第10回(最終回)リアクションB2「闇の夜想曲〜最終章〜」より抜粋

井上 かおるマスター執筆

Scene.4 「スレイの箱舟」より一部抜粋

 一方、ティーンたちも『樹』を切り倒すぎりぎりに、最北の地に着いた。
「……なんとか、着けたみたいですね」
 シルヴィスはそう言い、ティーンたちと共に、『樹』に登った。
 ティーンはそこまでの間、無言だったが、ふと、そのティーンに、珍客が現れた。
 ウァルハーリパル・エスタである。
 ウァルハーリパルはすでに魂だった。
 魂となり、エスターシャの魂を探しに来たのだ。
「あら? もう、みなさん、しんせかいにいくところなんですか?」
 新世界に渡るまでの避難のお手伝いをしよう、と思っていたウァルハーリパルは、ちょっと遅れてしまったな、と思ったが、せめてもの役に立こう、と新世界の情報を伝えた。
「しんせかいは、なんとかあんていをしています。なにもありませんが、くうきはありますし、みずもあります。いきていくことにもんだいはないみたいです」
 ウァルハーリパルはそう言うと、ティーンにエスターシャの行く末を尋ねた。
「あの、えすたーしやせんせいをごそんじないですか? せいとたちは、みんな、まってるんです。かえってきてほしいんです。ろくまどうしとしてゆかりのあるじぐさまのところに、もしかしたら、えすたーしやせんせいは、てんせいしてるんじゃないかとおもったんですが……」
 ウァルハーリパルのその言葉を聞き、ジグを失ったティーンは、ほろ苦いような、悲しいような顔で、彼女に真実を告げた。
「……六魔魂士の魂は、違う世界には渡れないよ」
「ええ!?」
 ティーンの言葉にゆいたのは、ウァルハーリパルだけではなかった。
 ジグとは新たな世界で会えるかも、と思っていた者たちの希望も、ティーンの言葉は砕いたのである。
 もちろん、ティーン自身、そんなことは言いたくなかった。
 ジグが冥界に閉じ込められ、切迫した状態になり……ティーンは過去の記憶を思い出したのだが、そのことは、ずっと口にせずにいたのだ。
 だが、間われた以上、ウァルハーリバルが、実行不可能なことに命を賭けてしまわないよう、話さなけれはならない。
 ティーンは静かに、出来るだけ淡々と問いに答えた。
「この世界を見守るのが、彼ら、六魔導士の役目だから、彼らの魂は違う世界には渡れない……いや、渡らない、のかもしれない。それに……エスターシャは、この世界と共に終わりたいんじゃないのかい? 彼女はずっと転生して、この世界を見守ってきた……六魔導士の中でも、最も、この世界を愛し、この世界のために生きてきた人なのだもの。君たちは生きていてほしいかもしれないけど、最後くらい、彼女の気持ちを大事にしてあげて……」
 多分、この場に、エスターシャがいても、同じ事を言うだろう。
「この世界で死にたいの」と。
 だが、ティーンの言葉には、どこか、自分自身に言い聞かせるようなところもあった。
 そのティーンに対し、ルーシュはこう語りかけた。
「お気持ちは分かります。でも……忘れなけれは、その人は永遠ですわ。だから、私たちは新たな世界へ行き、彼らのことを伝え、語り継ぎましょう。それが、新世界へ行く私たちの役目です……」

【NPC一覧】

【PC一覧】

●プレイヤー注釈

 前作にも登場していたジグの親友、ティーンが登場しています。ウァルハーリパルとは前世で面識あるのかも。

 何らかの成果があれば儲けもの、と思っていたのですが、やはりアクションの懸念された点(時間軸のずれ。色々手を尽くしても六魔導士の魂を違う世界に連れてゆく事が不可能なこと。本人が転生を望んでいないこと)を指摘されてしまいました。予想と寸分違わぬリアクション。がっかり。
 まあ、欲を言えば、「最後くらい、彼女の気持ちを大事にしてあげて欲しい」という台詞をジグ様から聞きたかったのですけどね……。

 見てのとおりの完全な失敗なのですが、後悔のないように手を尽くしたこと、六魔導士がこの世界と運命を共にしたことがキャラクター情報として伝わったこと、その二点において意義はあったと思います。……もっとも『それは無粋』という意見はあるかも。

 ここのシーンの抜粋は、ワールドリアクションでも言及されています。ティーンのコメントが全ブランチ共通情報として載った事だけで十分、『出張』の甲斐がありました。Dブランチ側のプレイヤーにも情報として伝わっていることでしょう。


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