Web 絵草紙
「正親の大夫、若き時鬼に値へる語」 2/5

しばらく待つうちに、女房を連れて来ました。
「さあ、まいりましょう」というので、連れだって西に一町ほど行くと、古いお堂があります。
女は堂の戸を開け、自分の家から持ってきた畳を一枚敷き、
「明け方、またお迎えにまいります。」と言って帰ってゆきました。

そんなことで、大夫は女房と寝物語などしておりましたが、ふたりとも従者は連れておらず、夜のお堂の中にふたりきりですから、なんとなく不気味な感じがします。
 
そのうち、もう真夜中かと思われる頃、堂の裏手に火影が見えてきました。
無人ではなかったのかと思ううちに、灯火を持った童女が現れ、仏壇の前と思われる辺りにそれを置きました。