Web 絵草紙
「頼光の郎等 平季武、産女に値へる語」 4/4

館に戻った季武(すえたけ)は、賭をした者たちに向かい、
「おぬしら大げさに言ったが、この通り、向こう岸に渡って子供さえ奪ってきたぞ」と、袖を広げると、そこには木の葉が少し残っているばかりでした。
後から三人の者も戻って、渡りでの有様を語りましたから、待っていた者たちも恐ろしさに震え上がりました。
そこで、皆は賭の品を並べましたが、季武は受け取らず、
「戯れにそう言ってみただけだ。あのくらいの事、誰だって出来ないはずはないさ」と言って、賭物はそれぞれに返してしまいました。
そんな訳で、それを聞いた人は皆、季武をほめたたえたものでした。
 
この産女(うぶめ)というものは「狐が人を化かそうとしてする事だ」という人もあり、また、「出産で死んだ女の幽霊だ」という人もあるとかいうことです。