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日本脱出
バックパッカーのすすめ -Back Packers-







古今東西、人は旅に出かけ、旅することで文化を育んできました。国境を越え多様な価値観に触れる
ことで、新たな自分や本来の自分を発見することが多々あります。昔はバックパッカーといえば欧米
人が主流でしたが、今はどこの秘境にいっても日本人がいます。日本人パッカーに出会って思うのは、
何かに疑問を抱き何かを見出そうとしている人がとても多いこと。もちろん年齢制限はありません。欧
米パッカーの多くはミドル世代が占め、そのまま住み着いてしまう人も珍しくないのですから・・・。

○バックパッカーの定義
バックパッカーというと若者の貧乏旅行者、バックパックを背負って陸路国境を渡り歩く長期旅行…
などのイメージがあるものの、とくに定義があるわけではありません。あえて私的な定義を考えてみ
ると、できるだけ節約を心がけ、ルートと帰国地・帰国日をとりあえず想定して、あとは気ままに風の
ふくまま…といった自由旅行者。あるいは現地社会の探検家、といった感じかもしれません。

○バックパッカーの生い立ち
日本人のバックパッカーの基礎は1950年代の無銭旅行。海外旅行がまだ夢のような時代、不法就
労にも寛大なこともあって、米国や欧州をアルバイトしながらの長期旅行者が出現。1960年代に入
ると「ヒッピー文化」が隆盛となって、インドやネパールなどのアジア地域を目指す若者が急増しまし
た。バックパッカーという言葉が欧米で定着したのが1980年に入ってから。日本では1985年のプラザ
合意によって円高が急進、タイ・カオサンの安宿街がバックパッカーの拠点へとなっていきました。
そして2000年前後、日本テレビで放送された番組がきっかけとなってバックパッカーブームに突入。
番組はヒッチハイクと小遣い稼ぎによって長期旅行するというものでしたが、一方では不法就労が
問題となって各国大使館からクレームが殺到。以降、長期周遊型パッカーが一般化する中で、女性
の一人旅パッカーもポピュラーなものとなっていきました。

○旅行予算
パッカーの予算は宿代と食費などの生活費に限れば、通常アジアや中米の場合一日10ドル、東欧
などの場合は20ドル、物価の高い北米や西欧、太平洋地域では一日に20〜30ドルがひとつ目安と
なりますが、これに移動費などが加わります。
またバックパッカーというと貧乏旅行のイメージがありますが、基本的に長期旅行するので無駄なこ
とにお金を使えないのも事実。少しでも安くて良質の宿や食堂を探して歩き回ったりするので、自然
と現地の裏事情に詳しくなったり、その国の真実の姿や庶民生活に触れることができます。そういう
旅をすると、今まで見えなかったものが見えてきたり、ものの見方も変わってしまう場合も。いずれに
せよ貧乏旅行は人生に影響を及ぼす場合も多いので、関心ある方はぜひ一度チャレンジを。



バックパッカーあれこれ


旅のスタイルは<世界一周型・中南米縦断型・アジア周遊型・シルクロード横断型・東欧周遊型>
と様々。各国の観光地域には「日本人宿」とよばれるゲストハウスが自然発生。日本人が日本人を
呼び、日本人がいるのが一番安心で安全といった感じで日本人が集まりますが、中には派閥グル
ープ化してしまったり、長く宿泊している人がボス的になったりする弊害もあったりします。反対に海
外に来てまで日本人の顔は見たくないといった感じで、街で日本人と会っても挨拶どころか露骨に
いやな顔をしたりする人もいたりします。また日本で購入したバックパッカー向けガイドブックを片手
に、ひたすらガイドブックに忠実な「マニュアルトラベラー」が多いのにもびっくり。ガイドブック情
報も大切ですが、自分の目と耳を頼りに歩けば、新たな出会いもいっぱいあります。


○会社を辞めたパッカーたち

旅は人間にとって、ひとつの本能。しかしサラリーマンの場合は、長期の旅行に出たくてもなかなか
出られないのが現実。休職以外では、会社を辞めるかどうかを悩んでいたりする人がけっこう多くい
たりします。新たな創造は破壊を伴い、今後、どのような生き方を求めていくかに関わる問題。
このため会社を辞めて旅に出る人は、損得や保身的思考を乗り越えて、帰国後の障害や苦労を承
知の上で決断します。某旅行雑誌のアンケートによると、こうして旅に出た人の95%は「旅に出て良
かった」といい、後悔していないとか。会社を辞めて旅に出るパッカーたちに拍手を・・・。

○子供と仲良くなるのはパッカー生活の第一歩
どこの国でも外国人には子供が寄ってきますが、パッカーにとっては子供との交流はとても大切。
子供達と仲良くなれば、子供達がいろいろ案内してくれたり、家に招いてくれたりと、充実した楽しい
滞在もできます。現地の実情についてもいろいろ詳しくなったり、もちろん意外な交流に発展する場
合もあります。

○パッカーの醍醐味は越境
世界を陸路で廻る旅行者の醍醐味は、なんといっても陸路国境の越境時です。もちろん、空路での
入国審査も緊張しますが、陸路と比べると比較にならないでしょう。有効な査証やパスポートを所持
していたとしても、何ともいえない緊張感が襲います。国によっては越境時に予測不能の出来事が
あったりして、「国境」を体感することで、世界の枠組みや国際情勢などの現実を感じることもでき、
旅の大きな醍醐味となるのです。

○帰国後のカルチャーショック
長期滞在からの帰国時、日本がまるで別の世界のように思えたり、都会の雑踏の中での妙な孤立
感、社会の枠組みから取り残された疎外感のようなものを感じたりすることがあります。出国するま
で普通に思えたことが、まったく異なる印象となることもあるでしょう。外国人の多くが日本で受ける
奇妙な印象や戸惑いと似ているかもしれません。そんな状況から抜け出るには、人と話してコミュニ
ケーションを積極的に図ったり、新聞や雑誌、TVに没頭して浦島太郎状態から脱することも必要で
しょう。求職活動などを早く開始して社会と接点を持ったり、また反対に、世の中に迎合しようとしな
いで、完全に開き直り「我が道を行く」といった考え方に切り替えるのがいい場合もあります。外から
日本を見ると今まで見えなかった良い点・悪い点も見えたりします。大切なのはその結果、自分に
最もふさわしいと思える道を選択することなのです。

○長期滞在の重要ファクター
通常どこの国にいっても観光名所を見るだけなら数日、小さな街なら半日もあれば終了。
同じ街に1週間、2週間と滞在するには他の魅力がないと飽きてしまうのが普通。
長期滞在を可能にする要因を考えてみると、気軽に声をかけあったりするフレンドリーな環境が何
よりも重要に思えてきます。魅力的な風景に囲まれていても、会釈や挨拶しても反応がない、住人
とのコミュニケーションがないといった環境では、一人旅の場合は特に孤立感が拡がり、途端にそ
の街が嫌いになったり、つまらない旅になったり。但し、お金目当てに声をかけてくるウルサイ環境
は困りもの。

○マクドナルドで物価比較はナンセンス
マクドナルド料金で物価比較しているガイドブックがあるものの、あまり参考にはなりません。特に
途上国ではマックは高級レストラン。現地の物価とは関係ない料金が設定されています。また単
品とセットの料金が大きく異なっている国もあって、正確な比較にはならないのです。

○節約パッカーの必需品?
アジアを旅するパッカーの必需品はハンディコイルの湯沸し棒。コンセントにつないで水の中に突っ
込むとコイルの熱でお湯が沸くという仕組み。原始的なので日本ではあまり見ないものの、アジア
の市場ではよく目にします。カップラーメンに使ったり、マグカップにインスタントコーヒーを入れて
飲んだりと、かなり頻繁に使えるスグレモノ。コーヒーなどを手軽に飲めなかったりする場合も多く、
またいろんな種類の現地カップラーメンを味わえたりもするので、街めぐりのついでに探してみては。
尚、日本では「コイルヒーター」または「ミニクッキングヒーター」という名称で、旅行者向け便利商
品として商品化され、電圧によって各種タイプがあります。ちなみにアジアで製造されている安価
なものは錆びやすく感電することもあるとか・・・。



日本人バックパッカーが多い国


■アジア

○タイ
タイにバックパッカーが多い理由は、タイを拠点に周辺国を周遊するケースが多いため。バンコクは
物価も上昇し、タイらしさも年々薄れてきているために、パッカーたちの関心は脱バンコク傾向に。
北部のチェンマイや素朴な島々など各地に分散化しています。またパッカーの聖地といわれたバン
コクのカオサンエリアもメジャーになりすぎて、脱カオサン志向者が増えている状況。
○ネパール
先進国の影響の少ないお国柄が好まれて、パッカーの新聖地に。老若男女を問わない幅広い層の
支持が特徴。ネパールだけを訪れる人も多く、長期滞在組が主流。パッカーの滞在地はカトマンズ
とポカラが中心で、人気はポカラの方が上。
○ベトナム
アジアを廻るパッカーたちが必ず一度は立ち寄る国。特に女性に人気なものの、ベトナム特有の毒
気が嫌われてリピーターが少ないのが特徴。多くのパッカーは北部ハノイと南部ホーチミンの間を立
ち寄りながら縦断。
○カンボジア
プノンペンは昔のタイに代わる新沈没地に変貌。中高年の長期滞在者が多いのも特徴。アンコール
ワットの街シュムリアップが一番人気。また海浜地区コンポンソムやあまり知られていないコンポン
チャムなどの小さな村に好んで滞在する人も。
○インド
好きか嫌いか、人気がはっきりと二分するほどの強烈な個性。ディープな旅を求めるバックパッカー
たちには外せない国。はまった人はとことんインド好きに。パッカーは各地に散らばり、インドの個性
が苦手な人は海辺のゴアが定番地。
○マレーシア
物価の高いクアラルンプールは敬遠傾向に。物価が安くてマレーシアらしさが残る東海岸やボルネ
オ島を廻るのが定番化。またペナンやランカウイは、リゾート地としては人気があるもののパッカー
は年々減少。
○ミャンマー
軍事政権ではあるものの、素朴なお国柄には定評が。空路入国に限られているために、ミャンマー
単独訪問者も多く、首都ヤンゴンよりも、マンダレー、インレー湖周辺などの地方の街や村が人気。
○その他の国
中国雲南省、ラオス、インドネシア・バリ島、パキスタン・フンザ、他

■中南米
○メキシコ
人気滞在地が多いメキシコでは、滞在地は分散化。好みに応じた滞在地を探すのも楽しみのひと
つに。海やマヤ文明好きの人はユカタン半島エリア、メキシコ文化が好きな人はオアハカ、グァナ
フォトが定番地。
○グァテマラ
高台の街・アンティグアは中南米好きのパッカーたちの一大拠点。気候も穏やかで、安くスペイン語
を勉強できる環境から、この街でスペイン語を学ぶ長期滞在者もポピュラー。またケツァルデナンゴ
は物価が安くてパッカーの多い環境。
○チリ
治安の良さと、おいしいワイン、新鮮なシーフードが魅力。中高年の滞在者にも人気。

■ヨーロッパ、アフリカ
○トルコ
女性の人気がより高いのが特徴。長期滞在者やリピーターはイスタンブールよりも、素朴で安宿も
多いカッパドキアを選ぶ傾向に。また海好きな人は黒海沿岸沿いを廻り、エーゲ海側は物価が高い
高級リゾートのために敬遠気味。
○その他の国
モロッコ、ケニア・ナイロビ、マダカスガル、タンザニア・ザンジバル島、他。



バックパッカー向け選書


○深夜特急
沢木耕太郎/新潮社文庫
ノンフィクションライター沢木さんが26歳の時に旅したアジア〜ヨーロッパの横断記録。1986年に発行
された後、1994年に6編に分けた文庫版が新潮社より出版。日本のバックパッカーブームの原点を知
ることができる定番本。

○僕たちの深夜特急.臨時便
西牟田靖/スパイク社
上記深夜特急のルートをそのまま辿った現代版。

○サハラに賭けた青春
上温湯隆/時事通信
1970年から2年4ケ月、50ケ国に及ぶヒッチハイク旅行を敢行した少年の手記。同氏はサハラ横断の
旅を計画し再出発したものの、サハラ砂漠で死亡。当時サハラ横断は前人未到で、死を意味する危
険なものでした。何故彼は海外放浪に、そしてサハラに・・・。純粋で一途な人間の心の葛藤と共に。

○サハラに死す。上温湯隆の一生
長尾三郎/講談社文庫
上記、上温湯隆の生涯をテーマにした本。
「学歴万能社会の中で人間らしさを保っていくためには、いったい何をしたらいいのか」という疑問を
胸に高校を中退。海外を放浪する中で将来の生き方について自問自答を繰り返し、サハラ横断を
成し遂げることでひとつの答えを求めようとしたのです。

○ジャック・ロンドン放浪記
ジャック・ロンドン/小学館
17歳で1年半の放浪の旅に。その後作家として世に出てからも、また結婚してからも落ち着くことなく
生涯を旅人として過ごしました。「地上の全てが見られるのならどこで死のうがかまわない。同じ仕事
を一生続けることができる人間ではないし、社会に束縛されたいとも思わない」という考えが自由を好
むアメリカ人の若者の共感を生みました。ちなみに映画「タイタニック」の主人公であるジャックとい
う名前は、彼をイメージして名づけられました。

○上海の西、デリーの東
素樹文生/新潮社文庫
30歳を目前にして、職場を捨てて上海から陸路でインドへ旅に出た著者。年齢に関係なく、常に青春
を感じていたい人向けのアジア放浪記。

○何でも見てやろう
小田実/講談社文庫
硬派作家で市民運動家でもある小田氏の、留学生時代の笑顔とバイタリティーに満ちた貧乏旅行記。
欧米アジア22ケ国を旅し、見たまま感じたままに書いた内容は時代を超えて楽しめる定番書。「世界
とはどんなものものなんだろう、実際に行って見てやろう」と旅発ち、「この旅に出ていなかったら人
生は全く変わっていただろう」と回顧する著者の姿が魅力的。