Ghost Hunt

◇◆◇嵐を呼ぶオンナ◇◆◇
#2
「・・・・・なんて言うかさ、異様な光景だよね」

暗視カメラを抱えたままポツリともらされた麻衣の言葉に、誰もが無言のまま頷いた。
彼らの視線の先にいる人物は二人。『越後屋』こと安原 修と『本部からのお客様』、シェリー=フレデリックである。
二人の何がどう異様だというのか。それはもう彼らの放っている独創的なオーラそのものとしか説明がつかないのではないだろうか。

東北某所。今回の調査場所は山間の村に残された一軒の古びた洋館である。
いつものように機材を運び込むため、コの字型に建てられていた館の中庭にあたる草ぼうぼうの一角に車を停めた。程寒い北国の風に身震いしながら、おびただしい量の機材を運び出す。
ベースに使う広間と車の間を往復するうち、ふと麻衣は気がついた。
館の周りは高い煉瓦塀に囲まれているが、その殆どが老朽化のため崩れ落ちている。その崩れている部分から外を覗き込むようにしながら並んで立っている人影。
麻衣は何気なく手を休めて彼らの声に耳を傾けてみた。
「――――いい天気ですねぇ」
「ですよねー」
「こんな天気の日には調査よりもピクニックですよねぇ」
「ですよねー。・・・・でもピクニックには寒いですよー」
「うーん、春まで待たなきゃだめですねぇ」
「春が待ち遠しいですねー・・・・・」
「ですねぇ・・・・・」
いつのまに来ていたのだろう。麻衣の背後では同じようにイレギュラーズの面々が聞き耳を立てていた。そして彼らもその光景に言葉では表現できない何かを感じ取っていた。
しっかり十秒おいてから冒頭のセリフを麻衣が漏らすまで、誰一人として指一本動かすことが出来なかった。
それが「越後屋」と「天使面の悪魔」によるものなのがいけないのだろうか。会話自体は他愛も無い内容なのに、近寄りがたいオーラが漂っているようだ。
「・・・・・・・いつまで油を売っている気だ?」
いつ終わるとも知れぬその沈黙を破ったのは、やはりと言うべきか。半壊し苔むした煉瓦塀と今にもなにかが出そうな古い洋館がとてもお似合いな魔女・・・もとい北国の風より冷たい上司の声。
そのブリザードのような声を浴び思わず悲鳴をあげかける一同だが、そこは越後屋と悪魔、雷が落ちる寸前に振り返ると「どうも申し訳ございません」と言い、さっさとその場から退散した。



もうじき日も暮れるだろう時間。ただでさえ寒い季節に近づいてるのに、空調設備も整っていないこの館では霊などいなくとも冷気が漂っている。
その一角で二人は向かい合っていた。
「ずいぶんと馴染んでいるようですね」
「ええ、まあ」
「・・・・・楽しそうですね」
「本部よりも居心地がいいんです。空気緩んでるかんじ?」
クスクスと声を漏らしながら彼女の手は絶えず紙の束を捲っていく。先ほどからその動作ばかりを繰り返し、視線は常に手元から外れない。
それを見ながらリンは小さく溜め息を付き、僅かな沈黙の後に口を開いた。
「――――どうするつもりです?」
「何を?」
「日本支部を、です。・・・・貴方が本部にどう報告するか、それで存続か閉鎖か決まってしまう」
「・・・・・・さあ?どうでしょうね。――――リンさん」
「・・・・・・・なんです?」
「リンさんはどうして欲しいと思ってるんです?」
日本支部をこのまま存続させて欲しいのか、と暗に尋ねられたリンは咄嗟に彼女に視線を向けた。するといつの間にか顔を上げていたらしく、彼女はシニカルな笑みを浮かべたままリンを見ていた。
「リンさんは存続させて欲しいんでしょう?」
「―――何故そう思うんです?」
「だってリンさん、変わったから」
「何がです?」
「表情。前よりずっと穏やかになってるし、目つきも和らいでる」
そう言って不意に伸ばされた彼女の指はリンの眉間を小突く。それを避けるでも止めるでもなく、リンは再び溜め息を付きながらされるがままになっていた。
「イギリスにいた頃は、滅多なことじゃ笑ったりしなかったのに。・・・・日本人嫌いじゃなかったの?」
「嫌いですよ、今でも。―――ただ」
「ただ?」
「日本人だという事以外に、彼らを嫌う理由がありませんから」
「―――へえ。成長したんですね・・・」
「おかげさまで」
どこかつまらなそうな面持ちで深々と溜め息を付く。そうして手近な場所に紙の束を投げ出した後、彼女は大きく伸びをしてから部屋の出入り口へと向かう。
黙って彼女の背中を見送ろうとしたリンだったが、去り際にふと振り返り彼女が言った言葉に目を見開く。
静まり返った室内に行き渡る澄んだ響きは、リンの耳には確かにそう届いた。



「私は別にどうでもいいんです」
「―――何がです?」
「日本支部がどうなろうと。それこそこのまま存続しようが閉鎖されようが、私にとってはどうでもいいことなんですよ」
「・・・・・!」
「メリットもデメリットもない。たいして興味なんかないの、どっちでも構わない」
「・・・・・・・」
「本部の連中は四六時中ピリピリしてて息をつく間もない。それはそれで居心地悪いけど、逆に安心できるのよ。くだらない人間関係で神経使うことはあっても、プライベートまで踏み込まれることはないし。―――――ここの人間みたいに、公私の区別も無い入り乱れた付き合いは好きじゃないの。つまらない仲良しごっこなんかして、馬鹿馬鹿しい。吐き気がする」
「・・・・・・・本気で言ってるんですか?」
その問いかけには答えず、完璧な無表情のままリンを見る。
やがて再びリンに背を向けると、彼女は今度こそ部屋を後にした。



あとがき
・・ちょっと。ちょっとシェリーさん!
いくら展開に詰まったからってそんなこと言ったら続き書く私はどうすれば良いのさっ!!
しかも短い!!
勝手に親(私)の手を離れていく我が子(シェリー)・・・。親不孝な娘を持ってしまったものです
(=_=);どうしたもんだか。突然変なこと言いますけど私は茨城県民なんです。なので東京弁・・・
とゆーか標準語がイマイチ苦手でして、創作の中で皆がちゃんと標準語喋れているかかなり不安です(ジョンは更に不安です。なのでセリフが無いのです)。
空也サマ・・・助けてください・・・(号泣)

次回に続きます〜・・・・・(当分終わる気配なしです)

P.S.ナルが茨城なまりで話したら迫力が倍増する気が・・・私はするのですが・・・・ガフッ!!
      (↑『〜だっぺ』、『〜だべよ』等)                       (↑吐血)
あ、あら、あら、シェリーちゃん、もしかしてブラックなお方……?
て、天使の顔した小悪魔ちゃん。何て素敵なフレーズなんでしょう!
もろ好みです。問題発言もどんどん言っちゃってください。

でも、何か悩み事でもお有りなんでしょうか? 気になる〜〜。
蓮美様〜〜。出来るだけ早く続きプリーズ!
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