『そう、こみパの女帝、大庭詠美よ!!!下々の者共よ頭が高いわ。』
無意味に胸を張り、腰に手を当てながら瑛美が帰ってきた。
腕にコンビニの袋をぶら下げているのが何ともお間抜けだ。
「あ、あなたは三回目の補習でやっと卒業できた大庭詠美!!」
「ああ、アレはまさしく卒業がやっとで、就職も進学も出来ず、
プー街道まっしぐらな詠美ちゃんやないか。」
俺と由宇は一斉に声を上げる。
「うにゅう、いいじゃな、卒業できただけでぇ。先生なんて諦めていたのよ?」
詠美は登場してきたときとは裏腹に半泣きになっている。
そう、瑛美はこの春卒業が出来た。
補習の末、何とかギリギリおまけでだけど。
1回目、2回目の補習では
『補習なんて受ければ卒業できるのよ。』
と自信満々だったが見事に撃沈した。
三回目。
これを通らなければもう一年高校生をするハメになると知り、
俺の元に泣きついてきたのだった。
そして一週間。
俺と瑞希、そして千紗ちゃんの3人がかりでみっちりと勉強を教えたのだった。
この時一番戦力になったのは千紗ちゃん。
彼女の力無くしては瑛美の卒業はあり得なかっただろう。
その千紗ちゃんは
『お姉様には色々とお世話になったです。これぐらいは当然ですぅ。』
と愁傷な事を言ってくれた。
ちなみに千紗ちゃんは瑛美のことを印刷所の一件から「お姉様」と呼んでいる。
特にそれに関しては変な意味はないが。
「それよりも、何でこんなに遅れたんだ?」
さっき言ったとおりコンビニまでは5分ほどで行ける。
そして品定めしたとしても30分もあれば戻ってこれるだろう。
でも、瑛美が出た後1時間半は戻ってこなかった。
これを疑問に思ってもおかしくないだろう。
「う・・、あ、そう。
 く、クィーンにはクィーンしか分からない事情って言うのもあるのよ。
 そう、瑛美ちゃんってば有名人だから、外で歩いただけでファンに捕まっちゃうのよ。
 そうなると、あ、アレよ。
 サインとか、スケブとか、インタビューとかを受けないといけないのよ。」
何処の世界にインタビューするファンが居るんだ。
この慌て方、おかしい。
ん?
瑛美の後ろに人影がある。
あれは・・・。
「詠美ちゃん、どうしたの?早く入りましょうよ。」
そこには南さんが居た。
「南さん、詠美と一緒だったんですか。」
「ええ、駅前でばったり会っちゃって。だから、一緒に来たんですよ。」
駅前?
駅はコンビニを挟んで反対側にあるんだが。
何でわざわざそんなところでばったりと?
う〜ん、おかしい。
すると、由宇は何かに気が付いたらしい。
「はは〜ん、詠美ちゃ〜ん。あんた、また迷っとったな?」
意地の悪〜い笑みを浮かべにじり寄っていく。
「う、うにゅう。そ、そんなこと無い、そんなこと無い。」
詠美は逃げ腰になっている。
迷う?
も、もしかして道に?
そ、それって・・・。
「詠美、もしかして迷子になったのか?」
「詠美ちゃんは昔から物覚え悪いもんねぇ。ああ、懐かしいわ。
 こみパで自分のサークル席の場所を忘れてスタッフ席っで保護されていたときのこと。
 あのときは放送で呼ばれたんやわ〜。
 詠美ちゃんは泣いているし、うちが腕を引っ張って連れていってあげたんやな〜」
「そ、そんな紀元前のことまで〜」
詠美は又瞳に涙を溜める。
「し、仕方ないじゃない。初めて来た家なんだし。
そ、そうよ。初めての場所で、こんなへんぴなところ迷って当然じゃない。
下僕なら下僕の家らしくもっと分かり易くしていなさいよ。」
逆ギレ。
まぁいつもの事だ。
「誰が下僕だ。」
俺は軽く裏拳つっこみを入れる。
「さぁ、泣いていないで飯食うぞ。
 ジュースは持ってやるからさ。南さんもあがって下さい。」
「うにゅう。」
「はい、ではおじゃましますね。」
詠美は半泣きで、南さんは笑顔で応える。
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