Web 絵草紙
今昔物語より
「修行者、人の家に行き
女主を祓へして死にたる語」
(しゆぎやうしや ひとのいへにゆき
をんなあるじを はらへして しにたること)
今は昔、犬をたくさん引き連れて山にはいり、鹿や猪を狩る「狗山(いぬやま)」という仕事をする人がおりました。
いつものことで、犬とともに山にはいりましたが、食物なども用意して長く山中にとどまるので、若い妻を家に残したまま二三日が過ぎました。
その間に修行僧が来て、家の前で経を読み食物などを求める托鉢(たくはつ)ということをしました。
姿形など清らかで、にせ物の乞食ではないようですから、家に入れて食事などさせましたが、僧は
「私は乞食ではありません。仏道修行の旅をしておりますが、食物が尽きたので、こうして托鉢しております」と言いますから、女はますます貴く思ってもてなしておりますと、
「私は陰陽道も修めており、霊験あらたかな祈祷などもいたします」と言います。
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