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| 「あたしに呪いかけてどうするつもりなのよぉ。」 うう、涙が出てきちゃう。 あたしは同じ事を何度も繰り返した。 この同人誌をゴミ箱に入れようとしても手から離れず、 捨てるのをやめると手から離れる。 その繰り返し。 ・・・。 そう言えば前見た漫画で、似たようなのがあったっけ。 たしかその漫画じゃ、同人誌じゃなくってペンだったけど。 事故死した1人の少年がそのペンに宿って、そのペンを持った人の手から離れない。 えっと、どうやってその呪いを解いたんだっけ? えっと、えっと。 そうよ。 そのペンを使って小説を思う存分書いたのよ。 その事故死した少年は小説家希望で、その怨念が取り憑いていて、 少年が満足するまで小説を書いたら呪いは解けたのよ。 だったら、この同人誌も、そうに違いないわ。 つまり、この同人誌をきちんと読んだら呪いは解けるのよ。 ふふふふふふ。 見切ったわよ、千堂かずき。 このあたしを甘く見たわね。 だったら実践有るのみ。 読んでやろうじゃない。 あたしはこの同人誌を読む。 そしてこの呪いを解いた後、思いっきり焼いてやるの。 見てなさい、あたしを怒らせたらどうなるか思い知らせてあげる。 では。 あたしは1ページ目をめくる。 な、何、この下手な構図は? パースもなっていない、トーンもごちゃごちゃしてる。 こんな漫画読まないと駄目なの? うう、あたしって不幸。 ウンザリした気分でページをめくる。 そして次々ページをめくっていき、 あたしは最後のページを読み終わる。 これで、これで呪いも解けるのね! あたしはその同人誌をゴミ箱へと投げ捨て・・・・れなかった。 うにゅう。 まだまだ解けないのね、呪い・・・。 あたしはその後も何度かその漫画を読む。 学校から帰ってきてから、 次の同人誌の原稿を描いてから、 お風呂から出て髪を乾かしながら、 そして寝る前。 ちょっとした空き時間にあたしはその同人誌を読んでいた。 何度も何度も読んで分かったことがある。 この同人誌は下手だ。 漫画の内容は春出たRPGのパロディだった。 ハッキリ言って下手。 技術もないのにテクニックに走り、 コマの配置も滅茶苦茶。 セリフも説明的で読みにくい。 盛り上げるはずのコマも、中途半端でいまいち。 悪いところをあげたらいくらでも出てくる。 そんなドシロウトの描いた漫画。 でも。 何でもっと最初からまじめに読まなかったのだろう。 その同人誌の本当にすごいところがもっと早く分かったのに。 何度も読んで先に何があるのか分かっている。 でも、それでも、ドキドキする。 あたしにはその同人誌が輝いて見えた。 まぶしかった。 そして、この同人誌が捨てれなかったわけが分かった。 呪い何かじゃない。 あたしが捨てたくなかったんだ。 この同人誌にはあたしの持っていない物があった。 ・・・。 ううん。 あたしは持っていた、これと同じ物を。 でも、もう捨ててしまった物。 認めたくない。 だって。 これを認めたらあたしは負けたことになるから。 捨てることでここまで来たあたしが、 これを認めたら今のあたしの存在が無くなってしまうから。 でも。 あたしはこの同人誌を読まずにいられなかった。 『千堂かずき』。 同人誌を何度も読んでいくうちに、 この存在はあたしの中で大きくなっていった。 『憧れている。』 うん。 あたしは千堂かずきと、彼の描いた漫画に憧れていた。 同人誌を読みながら、ふと考えてしまう。 どんな人なんだろう?と。 そして思う。 彼と一緒にやったらどんな風だろう?と。 あたしは毎日何回もその同人誌を読んではその度にそんなこと考えている。 時間は流れていく。 あたしの手元には次のこみパに出す新刊がある。 その同人誌にはなくした物はやっぱり無かった。 こみパ前日。 あたしは決心をする。 彼とユニットを組んでみたい、と。 こみパ当日。 ブラザー2ブース前。 あたしはドキドキする胸をおさえ、彼に言う。 そして・・・。 |
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