はじめちゃんが一番!
はい、チーズ!
 ある日のこと、歌番組の収録に某テレビ局に向かったWEとA.A.O.。そしてはじめも久々に付き人として付き添っていた。WEは振り付けのチェックをしていてはじめはその様子をじっと見ていた。A.A.O.はどこかに行ってしまって帰ってこない。────と思っていたら……。
「「「「「はじめちゃ〜ん!!!! 見てみてみて!!!!」」」」」
 そう叫んで楽屋に飛び込んで来たのは言うまでもなく五つ子達だった。
「あんた達! いつまで遊び回ってんのよ!!!」
「まあまあ、はじめちゃん、良いもの手に入れてきたから怒らないでよ」
  たくみがそう言うとはじめは「お米券!? ビール券!? 商品券!???」と目を輝かせたが、途端に五つ子達はしゅーんと沈黙してしまった。
「ちっ……違うのか」
 その様子にはじめはガッカリとして興味を失ったようにWEを見た。しかし、二人はお互いの方に額を預け、声を殺して笑い合っていたのだ。
「やっぱ、はじめちゃんって頼りがい有るよな」
「はじめちゃん、サイコー!!」
「み、瑞希さん! 江藤さん! わ、笑わないでくださいよ!!! だって今月も相変わらずピンチなんですから! それもこれもこいつらの修学旅行が────!!!!」
  顔を真っ赤にして言い訳しているはじめを落ち着かせて瑞希は五つ子達に顔を向けた。
「んで、お前ら。何を手に入れたんだよ」
  五つ子は顔を見合わせた後、意を決して取り出したのは……。
「「デジカメ?」」
 瑞希の言うとおりあつきが取り出したのは小さなデジカメだった。
「あんた達! そんなの買うお金、どこで手に入れたのよ!!!!」
「「「「「ち、違うよ! カメラマンのおじさんがくれたんだよ!」」」」」
「ならいいのよ」
   ガク────っ!!
  余りの変わり身の早さに7人がその場に頽れた。
「で……で、お前らそれをどうするつもりだよ」
  立ち直った瑞希が尋ねると五つ子は満面の笑みで
「「「「「はじめちゃんと江藤さんを撮ってあげようと思ったんだ!!」」」」」
「「「はぁ!?」」」
「だってはじめちゃんと江藤さんって恋人同士なのにツーショットの写真が一枚もないでしょ?」
  とかずやの言葉にはじめは顔を真っ赤にし、亮は「そういえば……」と手をポンと打った。
「「「「「だからオレ達が撮ってあげようと思ったんだ────!!!」」」」」
「お前らにしては良い考えじゃん」
「サンキュ」
  瑞希が褒めて亮が礼を言うがはじめは顔を真っ青にさせた。
「ななななな、何言ってるんですか! あたしと江藤さんのツーショット写真なんてとんでもない!!!」
「どうして? はじめちゃん、やっぱオレと写真撮るのイヤ?」
  しょぼんと指を咥えながら亮ははじめを見た。
「う……っ、そうじゃなくって! あたしなんかと写真撮ったのが周りにバレたらどうするのよ!」
「どうもしないでしょ?」
「するわよ! 大ボケやろう!!!! うっかり落としたりしたらどうするのよ!!!」
「まあまあ、落ち着いてよはじめちゃん。はじめちゃんが絶対に落とさない物に入れれば大丈夫だろ?」
「そ、そんなの……」
「あるだろ?  はじめちゃんが絶対に落とさないもの」
「え???」
  はじめは訳が分からず?マークを飛ばしていた。しかし瑞希は亮や五つ子達と見合わせてこういった。
「「「「「「「財布」」」」」」」
「!!!!!!」
「「「「「はじめちゃん、死んでも財布だけは落とさないよね〜。オレ達の事は良くどっかに置いて忘れて帰っちゃうけどさ」」」」」
「あ、あんた達〜〜〜〜〜〜!!!!」
  五つ子の言葉に怒りを爆発させ、今にも飛びかからんとするはじめを亮が後ろから抱き留めた。
「えええ、江藤さん!?」
「撮ろ? ね?」
「……………………………………江藤さんは落とさないの?」
「首から釣り下げておくから落とさないよ」
「ぶっ…………。何よそれ!!!」
「よぉ────し! じゃあ撮るよ〜〜〜!」
  あつきがカメラを構えた。亮はにっこりと笑う。が、はじめは緊張したまま笑うことなど出来やしなかった。
「はじめちゃ〜〜〜〜〜ん、笑ってくれなきゃ撮れないよ〜〜〜〜〜!」
  あつきがぶぅっと顔をふくれっ面をするが「ううううるさいわね!」と怒れても笑顔は作れない。
「………………」
  それを見ていた亮がむぎゅっとはじめの両頬をつまみ上げた。
「え、えほーはん????」
「あつき、はじめちゃん、笑って見える?」
「うん、見えるばっちりーー!」
「え、え、ひょっひょ! まっれ!!」

    カシャ

  無機質なシャッター音がなった。
「〜〜〜〜〜〜〜〜あんららり〜〜〜〜。っへ! あんら! いふまれふまんれるろろ! はらりららいろ!!」
「あつき、オレにも撮らせて、オレ、デジカメって初めてなんだ!」
「ボクも撮る!」
「あ、勿論オレも撮るよ。安心してはじめちゃん」
「オレもオレも! オレも撮る〜〜〜〜!」
「あんららり〜〜〜〜!!!!」
「「「「「江藤さん! はじめちゃん押さえててね!」」」」」
「任せて」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ひふひはん! はふへへ!!」
「はじめちゃん、スマイルスマイル。ね?」
  はじめの必死の願いも瑞希は極上の笑みで切り捨てた。
  この日、志賀が呼びに来るまで楽屋からは奇妙な叫び声が響いていたらしい。。。。
おわり
そんなわけで空也のお題第一弾です。
自分でも意外ですがイラストと相成りました!
……ってほぼ一作分のお話も付いてますが一週遅れの罪滅ぼしとお思い下さい(笑)。
ちなみに最初は「ハイヒール」と「はじめてのチュウ」と言うお話を考えていたんですが……、まあソレはいつか日の目を見れたら良いですね(笑)。
楽しんで頂けたなら何よりです