目指せ!ナンバーワン

第0話 岬家の事情

作:サイバスター


とある町のとある家に、とっても仲の良い兄妹が住んでいました。
しかし、その兄妹は、ある特殊な環境の下に置かれていました。


ここは霜月町。隣町である師走町から駅で3駅のところにある、どこにでもあるようなベッドタウンである。特にこの霜月町は、隣町にある巨大な学園、『こよみ学園』の職員や生徒が暮らす町で、町民のおよそ6割が何かしらの形で『こよみ学園』に関与していると言った町である。

その中でも、地元の名士を除けば、この家が一番有名であろうと言う家族がいる。それは全国的にも有名な家族と言えるであろう、芸能家族として、あらゆるメディアを賑わせている一軒の家があった。

その家は霜月町を見下ろす事が出来る高台の上にあり、その高台を全て有する大豪邸である。一年のうちでも殆ど家主としてはこの家にはいないと言う、外交官を父に持ち、実質的には長兄がこの家を取り仕切っている。

その家の名は、『岬家』。地元で『上の家』と言えば、ここのことを言う。固定資産税や住民税、果てはこの家族が稼ぎ出す所得税は尋常ではなく、町としては大変にお世話になっているので、地元の名士が事あるごとに挨拶に来るほどの町の陰の実力者と目されている家族である。

だが、ここの実質的な主、長兄の岬亮(みさき りょう)は一つの悩みを抱えていた。

その悩みとは・・・

『妹達の自分に対する過激なまでの想い』

である。年齢が下の方の妹はともかく、恋をしていて、彼氏の一人でもいてもいいような年頃の妹が、

『世界中の誰よりも兄が大好き』

と言う有様で、自分が他の女性と話していようものなら嫉妬心メラメラで、対象の女性達を大好きな長兄からはねつけていたりするのである。表面上は寛容な亮なのだが、内心は辟易していたりする。『誰かいい彼氏の一人でも出来ないのか?』と亮は思うのだが、どうやら妹達は、

『兄以上の男性が見当たらない』

と思っているようである。こう言った場合、対象が一人ならまだしも、この岬亮には12人もの妹がいるのである。しかもその12人が揃いも揃って、同じ考えなのである。しかも、自分は天涯孤独の孤児で、養父と養母からは嫡男に恵まれなかった事もあり、後継者対策の意味も含むある目的のため、2年前にとある施設から岬家へ引き取られた養子であることが、妹達の考えに大きく影(当の妹達には光明である)を落としている。つまり、

『兄は私(妹)達とは血の繋がりがない』

これが決定打となっているのであった。いざとなれば養子縁組など解消して、いつでも『お兄ちゃんのお嫁さんになれる』のである。
亮としては、『現在人気絶頂の男性アイドル』とか『こよみ学園高等部芸能コース名誉講師』とかの肩書きがあるものの、ごくありふれた家族生活や学園生活を送りたいと思っているのに、妹達は兄である自分を『一人の男性』として認識し、接してくるのだからたまったものではない。

ここで問題の妹さんたちに亮についてインタビューをしてみた。

【サ】(作者、サイバスターであります)最初は岬家の長女、千影ちゃんに伺いましょう。こんにちは、千影ちゃん。
【千】・・・ふっ・・・
【サ】今日は2年前にこの家にやってきた岬亮さんについてお話を伺おうと思いますが・・・
【千】兄くんのことかい・・・・構わないよ・・・・兄くんは私の運命の人さ・・・・前世からのね・・・・来世もそうさ・・・・無論、現世でもね・・・・私にとって、兄くんは・・・・それ以下でもそれ以上でもない・・・・唯一無二の存在・・・・分かるかい・・・・あ、そうだ、君にも分からせてあげるよ・・・・この薬で・・・・どうだい?・・・・
【サ】あ、え、遠慮しておきます。(危うく実験台にされそうになる【サ】)

怪しげな液体の入った黒い小瓶をちらつかせて、これまた妖しげに微笑む紫がかったローブ姿の少女、千影である。彼女は18歳、こよみ学園高等部芸能コース3年生。ある意味エコエコアザラクチックな雰囲気を持ち、国内のミステリードラマや、映画などには欠かせない個性派女優である。

【サ】次は次女の咲耶ちゃんです。こんにちは、咲耶ちゃん。
【咲】誰かと思えばあんたなの?私に声を掛けようなんて1000万年早いってものよ。第一私に何の用なの?
【サ】今日は2年前にこの家にやってきた岬亮さんについてお話を伺おうと思いますが・・・
【咲】何だ、お兄様のことを?うふふ、いいわよ。私のダーリン、お兄様の事なら、赤い糸でつながれた将来の夫よ。素敵よね、まさに完全無欠、私の理想の人よ。いつでも私はおっけーなのに、なかなか気付いてくれないの。やぼったいったらありゃしないわ、そう思うでしょ?でもね、そうやって焦らすのもお兄様の高等手段ね。うふふ、ほんとは照れてるのよ。こんなにかわいい私に迫られてるんだもの、普通の男なら分かるでしょ?私の魅力。
【サ】は、はい。十分に。自分も咲耶ちゃんのファンになりそうです。・・・
【咲】ハア・・・(溜息)私またしても男の人を虜にしちゃうのね、罪作りな女。(時計をちらりと見て)あ、いけない。そろそろお兄様のテレビの時間だわ。やっぱりお兄様のテレビはライブで見なきゃ。失礼するわね。

嬉しそうに走り去るツインテールの大人びた少女、それが咲耶である。彼女は17歳、こよみ学園高等部芸能コース2年生。ファッションと美容に長じ、天性のプロポーションと美貌でティーン誌の表紙やグラビア、そして各種ファッションショーで活躍するモデルである。姉妹の中でも特に積極的に亮にアプローチをする妹でもある。

【サ】さて次は三女の春歌ちゃんです。こんにちは。
【春】あら、どなたです?まあ、作者の方ですね。
【サ】は、はあ。今日は2年前にこの家にやってきた岬亮さんについてお話を伺おうと思いますが・・・
【春】兄君さまのことですか?ええ、一日足りとて忘れる事はございませんわ。あの美しい瞳、流れる髪。そして優しい笑顔・・・愛しの兄君さまにワタクシはいつしか身を委ねるの。・・・ワタクシのこの体を愛しんで・・・ああ、そうなったらどうしましょう・・・ポポポッ・・・早くワタクシを夜伽に呼んで下さらないかしら・・・ねえ、作者さん、あなたなら何とか出来ますわよね。頼みましたよ。うふふ・・・待ってて下さい、兄君さま・・・ポポッ・・・

一人悦に入る少女、典型的大和撫子の春歌である。(しかし作者に手を回そうなんて結構策士でもある)彼女は16歳、こよみ学園高等部芸能コース1年生。若くして日本舞踊の名取の称号を得て、全国に弟子を持つ。舞台を中心に活動する女優である。また、薙刀術の大家でもあり、日舞の動きを取り入れたその技は流麗にして鮮烈、舞を見ているようであり、その真の姿は愛しの兄君さま、つまり亮に何かがあったときに振るわれると言う。

【サ】お次は、あ、いたいた、可憐ちゃ〜ん。
【可】あ、おじ様、こんにちは。どうしたんですか?
【サ】今日はね、岬家一番のしっかり者、四女の可憐ちゃんに岬亮さんについてお話してもらおうと・・・
【可】え?お兄ちゃんの事?どうしよう・・・可憐ね、お兄ちゃんの事思い浮かべるだけで、ここがどきどきして・・・とっても痛くなるの。今だってそうなんです。
【サ】そうなんですか?(心配そうにする【サ】、するといきなり可憐ちゃんに腕を掴れ、引き寄せられる)
【可】ほら・・・(と【サ】の手を可憐ちゃんはその胸に当てようとするが、状況にはっと我に返った可憐ちゃん、慌てて手を離す)あ、可憐ったら、このお胸は、大好きなお兄ちゃんにしか触らせないの・・・ごめんなさい、おじ様。あ、花穂ちゃんが来るわ。一緒にお話してもいいですか。
【サ】構いませんよ、助かります。
【可】花穂ちゃーん。おじ様が見えてるのよ。
【花】あ、可憐姉ちゃま。こんにちは(校舎の方から駆けて来る花穂ちゃん)・・・・キャッ・・・(転んだ・・・)やっぱり転んじゃった。えへへ・・・花穂ってドジっ子。おじちゃま、こんな花穂だけど、見捨てないでちゃんと書いてね。
【サ】はい。わかりました。さあ、花穂ちゃん立って。(立つのを手伝って、スカートについた土埃を払う振りをしてさりげなく花穂ちゃんのお尻にタッチする【サ】。)
【花】ありがとう、おじちゃま。花穂ね、お兄ちゃまの次におじちゃまが好きなの。えへへ、言っちゃった。
【サ】(小さくぺろりと舌を出し、俯き加減に【サ】を見つめる花穂ちゃんに撃沈)・・・
【可】あら?どうしちゃったのかしら、おじ様。
【花】何だかふにゃふにゃになっちゃった。
【可】あ、そろそろお兄ちゃんのテレビよ、早く帰りましょ。
【花】ほんとだ。じゃ、おじちゃま、ばいばい。
【可】さようなら、おじ様。

気が付くと放置プレイ状態に陥っていたが、気を取り直して・・・

ロングの髪のサイドを三つ編みにした、チェックのスカートの制服を着た少女、慎ましい雰囲気の可憐である。彼女は15歳、こよみ学園高等部芸能コース1年生。現役女子高生DJである。週に3回のラジオ番組を持ち、将来はアナウンサーを経て、ニュースキャスターになろうと考えている。だが、最大の夢は岬亮のお嫁さんになることで、直球勝負とも言えるのだが、控えめな性格が災いし、比較的損な役回りを引き受けたりする。

続いて登場し、早速ドジっ子振りを見せ付けたのが岬家の八女、花穂である。彼女は12歳、こよみ学園中等部1年生、チア部とは名ばかりの某ス○ールメイツのようなダンサー研修所に所属している。大好きなお兄ちゃまのバックダンサーになって、思いっきり応援するのが夢である。彼女のドジっ子振りは天性のモノなのか、岬家のトラブルメーカー的な役割を果たす事になる。

【ミ】ワンッ!
【サ】わ!ミカエルか、びっくりした。こんにちは、ミカエル。
【ミ】ワンッ!
【鞠】こら、ミカエル、おじ上様に吠えちゃだめでしょ。おじ上様は私達のお話を書いて下さる大切な人よ。もう一回ご挨拶しなさい。
【ミ】クゥ〜ン。
【サ】えらいな。ミカエル。こら、なめるな。くすぐったい。ははは。
【鞠】今日はどうしたんですか?稽古場までいらっしゃって。
【サ】あ、これからの話を展開するに、先ずは岬亮さんの印象を妹さん達に語っていただこうと、鞠絵ちゃんにお時間を割いていただいたわけで。
【鞠】それはそれはご苦労様です。兄上様の事ですか?兄上様はですね、わたくしにとって、元気をいただけるお日様のようなお方ですわ。でも、兄上様の事を考えると、どうしてか分かりませんが、胸が切なく締め付けられます。以前に読んだ文学集の中にあった『恋』と言うものでしょうか、とても苦しいのですが、温かい気分になるのです。わたくしは兄上様に光をもらう影でいいです。いつまでも兄上様の光に包まれ、温もりを感じていたいです。

うっとりと目を潤ませながら虚空に呟く薄幸のメガネ少女、五女の鞠絵である。彼女は15歳、こよみ学園中等部芸能コース3年生である。かつて診療所にいた頃、時間をもてあましていたときに身に付けた手芸の腕と、読書で培った文芸で、人形劇団に入団。現在に至る。脚本も、人形も鞠絵の手により作られ、全国の福祉施設を中心に活動している、その筋では有名人である。

【サ】さてと、次は、鈴凛ちゃんの番だった。岬家の六女、鈴凛ちゃんです。こんにちは。
【メカ鈴凛】あ・・・少々お待ちください、マスターをお呼びします。マスター、お客様です。
【サ】(頭のボンボンを確認。)あ、メカ鈴凛ちゃん、ちょっと、いいかな。
【メ鈴】はい、何でしょう?
【サ】マスターのお兄さん、岬亮さんについてお伺いしたいのですが・・・
【メ鈴】はい。姓名、岬亮。生年月日、19○×年△月■日。性別、男。住所、霜月町白鳳台1−201。職業、タレント、私立こよみ学園芸能コース名誉講師。マスターとの続柄、長兄。
【サ】そう言ったデータベースはいいんだけど、パーソナルな点はどうでしょう?
【メ鈴】はあ、マスターが私以上に大切にしておられるようです。何せ、私の製作、メンテナンス費用の大半はアニキ様が捻出しておられます。私にとってもアニキ様は生命線と言ってもいいと思います。でも、アニキ様のデータをインプットされる度、データ処理をする度に、メインメモリがオーバーロードしそうになって、冷却装置が間に合わなくなる事があります。この前も危うくシステムダウンをしそうになりました。おそらく人工頭脳の感情ロジックに何らかの異常があると考えられるのですが、マスターは直してくれそうもありません。私としても心地よいウイルス症状のようなので、気にはしなくなりました。
【サ】は、はあ。
【鈴】こら!メカ鈴凛、余計な事まで言うんじゃないの。あ、いらっしゃい。アニキのことを聞きたいんだって?おじさんもアニキのデータ収集を?まさかライバルラボのスパイか何か?それじゃ教えられないなあ。
【メ鈴】いいえ、マスター、こちらはこの作品の作者の・・・
【鈴】ほんとに!?あはは・・・ごめんごめん。ってことは、おじさんの心象を良くすればアニキからの援助がもっと貰えるって事ね。いいわ、協力してあげる。そうねえ、アニキのデータはいろいろ持ってるけど、殆どこの子にインプットしてあるし、特にこれって事はないかな。でもね、分からないデータがまだまだあるのよ。それはね、『2年前より以前のデータが全く不明。』と言う事と、『私達姉妹の中で誰が一番の妹か。』って事かな。あ、メカ鈴凛、おじさんにお茶をお出しして。私の分もお願い。特に前者はこの子の検索能力であらゆる所にハッキングしても、なかなかしっぽが掴めないのよ。妹としてはアニキの事を知っておくべきだと思うのよ、あ、おじさんなら知ってるわよね?知ってたら教えてくれない?
【サ】あの、それは今ここで教えたら、この話、ここで終わっちゃうんで、それだけは勘弁してください。(汗汗)
【鈴】それもそっか。お話続けてもらって、いっぱいアニキから援助して貰うってのも楽しみだし。ま、いいっか。
【メ鈴】お茶、お持ちしました。どうぞ。
【サ】頂きます。(ずず〜)ずいぶん渋いですね。
【メ鈴】マスターの覚醒を促すためのブレンドです。万が一でも作業中にマスターの手元を狂わす事がないようにと思いまして。
【サ】なるほど。マスターへの気配りも忘れないとは、流石鈴凛ちゃん。

と言うわけで、メカ好きな鈴凛は、岬家の六女。14歳である。こよみ学園中等部芸能コース2年生の彼女は、根っからのメカ好きの技術を駆使し、明○電機も腰を抜かすほどの楽器を発明、一人バンドとしてCDをこの世に輩出している。しかし、表に出るタイプではなく、舞台装置のコーディネーターとか、プロデュースを主な活動としている。そして現在、日本を代表する2大企業によって実用化が噂されているヒューマノイド型メイドロボの開発助手として名を連ね、メカ鈴凛は来栖川工業が開発しているメイドロボ『HMXシリーズ』に対抗しようとしているサイバーダイン社が手がけている、『CBDシリーズ』のプロトタイプハードウェア『C(Cyberdine)P(Prototype)D(Dolls)−R(Rinrin)』として鈴凛が製作、OSとソフトウェアは早乙女某氏が手がけていると言われているらしい。

【サ】次は、七女の四葉ちゃんですが・・・どこだろ?
【四】おじチャマチェキ〜!
【サ】はっ!や、やあ、四葉ちゃん。
【四】くふふ・・・おじチャマの困った顔、チェキさせて頂いたデス。
【サ】流石は四葉ちゃん、分からなかったよ。ところで、今日はね、岬亮さんについて聞こうと思ってるんだけど。
【四】兄チャマですか、兄チャマは四葉の最高のチェキ相手デス。いつかは決定的なチェキチャンスをモノにして、兄チャマとラブリーなチェキの日々を送るのが四葉の夢なのデス。しかしデスね、なかなか兄チャマは曲者デス。四葉がここだと思ったチェキチャンスはことごとくフィルムが切れたり、カメラの電源が切れたり、ペンのインクが出なかったり、仮に撮影出来てもピントがボケていたり・・・謎デス。グラビアやテレビではあんなに格好よくチェキされているのに・・・うむむ・・・でも四葉は諦めません。必ず兄チャマの秘密をチェキするデス。おじチャマにも見せてあげマスね、決定的なチェキを。おっと、こうしてはいられないデス。兄チャマのチェキを、じゃ、またね。おじチャマ。

と、素早い身のこなしで風のように去っていった少女、七女の四葉である。こよみ学園中等部芸能コース2年生の13歳で、彼女は芸能人の秘密を暴き出す芸能レポーターを目指して、日夜岬家の姉妹を教材(実験材料)として、チェキに励んでいる。だが、最大の関心事は勿論、『兄チャマである亮の秘密を暴き出す事』である。月に何日か、仕事でもないのに自分を含む妹達にも知らせず、家を空けることがある亮が、外で何をしているのか、これをチェキしようと躍起になっているのだ。

【サ】いやあ悪いね、白雪ちゃん、ご馳走になっちゃって。
【白】おじさま、気にしないでもいいんですの。今日はよかったですの。ねえ、衛ねえさま。
【衛】うん、こんなにいっぱいのお料理、ボクだけじゃ食べ切れなかったもん。うんとおなかが減っていたんだけどね。おじさんがいてよかったよ。ちゃんと残さず食べられたんだからね、おじさんラッキーだね、白雪ちゃんの料理は最高なんだよ。ほんとはあにぃとボクたちのためにしか作らないんだけど、今日はあにぃがいなくって、どうしようかって思ってたんだ。きっとあねぇ達もそう思ってるよ。
【サ】あはは、何だか今日はすまなかったね。
【白】いいんですの。姫は作ったお料理がきれいに食べられていくのを見るのが大好きですのから。確かに姫はにいさまにおいしいよって言われるのが一番ですけど、おじさまも特別ですのよ・・・ムフン、姫、おじさまで練習して、その後ににいさまに食べてもらいますの。おじさまからにいさまに姫の美味しさを伝えてもらえば、きっとにいさまも姫を食べたくなっちゃうですの。やっぱり口コミって言うのも、宣伝効果ですの。ね、そうでしょ?おじさま・・・
【衛】あ、あわわ・・・や、止めなよ、白雪ちゃん。でも、いいなあ、ボクもあにぃにああやって甘えてみたいな『あにぃ、ボクを食べて』って・・・うわあ、やっぱりそんなこと恥ずかしくって出来ないや・・・(もじもじ)
【サ】(いきなり白雪に迫られて、たじたじの【サ】)あ、いや、その、おじさんは嬉しいけど、やっぱり大事にしないと。白雪ちゃんの初めてはやっぱり・・・
【白】そうですの、やっぱり姫はにいさまに最初に食べてもらいますの!それでは失礼しますの。
【衛】待ってよ!白雪ちゃん!あ、おじさん、じゃあね。

衛は九女で、白雪は十女。衛の方はこよみ学園初等部芸能コース6年、日頃から鍛え上げている運動神経を生かして、将来はアクションスターを目指している。周りからはオリンピックや競技選手になればかなりいい線に到達できるのではと期待されてはいるのだが、当人は兄の亮と一緒にスポーツをする事が最優先事項になっているため、周囲のそんな心配を一蹴している。白雪も同じ学年で、現在子供向け料理番組の司会を務めている立派なタレントで、かつ料理研究家としても名を馳せており、岬家の食の絶対的実権を掌握している。その為、白雪を怒らせると後でとんでもない料理を口にする事になる。いささか妄想癖があるのが玉に瑕の少女だ。こと亮に食べさせる料理を日々考案している。

【亞】あ、もうひとりのじいや・・・
【雛】あ、ほんとだ。おじたま、きょうはなんの御用?
【サ】二人の大好きなお兄さんについて聴こうと思ってね。
【亞】亞里亞は〜兄やと〜あまいもの、いっしょに、たべるの〜。それから〜、いっしょにおうまさんごっこ、するの〜。
【雛】いいなあ、おうまさんごっこ。ヒナも混ぜてね。亞里亞ちゃん。
【亞】雛子ちゃんも一緒にやるの〜。わあい。じいやも、やる?
【サ】おじさんは腰が痛いからちょっと・・・
【雛】なあんだ。つまんないの。
【じ】亞里亞さま!お勉強の時間・・・あら、いらっしゃいませ。
【サ】お邪魔してます。

亞里亞は十一女、こよみ学園初等部芸能コース5年生。彼女は3年ほど前にフランスからメイドのじいやさんと来日、その独特の風貌でモデルデビューを果たし、ローティーンのファッションリーダー的存在に達している。じいやさんは彼女の公私にわたる生活の世話を焼いており、亞里亞のマネージメントもこなしている。年齢不詳だが、過去に亮とは何がしかの関係があったようである。
そして雛子は十二女、こよみ学園初等部芸能コースの4年生である。3歳にして子役デビューを果たし、芸歴7年のベテラン俳優と言ってもよい。とにかく明朗で活発、フランスから来た亞里亞と最初に仲良しになった岬家の末娘である。穏やかな亞里亞と良いコンビを組んでいる。

まあ、とにもかくにも岬家の姉妹たちは長兄である亮の事が大好きなようで、誰もが亮のナンバーワンの妹を目指している。

そう、これは妹たちが兄の一番のお気に入りの妹を目指して奮闘するお話です。

それではもうそろそろ、この屋敷に亮さんが戻ってくる頃です。ここいらで私は帰るとしますか。


あとがき

さて、今回は主だった登場人物の紹介に徹してみました。
次回からは脇役たちも登場して、本格的なお話が始まります。
どんなキャラが出てくるのか、それは次回のお楽しみ。

それでは第1話でお会いしましょう。


BACKOTHER▼NEXT