海上運送法
1目的・定義(1条-2条)
1目的
・海上運送の秩序を維持し、海上運送事業の健全な発達を図り、もって公共の福祉を増進すること。
2定義
(事業の種類)
*海上運送事業は、次のように分類できる。
1船舶運航事業
1定期航路事業
1旅客定期航路事業
1一般旅客定期航路事業
2特定旅客定期航路事業
3対外旅客定期航路事業
2貨物定期航路事業
1自動車航送貨物定期航路事業
2その他
2不定期航路事業
2船舶貸渡業
3海運仲立業
4海運代理業
1海上運送事業とは、船舶運航事業、船舶貸渡業、海運仲立業、海運代理業をいう。
2船舶運航事業とは、海上において船舶により人又は物の運送をする事業で港湾運送事業以外のものをいう
3定期航路事業とは、一定の航路に船舶を就航させて一定の日程表に従って運送する旨を公示して行う船舶運航事業をいう。
4旅客定期航路事業とは、旅客船(13人以上の旅客定員)により人の運送をする定期航路事業をいう。
5船舶貸渡業とは、船舶の貸渡、又は運航の委託をする事業をいう。
6海運仲立業とは、海上における船舶による物品の運送又は船舶の貸渡、売買、若しくは運航の委託を媒介とする事業をいう。
7海運代理業とは、船舶運航事業又は船舶貸渡業を営む者のために、通常その事業に属する取引の代理をする事業をいう。
2船舶運航事業(3条-32条)
1船舶運航事業
☆船舶運航事業の種類をあげ、その事業を開始するにあたって免許、許可、開始前届出、開始後届出のいずれを要するか記せ。
(許認可につき、一覧にした。)
1一般旅客定期航路事業
事業の開始 免許 運送約款 認可(公示)
休廃止 許可 運航管理規程 届出
事業計画 提出、変更時認可 譲渡・譲受 認可
運賃料金 認可(公示)
2特定旅客定期航路事業
事業の開始 許可 運送約款 -
休廃止 休廃止後30日内届出 運航管理規程 届出
事業計画 提出、変更時認可 譲渡・譲受 承継後30日内届出
運賃料金 -
3対外旅客定期航路事業
事業の開始 開始前10日前届出 運送約款 届出
休廃止 廃止後30日内届出 運航管理規程 -
事業計画 - 譲渡・譲受 -
運賃料金 届出
4自動車航送貨物定期航路事業
事業の開始 許可 運送約款 認可(公示)
休廃止 廃止後30日内届出 運航管理規程 -
事業計画 提出、変更時認可 譲渡・譲受 -
運賃料金 認可(公示)
5貨物定期航路事業(4以外)
事業の開始 開始前10日前届出 運送約款 -
休廃止 廃止後30日内届出 運航管理規程 -
事業計画 - 譲渡・譲受 -
運賃料金 賃率表届出
6旅客不定期航路事業
事業の開始 許可 運送約款 認可(公示)
休廃止 廃止後30日内届出 運航管理規程 届出
事業計画 提出、変更時認可 譲渡・譲受 -
運賃料金 認可(公示)
7不定期航路事業(6以外)
事業の開始 開始後30日内届出 運送約款 -
休廃止 廃止後30日内届出 運航管理規程 -
事業計画 - 譲渡・譲受 -
運賃料金 -
2一般旅客定期航路事業
☆旅客定期航路事業とは何か。
1旅客定期航路事業とは、旅客船(13人以上の旅客定員を有する船舶)により、人の運送をする定期旅客航路事業のことをいう。
2これには、一般旅客定期航路事業、特定旅客定期航路事業、対外旅客定期航路事業とがある。
☆一般旅客定期航路事業者が免許を受けてから運航を開始するまでに、どのような法的手続(例、認可申請、届出、公示)を行わなければならないかを箇条書きにせよ。
1運賃及び料金の認可申請
2運送約款の認可申請
3運賃及び料金、運送約款の公示
4運航管理規程の作成、届出
1一般旅客定期航路事業の免許基準
1当該事業の開始によって、当該航路に係る全供給輸送力が全輸送需要に対し著しく供給過剰にならないこと。
2当該事業に使用する船舶、けい留施設その他の輸送施設が、当該航路における輸送需要の性質及び当該航路の自然的性質に適応したものであること。
3当該事業の計画が輸送の安全を確保するため適切であること。
4当該事業が利用者の利便に適合する事業計画を有すること。
5当該事業の経理的基礎が確実性を有すること。
6当該事業の開始によって船舶交通の安全に支障を生ずるおそれのないこと。
(免許をしてはならない場合)
1 1年以上の懲役又は禁固の刑に処せられ、その執行を終り、又は、執行を受けることがなくなった日から、2年を経過していない者。
2一般旅客定期航路事業の免許、特定旅客定期航路事業の許可、自動車航送貨物定期航路事業の許可、旅客不定期航路事業の許可の取消をうけ、取消の日から2年を経過していない者。
3法人である場合において、その法人の役員が、1,2に該当。
2運航開始の義務
・一般旅客定期航路事業の免許を受けた者は、運輸大臣の指定する期間内に、当該事業計画に基づき運航を開始しなければならない。
3事業計画
☆一般旅客定期航路事業の事業計画の内容について述べよ。
1航路の起点、寄港地、終点、及びそれらの相互間の距離
2使用旅客船の明細
3運航回数、及び発着時間
4運航が特定の時季に限られているものにあっては、その運航の時季
☆事業計画変更認可の手続と、申請書に記載する事項について述べよ。
1一般旅客定期航路事業者が、事業計画を変更しようとするときは、原則として、運輸大臣の認可が必要である。
2認可を申請しようとする者は、事業計画変更認可申請書2通を所轄地方運輸局長に提出する。
3申請書には、1住所・氏名、2事業計画中変更しようとする事項、3変更を必要とする理由を記載する。
4例外として、省令で定める「軽微な事項」の変更は、遅滞なく運輸大臣に届出るだけでよい。具体的には軽微事項変更届出書2通を所轄地方運輸局長に提出する。
5軽微事項とは、1使用旅客船の船名、船舶所有者の変更、2使用旅客船の総トン数等、3発着時刻の10分未満の変更。
4運賃・料金の認可
☆運賃変更認可申請の手続と申請書に記載する事項について述べよ。
1一般旅客定期航路事業者、自動車航送貨物定期航路事業者、旅客不定期航路事業者は、運賃の変更には運輸大臣の認可が必要とされている。
2具体的には、運賃及び料金設定認可(変更認可)申請書2通を所轄地方運輸局長に、又は3通を所轄地方運輸局長を経由して運輸大臣に提出する。
3申請書には、1住所及び氏名、2当該運賃を適用しようとする航路、3使用旅客船の明細、4当該運賃、及び料金の額並びにその算定の基礎、5運賃及び料金の変更認可申請の場合は、変更を必要とする理由を記載。
4対外旅客定期航路事業者は、運輸大臣への届出のみでよい。
5貨物定期航路事業者は、賃率表を運輸大臣に届出る。
5運航約款の認可(標準運送約款)
6運賃・料金・運航約款の公示
7運航管理規程の作成・届出
・運航管理規程は、省令の定める基準に従い、船舶の運航の管理に関する責任者(運航管理者、25歳以上)の選任等船舶の運航の管理の組織、並びに実施の基準、及び手続に関する事項その他、輸送の安全を確保するため、一般旅客定期航路事業者及び従業員が遵守すべき事項を定めたものでなければない。
3特定旅客定期航路事業
・特定の者の需要に応じ、特定の範囲の人の運送をする旅客定期航路事業。
4対外旅客定期航路事業
・本邦の港と本邦以外の地域の港との間、又は本邦以外の各港間に航路を定めて行う旅客定期航路事業
5貨物定期航路事業
☆自動車航送の定義について述べよ。
1自動車航送とは、船舶により自動車並びに次の人及び物を合わせて運送することをいう。
2 1当該自動車の運転者、2当該自動車に乗務員、乗客、その他の乗車員ある場合にあっては、その乗車員、3当該自動車に積載貨物がある場合にあっては、その積載貨物。
6旅客不定期航路事業
☆旅客不定期航路事業について述べよ。
1旅客不定期航路事業とは、一定の航路に旅客船を就航させて人の運送をする不定期航路事業をいう。
2旅客不定期航路事業を営むには、航路ごとに運輸大臣の許可を受けなければならない。この点、他の不定期航路事業が開始後30日以内の届出でよいのとは異なる。
3しかし、事業の廃止については、廃止後30日以内の届出で足りるものとされている。
4事業計画の変更、運賃料金、運送約款の認可については、一般旅客定期航路事業の規定が準用され同一の法規制に服している。
7不定期航路事業
・定期航路事業以外の船舶運航事業をいう。
3船舶貸渡業(33条)
海運仲立業、海運代理業
(開始後30内届出、廃止後30日内届出)
4船舶の規格・船級(40条、41条)
5雑則(42条-45条の3)
1 5トン未満の船舶等の関する規定
1旅客定期航路事業、旅客不定期航路事業で、ろかいのみをもって運転し、又はろかいをもって運転する舟には、適用しない。
2その他の海上運送事業で、 1総トン数5トン未満の船舶、2ろかいのみをもって運転し、又は主としてろかいをもって運転する舟には適用しない。
2湖、沼、河川において営む船舶運航の事業
1旅客定期航路事業、旅客不定期航路事業で、ろかいのみをもって運転し、又はろかいをもって運転する舟には、適用しない。
2その他の海上運送事業で、1総トン数20トン未満の船舶、2ろかいのみをもって運転し、又は主としてろかいもって運転する舟には適用しない。
3船舶の譲渡等の許可
☆船舶の譲渡に関し、運輸大臣の許可を受けなければならない場合の譲渡人、対象船舶、譲受人について説明せよ。また報告のみでよいとするのはどんな場合か。
1原則として、譲渡人が日本の国籍を有する者、又は日本の法令により設立された法人その他の団体で、譲受人が日本の国籍を有しない者、又は日本の法令により設立された法人その他の団体以外の者である場合には、船舶の譲渡(貸渡)には、運輸大臣の許可を受ける必要がある。
2ただし、対象船舶が、次の船舶である場合には、許可は不要。
1海難救助、しゅんせつ、測量、又は気象の観測のみに使用する船舶、その他の旅客又は貨物の運送の用に供しない船舶(漁船を除く)
2総トン数2000トン未満の船舶(旅客船、漁船を除く)
3総トン数2000トン未満の船舶の譲渡のときは、30日以内に邦船譲渡報告書に船舶明細書を添えて、運輸大臣に提出(報告)する。
4なお、旅客船、漁船以外の船舶の6月(期間傭船は2年)未満の貸渡は、許可が不要で、総トン数2000トン未満の船舶の貸渡、総トン数2000トン以上の船舶の貸渡で、6月(2年)未満の貸渡のときには、30日内に邦船貸渡報告書に船舶明細書を添えて運輸大臣に提出(報告)する。
4海上運送法施行令(運輸大臣の職権で地方運輸局長が行うもの)
1一般旅客定期航路事業
・総トン数数千トン未満 一の地方運輸局内 第2章(船舶運航事業) ×航海命令等
・その他 運賃、料金(8条)、運送約款(9条)、運航管理規程(10条の2)、事業計画の変更(11条)、事業の休廃止(15条)等
2特定旅客定期航路事業 第2章(船舶運航事業) ×航海命令等
3対外旅客定期航路事業 ―
4貨物定期航路事業
・総トン数500トン未満 事業の開始(19条の5)、賃率表(19条の2)等
5自動車航送貨物航路事業 第2章(船舶運航事業) ×航海命令等
6旅客不定期航路事業 第2章(船舶運航事業) ×航海命令等
7その他の不定期航路事業 第2章(船舶運航事業) ×航海命令等
33条(船舶貸渡業等) 20条、24条1項
44条(湖沼河川等) 第2章(船舶運航事業) ×航海命令等