引越祝いは盛り上がっていた。
玲子ちゃんが買ってきた新作ゲームをみんなでやり始めたからだ。
つい2ヶ月前にゲーセンで出た格ゲーで、
まだまだ稼働中なのにもう家庭用に移植されたと話題になった奴だ。
「いっけー、聖様〜。」
玲子ちゃん操るキャラが地面を這う衝撃波を放つ。
「ふふ、甘いで玲子ちゃん。」
対する由宇のキャラがそれを読んでいたのか光の壁を出し反射させる。
そしてそれを追いかけるようにダッシュ。
「え、えっ!?」
反射されるとは思っていなかった玲子ちゃんは、ガードが間に合わず喰らってしまう。
さらにダッシュしてきたキャラが前面に迫り・・・。
「これで終わりやぁ。」
由宇が叫ぶ。
「きゃー。」
玲子ちゃんも叫ぶ。
しかし、玲子ちゃんのキャラは喰らいポーズのままガードが出来ない。
そこへ由宇の攻撃がヒットする。
パンチ、キックの流れるようなコンビネーションが炸裂し、
吹っ飛ぶ玲子ちゃんのキャラ。
そこへさらに追い打ちの衝撃波を何発も打ち込む。
さらに浮いたところにトドメの巨大な衝撃波を放つ。
『aina Win!!』
「ひ、聖様〜〜〜」
「うっしゃー!!」
シュンとする玲子ちゃんと、対照的に大きくガッツポーズする由宇。
「うちも大阪では『浪速アイナ』と呼ばれた女や。簡単には負けやへんで。」
格ゲーにおいて、地名と使用キャラを続けた名前で呼ばれると言うことは、
その地区でそのキャラを使う人間で一番という意味だ。
つまり由宇は浪速で一番のアイナ使いとなる。
ちなみにアイナは由宇の趣味らしくぷに萌えキャラだ。
「次、私私。」
「千紗ちゃん次やるか?」
「千紗、こういうのはじめてですぅ。」
「千紗ちゃんがんばって。」
「詠美ちゃ〜ん、仇お願い」
「ふふふ、任せなさい、この女帝に。」
和気藹々と盛り上がる。
「あのぉ、俺もそっちに行っていいですか?」
俺はなるべくにこやかぁな表情で、手揉みしながら聞く。
江戸時代の商人って感じがしたが、ここは姿を気にしている場合ではない。
ここは出来るだけ下手に、下手に行かないと駄目だ。
しかし女性陣は厳しかった。
『駄目』
冷ややかな目をし、異口同音にそう言う。
「う、ううう。」
千紗ちゃんは目に涙を溜め始める
「ああ、千紗ちゃん。」
瑞希が千紗ちゃんを抱きしめる。
「ほら、和樹。千紗ちゃんが思い出しちゃったじゃないの。
 トラウマになったらどうするの?
 ほら、もう怖くないよ、怖くないよ。」
優しく頭をなでる。
泣きたいのはこっちだよ。
俺は何も悪い事していないのに・・・。
女性陣の冷たい眼差しは、まさしく針の筵と思えた。
「ふ、同志大志よ。我らは頂点に立つ身。そして頂点とは得てして孤独な物なのだ。」
こういう風にした張本人が髪を掻き上げながら言う。
こんな頂点いらねぇよ・・・。
俺は気が滅入ってきた。
そんなときだった。
ピンポーンと呼び鈴が鳴ったのは。
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