そのあと、女は夫の紐を解いてやったのですが、男は呆然としておりますから、 「あなたはよほど甲斐性の無い人ですね。そんなことでは、こののちも、はかばかしい事は無いでしょう」と言いました。 夫は返す言葉も無く、また連れだって丹波の国に向かったのでした。 後の男は盗賊とはいえ、女の着物を奪ったりしないなど、なかなか立派だ。 それにひき替え、元の男は情けない。 山中で知らない男に弓矢を渡すなど、実に愚かなことだ。 逃げた男のその後の消息はわからないままに終わったということです。