Web 絵草紙
今昔物語より
「妻を具して丹波の国に行く男、 大江山にして縛られたる語」
(めをぐして たんばのくにに ゆくをとこ、 おほえやまにして しばられたること)
今は昔、京に住んでいた男がその妻を連れて、妻の実家がある丹波の国へ向かいました。
妻を馬に乗せ、男は十本ほどの矢を差した竹のえびらを掛け、弓を持って後から行くのでしたが、大江山のあたりで、刀だけを帯びた屈強な若い男と道連れになりました。
「どちらに行かれますか」などと、互いに話しながら一緒に行くうちに、連れになった男が言うには
「私のこの刀は、陸奥(みちのく)産の逸品なのですよ。ご覧なさい」
そう言って抜いたのを見れば、見事に鍛えられた美しい刀なのです。
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