ひとりで千人の敵に向かうことは出来ても、幽霊相手ではまた別でしょう」
「なぁに、簡単に渡ってくるさ」
「いくら何でも渡れないよ」
と、言い合いになったあげく、反対する者十人ほどが「それなら賭けよう」というので、おのおの武具や馬などを賭ける約束をしました。