「和樹、運ぶだけやったのにえらく遅いやないか。
うち、もう腹が減ってぺこぺこや。」
居間に戻ると由宇がぐてぇとしていた。
「そんなに腹減っているなら自分で運べばいいのに。」
「あほ。うちは客やで、何で其処までしやなならんのや。」
やれやれ。
口では絶対に負けるな。
まぁ腕力でも勝てたためしはないけど。
「ほれ、餌だ。」
俺はテーブルの上に料理を置く。
この広めのテーブルは、
今後もこういうことになるだろうと予測して瑞希と一緒に買ってきたやつだ。
シンプルで調度も良く、なかなかお値打ちだった。
「瑞希ちゃん、これ美味いな。
 うちも料理には自身あるんやけど、瑞希ちゃんには負けるわ。」
由宇は口一杯にほおばりながら料理のことを褒めちぎる。
話によると今月はお金が厳しかったため、又ヒッチハイクでここまで来たそうだ。
その3日間の行程で食べたのは、ドライブインでのかけそば一杯限り。
死ぬぞ、いつか。
で、又うちに泊めてもらおうとしたら丁度引っ越しの日だったわけだ。
ホテルに泊まる金もないだろうから、
恐らく明後日のこみパまでうちに泊まろうと考えているのだろう。
ふぅ。
この分じゃ瑞希と二人っきりになれるのはまだまだ先だな。
「そう言えば、詠美はまだ戻ってきていないのか?」
「えっとまだ帰ってきていないわね。」
出て行ってから結構たつのだが、なかなか帰ってこない。
「和樹、いったい詠美ちゃんは何買いに行ったの?」
「ジュースとか色々。主に飲み物だな。」
「同志一樹よ。飲み物なら編集長が持ってきた差し入れがあるではないか。」
大志は箸で自分の背後を指す。
「アレを瑛美や千紗ちゃんに飲ませるわけにはいかないだろ。」
確かに其処には編集長の『差し入れ』で、飲み物が瓶で5本あった。
で、その『差し入れ』に『美少年』とか、『男ほまれ』とか書いてなければ
詠美を買い出しには出さなかった。
そう、編集長の差し入れは全部『酒』だった。
それも全部吟醸酒。南さんの話よると編集長の趣味の一つらしい。
全国各地の出張に出る度に数本の地酒を買ってくるという。
ちなみに部屋にはそれ専用の冷蔵庫もあるそうだ。
その編集長も仕事が終わったらうちに来るらしい。
「コンビニまでは5分ほどで行って来れるのに時間がかかってるな。」
「ホンマ、ちょっと遅いな。又あの子何かしら事件でも起こしとらんやろな。」
さすがに由宇も気になり始めたらしい。
ちらちらと時計を見る。
「仕方ない、ちょっと俺見てくる。」
俺が立ち上がったその時、それは聞こえてきた。
『うふふふふふ。』
「誰だ!?」
いや、誰かは分かって居るんだけどやっぱりこれはノリでね。
『本命は最後に現れる物なのよ!!!』
ばーーーーん!!
勢いよくその人物はドアを開ける。
其処には思った通り奴が居た。
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