Web 絵草紙
「頼光の郎等 平季武、産女に値へる語」 2/4

季武(すえたけ)のほうも、もし渡れなかったら同じような物を支払う約束をし、
「間違い無いな!?」と念を押すと
「勿論だ。 遅いぞ。 さっさと行け」と皆がはやします。
季武は鎧兜(よろいかぶと)を着け、弓矢を背負いました。
ひとりきりなので、川を渡った事をどうして証明するのかという話になりましたが、
「このやなぐい(矢を携行する道具)の飾り矢を一本向こう岸に挿してこよう。明日、朝早く行って確認したらいい」ということで出発しました。
そののち、掛けをした者のうちの勇み肌の若者が三人川を渡ったことを確認しようと、その後を追って馬を走らせました。
三人が渡りに着くと、季武はすでに川に馬を乗り入れています。
九月下旬の新月の頃で、岸のすすきの陰に隠れて三人が見守るうち、季武は真っ暗闇の川をざぶりざぶりと渡って行きます。