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| 次の連載に向けて俺が決意を固めていた頃、女性陣はと言うと、 「そうかそうやったんや、だからこの子はあそこでこうしたんやな。」 「うにゅにゅ〜、下僕のくせにこんなの描き上げるなんて〜」 「きゃ〜、ザイン様かっこいい〜」 「和樹さんの漫画、又面白くなってきてますね。」 「へぇ、こんな展開になるなんて想像しなかったわ。」 「ああぁ、千紗そのページまだ読み終わっていないですぅ。」 と、編集長が持ってきたコミックZを全員で読んでいる。 そしてその脇で大志も 「我が野望に又一歩近づいたな。」 と、遠くを見ていた。 「どう、和樹クン?あなたに近い人たちの意見を聞いて。」 編集長は俺の隣に来て言う。 「アレがあなたの描いた漫画を見ている姿よ。 あなたの描く漫画一つを中心に、読んだ人は感動し喜びを共有できる。」 「俺、もっと描いていきたいです。 もっと何処まで行けるのか確かめたいです。」 「その気持ち、大切にしなさい。 それが漫画を描くパワーとなるわ。」 「はい!!」 俺は拳を握りしめる。 「和樹・・・。」 「えっ?」 さっきまで一緒に読んでいた瑞希が俺の側に来ていた。 表情はかなり神妙。 「やっぱり和樹の漫画はすごいよ、うん。改めて思っちゃったよ。」 「瑞希・・・?」 「んっとね、和樹の漫画読んでたら冷静になっちゃって。 で、なんて馬鹿なことしているんだろって思って。」 瑞希はそっぽを向きながら髪をいじり、話を続ける。 「確かにさっきのはショックだったよ。いきなりあんなの見ちゃったんだし。 でもよくよく考えてみたら、あの事に対して和樹は何にもしていないし。 あのページを作ったわけでもないし、知っていたわけでもないのに。 ただ、『男の人』と言うだけで嫌悪感が出て・・・。 馬鹿だね、あたし。」 由宇達もそれに続く。 「やっぱり調子のってるみたいやわ、うち。 うちが面白がってメールマガジンを開いてこうなったわけやし。 あれだけの漫画を描く人間に悪いのはおれへん。 怒るのは分かるけど、勝手なのは分かるけど堪忍してくれんやろか?」 「えっと、それはもう何時も通りに接してくれると言うことかな・・・?」 「それは、和樹が許してくれるなら・・・だけど。」 何か驚いた表情の瑞希。 「そんなの俺の方が言う事じゃないと思うけど?」 「和樹は怒っていないの?あれだけ勝手にのけ者にしたのに。」 俺は頬をぽりぽりと掻きながら言う。 「怒ると言うより寂しかったかな、うん。」 「すみません、大人げないことをして。 私、ああいうのにちょっと面識無かったのでつい・・・。」 暗い表情で自己嫌悪に落ちている南さん。 その場の雰囲気でみんなして俺達をハブにしていたが、 漫画を読んでいて、 冷静になったときにふと何をしているのか考えてしまったらしい。 そしてそれがなんて幼稚なことなのかと自己嫌悪したらしい。 はっきり言って、助かった。 あの視線はもう浴びたくないと本気で思う。 あの居心地の悪さと言ったらもう・・・。 ぽん。 編集長が肩を叩く。 「何かよく分からないけど良かったじゃない。 ほら、しんみりしていないで。お祝いなんでしょ? 見たところ私の持ってきた差し入れも飲んでいないみたいだし。 それに私たちおなかぺこぺこなのよ。」 「僕たちお昼からなんにも食べていないんですよ。 もうおなか減って死にそうで・・・。」 「あ、はい。瑞希、ご飯持ってきてあげて。」 「え、あ、うん。分かった、和樹。」 ちょっととまどった表情を見せたが、すぐにいつもの瑞希に戻る。 これでいいんだ。 これでいつも通り。 全く、編集長様々だよ、ホント。 |
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