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船舶法

1船舶法の適用

1船舶法上の船舶

 1社会通念上の船舶

 2但し推進器を有しない浚渫船を除く

2船舶法の適用のない船舶

 1海上自衛隊の使用する船舶

 2総トン数20トン未満の船舶、端船、その他ろかいのみをもって運転し又は主としてろかいをもって運転する舟

3登録制度の適用を受ける船舶

 ・船舶法の適用を受ける船舶のうち、総トン数が20トン以上の船舶

  1日本に船籍港を定め、船籍港を管轄する管海官庁に船舶の総トン数の測度を申請、登記、登録、船舶国籍証書の受有

  2仮船舶国籍証書の受有―航行に供用、但し商行為を行えない。

  3航行認可書の受有―航行に供用、但し商行為を行えない。

☆総トン数20トン未満の船舶を改造して20トン以上になった場合における手続を述べよ。
1総トン数20トン未満の船舶には、登録制度の適用はなく、小型船舶の船籍及び総トン数の測度に関する政令が適用されている。
2そこで改造して20トン以上となった場合には、小型船舶から船舶法上の登録制度の適用を受ける船舶となることとなるため、次の手続をなす必要がある。
 1船籍票の返還(船舶所有者は、14日以内に都道府県知事に返還)
 2船籍港を定め、船籍港を管轄する管海官庁に船舶の総トン数の測度を申請し、船舶件名書の謄本の交付を受ける。
 3船舶件名書の謄本を添付し、所有権保存の登記を行う。
 4登記簿の謄本を添付して管海官庁に備えた船舶原簿に登録をなす。
 5船舶国籍証書の交付を受ける。

4小型船舶

 ・総トン数20トン未満の日本船舶

 1市町村を船籍港と定め、当該市町村を包括する都道府県を統括する都道府県知事の発する船籍票の受有―航行に供用

 (政令の適用のない船舶)

  1漁船法2条1項の漁船

  2総トン数5トン未満の船舶

  3端舟、その他ろかいのみをもって運転し、又は主としてろかいをもって運転する舟

 2臨時航行許可書の受有―航行に供用

☆総トン数20トン未満の貨物船を漁船に改造した場合における船舶法上の手続を記せ。
1総トン数20トン未満の貨物船には、船舶法の登録制度の適用はなく、小型船舶の船籍及び総トン数の測度に関する政令の適用がある。
2しかし、漁船には政令の適用がないため、改造により漁船となった場合には、次の手続が必要となる。
 1船籍票の返還(船舶所有者は14日以内に都道府県知事に返還)
 2総トン数5トン以上20トン未満の漁船(小型船舶)の所有者は、当該船舶の所在する場所をその区域とする都道府県を統括する都道府県知事、又は当該船舶の所在する場所を管轄する運輸省令で定める行政官庁の行う船舶の総トン数の測度を受けなければならない。


2船舶の国籍

1日本船舶の範囲

☆日本船舶の範囲について述べよ。
・次の船舶が日本船舶とされる。
1日本の官庁又は公署の所有に属する船舶
2日本臣民の所有に属する船舶
3日本に本店を有する商事会社にして合名会社にありては社員の全員、合資会社にありては無限責任社員の全員、株式会社、有限会社にありては取締役の全員が日本臣民なるものの所有に属する船舶
4日本に主たる事務所を有する法人にして、その代表者の全員が日本臣民なるものの所有に属する船舶


3日本船舶の特権及び義務

1日本船舶の特権

☆船舶法で認められている日本船舶の特権を2つ挙げ、解答欄に記入せよ。
1国旗掲揚権
2不開港場の寄港、及び沿岸貿易権

2日本船舶の義務

☆日本船舶の義務について述べよ。
1登記、登録義務
・日本船舶の所有者は、船籍港を定め、総トン数の測度を申請し、登記、登録をし、船舶国籍証書を受有しなければ航行しえない。
2国旗の掲揚及び標示の義務
・日本船舶の所有者は、日本の国旗を掲げ、かつ名称、船籍港、番号、総トン数、喫水の尺度、その他の事項を標示しなければならない。
3船舶国籍証書の検認を受ける義務
・日本船舶の所有者は、主務大臣の定める期日までに船舶国籍証書を管海官庁に提出し、検認を受けなければならない。

1登記、登録義務

☆甲地を住所および運航の根拠地とするAが、管海官庁および登記所の管轄を異にする乙地の造船所において船舶を建造し、乙地において受渡しをすることとなった。船舶法上その船舶を航行させるために船舶所有者がなすべき手続について述べよ。この場合、当該船舶には、製造中に抵当権が設定されているものとする。
・船舶を航行させるためには、船舶所有者は、次の手続をなす必要がある。
1船籍港を定め、船籍港を管轄する管海官庁に船舶の総トン数の測度を申請し、船舶件名書の謄本の交付を受ける。
2船舶件名書の謄本を添付し、所有権保存の登記を行う。
3なお、所有権の登記の申請には、登記権利者が日本人であることを証する書面、商事会社その他の法人である場合には、社員、無限責任社員、取締役、代表者の氏名を記載し、かつこれを証する登記の謄本又は抄本、及びこれらの者が日本人であることを証する書面を添付しなければならない。
4製造中に抵当権が設定されているので、所有権の登記は抵当権の登記をした登記所になすことを要する。つまり本件では製造地を管轄する乙地の登記所となる。
5登記簿の謄本を添付して管海官庁に備えた船舶原簿に登録をなす。
6船舶国籍証書の交付を受ける。

☆船舶の登録手続は、原則として船舶所有者からの申請によって開始されるが、例外として申請がない場合にも管海官庁において登録手続を開始することがある。どんな場合に行われるか。すべての例を解答欄に挙げよ。
1日本船舶の所有者が、主務大臣の定める期日までに船舶国籍証書を管海官庁に提出し、検認を受けなかったとき →抹消の登録
2抹消登録をなすべき場合において、船舶所有者が抹消の登録をしないときで、管海官庁が1ヵ月以内になすように催告し、正当の理由なくしてその手続をしないとき →抹消の登録

☆船舶所有者が抹消の登録をしなければならない場合を挙げ、その手続について述べよ。
1船舶所有者は、次の事実を知った日より2週間以内に抹消の登録をなし、かつ遅滞なく船舶国籍証書を返還しなければならない。
 1消滅、若しくは沈没
 2解散せられた
 3日本の国籍を喪失し、若しくは総トン数20トン未満の船舶となったとき
 4船舶の存否が3ヶ月間分明ならざるとき
2これらの場合、船舶所有者は申請書にその事由を記載し、その事実を証する書面を添えて船籍港を管轄する管海官庁に差出す。このとき管海官庁はその船舶原簿を閉鎖する。

2国旗の掲揚及び標示の義務

☆日本船舶に標示を要する事項及び標示方法を述べよ。
 1日本船舶は、日本の国旗を掲げ、かつその名称、船籍港、番号、総トン数、喫水の尺度、その他の事項を標示することを要する。
 2具体的には、次の標示方法による。
  1船首の両舷の外部に船名、船尾の外部の見易い場所に船名、船籍港名を10cm以上の国字をもって記す。
  2中央部の船梁、その他適当の所に船舶の番号、及び総トン数を彫刻し、又はこれを彫刻した板を釘著する。
  3船首及び船尾の外部両側において喫水を示すため船底より最大喫水線以上に至るまで20cmごとに10cmのアラビア数字をもって喫水尺度を記し、数字の下端はその数字の表示する喫水線と一致させること。
 3特殊の構造のため、前述の標示方法によることが困難な船舶は、官吏の相当と認める方法によることができる。
 4運輸大臣は、必要があると認めるときは、標示の場所を指定し、又は標示の場所の変更を命令しうる。
 5船舶の標示は、明瞭にして、久に耐ゆる方法をもってなすこと。
 6標示すべき事項に変更が生じたときは、遅滞なくその標示を改めること。
 7なお、総トン数20トン未満の小型船舶も同様に、船籍票の交付を受けた船舶にあっては、1船首の両舷に船名、船尾に船籍港と都道府県名、及び船舶番号を、2小型漁船にあっては、船首の両舷に船名を外部から見易いように標示しておかなければならない。

3船舶国籍証書の検認を受ける義務

・日本船舶 総トン数100トン以上の鋼製船舶  4年経過後検認

      総トン数100トン未満の鋼製船舶  2年経過後検認

      木製船舶            1年経過後検認

・小型船舶(船舶・船籍票)         6年経過後検認


4船舶の公示及び識別

1船舶の公示制度

☆船舶登記簿は、部または区で構成されているが、部および各区の名称を挙げ、かつ部および各区の記載事項を説明せよ。
1船舶登記簿には、1表題部、2甲区、2乙区、4丙区がある。
2表題部には、船舶の表示に関する事項を記載する。
3甲区事項欄には、所有権に関する事項を記載する。
4乙区事項欄には、抵当権及び賃借権に関する事項を記載する。
5丙区事項欄には、船舶管理人に関する事項を記載する。
6順位番号欄には、事項欄に登記事項を記載した順位を記載する。

2船舶の識別

 1船舶の名称

☆船舶の名称(船名)を変更するときの手続を述べ、またその変更が許可される場合を挙げよ。
1日本船舶の名称は、船籍港を管轄する管海官庁の許可を得なければ、変更することができないものとされている。
2この場合、船舶の名称を変更しようとする者は、その事由を記載した申請書を管海官庁に差出さなければならない。そして変更の登記をなす。
3そして変更が許可される場合は、次の場合に限られる。
 1前所有者の氏名、名称、又はこれと同一と認ずべき名称を有する船舶を取得したとき。
 2船舶の名称に番号を冠附し、又は冠附した番号を変更若しくは削除するとき。
 3所有者において船舶の名称のために著しい不便を受けるとき。
4なお、小型船舶については、都道府県知事に対する船籍票の書換申請で足りる。

2船籍港

3船舶の総トン数

☆船舶の積量に変更が生じた場合の手続について述べよ。
1船舶の修繕により、船舶の積量に変更が生じた場合には、船舶所有者は遅滞なく船籍港を管轄する管海官庁に、その船舶の総トン数の改測を申請しなければならない。
2具体的には、第一号書式の申請書を管海官庁に差出す。
3外国において改測を行う場所は、当該官庁が指定し、申請者は改測を受けるのに必要な準備をなす。
4管海官庁において、改測の申請を受けたときは、船舶測度官をして船舶を臨検し、「船舶の総トン数の測度に関する法律」により、船舶の総トン数の改測を行わせ、第二号書式の船舶件名書及び別に定める書式の総トン数計算書を作成させる。
5管海官庁は、改測を行った場合において既に登録した事項に変更ありと認めたときには、その変更に係る事項を申請者に通知する。
6外国において改測を行った場合は、当該官庁は遅滞なく船籍港を管轄する管海官庁に関係書類を送付する。
7船籍港を管轄する管海官庁の管轄区域外にある船舶につき改測の申請があったときは、船舶をその管轄区域まで航行させることができないときは、その官庁は、船舶所在地を管轄する管海官庁に事務を嘱託することができ、嘱託を受けた官庁は、嘱託をなした官庁に対し、船舶件名書と総トン数計算書を送付する。


5船舶国籍証書及び仮船舶国籍証書

1船舶国籍証書

 1船舶国籍証書の意義

  ・商法  対抗要件

  ・船舶法 国旗掲揚、航行

 2船舶国籍証書の交付を受くべき船舶

  ・総トン数20トン以上の船舶

☆建造によって船舶を取得した者が、船舶国籍証書の交付を受けるまでの手続を述べよ。
1船籍港を定め、船籍港を管轄する管海官庁に船舶の総トン数の測度を申請し、船舶件名書の謄本の交付を受ける。
2船舶件名書の謄本を添付し、所有権保存の登記を行う。
3登記等の謄本を添付して管海官庁に備えた船舶原簿に登録をなす。
4船舶国籍証書の交付を受ける。

 3トン数証明書としての効果

 4国旗掲揚及び航行の要件

☆航行許可書及び船舶件名書について各々簡単に説明せよ。

1航行許可書について
・日本船舶は、原則として船舶国籍証書又は、仮船舶国籍証書を譲受けた後でなければ、日本の国旗を掲げ、航行させることはできない。
しかし、次の場合には、船舶国籍証書又は仮船舶国籍証書の受有前でも、最寄の管海官庁の認可を受けて船舶を航行させることができる。
1試運転のとき、2総トン数の測度を受けんとするとき、3正当の理由があるとき。
この認可をなしたときに発行されるのが、航行認可書である。
2船舶件名書について
・日本船舶は、原則として船舶国籍証書又は、仮船舶国籍証書を譲受けた後でなければ、日本の国旗を掲げ、航行させることはできないが、その船舶国籍証書の交付を受けるためには、船籍港を定め、船舶の総トン数の測度を申請し、登記、登録をなす必要がある。船舶件名書は、船舶の総トン数の測度をなした際に、総トン数計算書とともに船舶測度官により作成されるものである。この謄本の交付を受け、これを添付して所有権保存の登記を行う。

 5船舶所有権移転の対抗要件

 ・登記、船舶国籍書

 6船舶国籍証書の記載事項の正確性の確保

 ・2週間以内に書換申請

2仮船舶国籍証書(交付に制約、有効期間がある点が、船舶国籍証書との違い)

 1仮船舶国籍証書の対抗要件

☆仮船舶国籍証書の交付が受けられるのはどのような場合か。それを2つ挙げて解答欄に記入せよ。
1船舶を取得した場所が、その船舶について定めた船籍港を管轄する管海官庁の管轄以外の場所である場合。
・日本で取得 取得地を管轄する管海官庁が交付
・外国で取得 日本の領事が交付
2船舶が、外国の港に停泊する間又は外国に航行する途中において、船舶国籍証書又は仮船舶国籍証書を滅失若しくはき損し、又は記載事項に変更を生じた場合
日本の領事が交付

2仮船舶国籍証書の有効期間

 1外国において交付する場合 1年以内

 2日本において交付する場合 6月以内

 3やむを得ない事由あるときは、船長は再交付を受けられる。

 4船舶が船籍港に到着したときは、有効期間満了前であっても失効する。

3その他

・船舶国籍証書又は仮船舶国籍証書の英訳書を請受けんとする者は、最寄の管海官庁に申請する。

・本則の規定による手数料は国に対しては徴収しない。