剣の花嫁 第2回リアクションA3共通

「強くなりたい」より抜粋

篠崎良一マスター執筆

Scene.2 「大馬鹿者」より一部抜粋

「あ〜。なんか腹立つわね」
 不機嫌な顔をしているのは、リナ・ゴールドスミス
 昼間だというのにぶ厚い雲に覆われた空を、ベランダの椅子に座ってじっと見上げていた。
「ご自分の行動が、腹立たしいのでは?」
 黒いタキシードを着た老人が視界に現れて口を挟む。
「っるさいわね! このじじい!!」
「お友達がたくさん来ておりますぞ」
「会いたくないわ」
 リナが背伸びして、首を逆さまにすると……。
「おじゃましてまーす★」
 そこには、大人の女性ウルズ・クォーラを始め、七人の見知らぬ顔が並んでいた。
(げっ!)
 リナは驚いてひっくり返る。
「イタタ……。ちょっとお、何で通すのよー!!」
「お嬢様が、珍しくお友達をお作りになられたのかと」
「珍しくは余計だわ! それに誤解よ!!」
「リナさんには、いつもお世話になっております」
 ウルズが、老人と同じノリで丁寧に頭を下げる。
「嘘つけ!!」
「はい、これ。差し入れです」
 ウルズはテーブルに得意料理のボトフ(牛肉・野菜などを水から煮込み、スープと肉・野菜をそれぞれに食べる料理)と、焼きたてのパンを並べた。
 老人は額を下げて礼を言った。
「これはどうもありがとうございます。お嬢様は死んだお母様に似ず、料理が苦手でございまして」
(殺すぞ、じじい!)
 リナの殺気を気にもせず、老人はウルズの手料理を他の客に配った。
 レイア・フレックが喜んで皿を受け取った。
「ボク、丁度お腹がすいてたんだ。頂くね!」
 そして、ウルズの料理を口にした――その瞬間。
 レイアは強いショックを受けた。
(お、おいしい。ボクの料理よりも、ずっと……)
 経験の差であった。料理に興味を持ち始めた女の子と二児の母とでは比較にならない。負けて当然であろう。
 レイアが固まっているのが気になったのか、リナは皿に視線を落として、ポトフに手を出した。
「美味しい……。じゃなくて! それが何なのよ!!」
「ちょいちょい」
 フィナ・クイーンがレイアの袖を軽く引っ張った。
「レイアはここへ何しに来たのだ?」
「あ。ああ、そうだ。そう!キミ、ラウラにあんなこと言うなんて酷いじゃないか。辛いのは、ラウラもー緒だよ。キミの両親が死んだのは『剣の花嫁』のせいだって言ったよね。なら、その責任はボクたちにもあるよ」
 レイアの真意をつかみかねて、リナは顔をしかめた。
「ボクたちだって、ヴァートを操る能力があるのに、何もできなかったんだから」
「じやあ、責任取りなさい。5万ヴァート以上は死刑」
「あ、ボク4万9千8百なんだけど……」
 レイアが即答する。
 思惑が外れて、リナは照れ隠しに怒りだした。
「な、何よ、値札みたいなヴァートね!」
(ひ、酷い)
 もはや、レイアでは相手にならないと見て、フィナがロを開いた。
「真に憎むべきは鏖帝であろう。八つ当たりするな。それに、アナタと王女にどれほどの違いがあるのだ?」
 フィナは、毅然とした態度でリナを見据えた。
「……」
「何も言い返せないのか。なら、どうしてあんなことを言った。王女が死ねばよかったと本気で思っているのか?」
 リナは、ふくれつ面で反論した。
「あなたには、関係ないでしょ?」
 その一言が、場の空気を一転させた。
 それまで黙っていたヴァサラ・デスウィンドがリナに厳しい目を向ける。
「ラウラに死ねと言ったな。おまえがラウラの立場なら、死ねるのか?そこまで言うのなら、おまえも自分がラウラに言ったことを実行したらどうだ」
「あらあら、物騒な話ね」
 ウルズが話の腰を折ってヴァサラに料理を勧めた。
 殺気立つ空気が、またたく間に霧散した。
 すかさず、ロリィ・ディスティオールがヴァサラの首根っこをつかんだ。
「もう、それは言い過ぎだよ。あっち行って!」
 ヒューリア族の少女に本気で怒られ、ヴァサラは素直に屋敷から追い出される。
 ロリィは、とにかくリナと仲良くなれるように頑張っていた。これで、ロリィに対するリナの評価が上がっただろう。ヴァサラは利用されたとも言う……。
 フィール・カスタムがやんわりとした口調で話す。
「僕はリナさんと同じ境遇になった事はないから、その悲しみや苦しみは分からない。でも、リナさんだって、ラウラさんの苦しみが分からないはずです」
 リナは黙ってフィールの言葉を聞いた。
「リナさんの両親はラウラさんが殺したわけではないですよね?リナさんの両親を殺した人は、必ず僕がかたきを討ちます。だから……」
「言いたいことは、それだけ?」
 リナの感情が高ぶるのが、誰の目にも明らかだった。
「分かったようなこと言わないで!! なによ、みんなして、わたしが悪いみたいに!!」
 リナは泣き出した。一同、唖然とする。
「あんたたち、何様のつもりよ!! それが言いたくてわざわざここへ来たの!! 暇人ね……。本当は、鏖帝と戦うのが怖いんじゃないの?」
 フィナは黙り込んだ。レイアも、口を閉ざす。泣いている相手を責めると、自分が悪人のようで気が引けた。
 ウルズだけは、先月リナが泣いているところを見ていたのでこの反応は予想していた。
「人の気も知らないで言いたい放題! デリカシーの無い連中!!」
 リナは立ち上がって喚き、背を向けて歩き出した。
 こほれた涙がテーブルに落ちる。
 リナを見つめる、オルニス族の男がいた。
「オレ、心配だから見てくる」
 グリフィス・フィクサーは静かに席を立った。

 空から舞い降りて、川の土手で背中を丸めている青いドレスに優しく声をかけた。
「んー……と。ツライつてのはわかる。人を憎んでも、その分ツライというのも、多分キミも分かってると思うし。それでも誰かを憎んでしまいたい、というのも」
 リナは返事をしなかった。しかし、落ち着いた様子でグリフィスの話は聞いてくれているようだった。
「けど、ラウラにはあんなコト言って欲しくない。キミもラウラも傷つくだけだから――。だから、ツライときは俺に言ってくれないか? 殴るってのもアリだ」
 パンッ!!
 リナの平手が飛んだ。
「これは、ありなのね」
 グリフィスは頬をさすりながら笑った。
「今なら俺の手料理と護衛付きで★と、いうわけで仕事下さい」
「何よ、それが言いたかったの?」
 リナは不機嫌な様子で言った。
「怒った?」
「いいわ。許してあげる。仕方がないわねー」
 本当は嬉しいくせに、恩着せがましい言い方をする。彼女なりの照れ方なのだろうとグリフィスは思った。
「じやあ、戻ろうか」
「うん、空からね」
「え……」

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●プレイヤー注釈

 共通リアにちょこっとだけ登場。本心を隠してリナお嬢様に近づくのが目的。……近づいた後の作戦とかも色々書いていたのですが(と言うか、そちらの方が本題だったのですが)、ダブルやトリプルのアクションになっていたようです。……HGシリーズに慣れすぎ病。

 芙龍ちさとさんのホームページにあるPC掲示板で、ちょこっとだけお世話になったヴァサラさんを摘み出してました(汗)。大変気まずい感じ。


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