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| 大志の操るキャラが執拗な攻めを見せる。 でもその攻撃は全部・・・ハメ技だ。 「おいコラ、大志。それは卑怯だろ。」 「ふ、甘いぞ同志和樹。勝つためならここまでしないでどうする。」 さらに大志の攻撃は続く。 ・・・え、永久コンボ? 終わりのない攻撃が俺の操るキャラの体力を削り、 そしてそのまま削り殺してしまう。 「我が輩は勝負事となれば魂の兄弟でもこうしてしまう。 ふ、業の深い男よ。」 「まてまて、アレは絶対反則だろ?」 「ゲームの中で出来る技である限り、反則ではない。 文句を言うならこのゲームを作ったメーカーに言うがいい。」 「うっ。」 せ、正論を・・・。 「でも対戦するにはマナーつーのが・・・。」 「同志大志よ。マナーというが誰が決めたのだ? そんな曖昧な物に対し、我が輩が従う義務はない。」 くっ、ハメプレイヤーの見本のようなことを。 「む、いかん、時間ではないか。」 大志はゲームの電源を切り、テレビのチャンネルを替える。 「ふ、危なかった。我が輩とあろう物が時間を忘れそうになるとは。 まだまだ、我が輩も甘いと言うことか。」 眼鏡をクイッと整える。 何だ? テレビではCMをまだしている。 「何があるんだ、大志?」 大志は 『何言って居るんだ、この馬鹿者は、いや、愚か者か?』 と言う表情をする。 そして『やれやれ』と言うジェスチャーをし、 「あさひちゃんだ。」 と一言だけ言う。 あさひちゃんというと、桜井あさひちゃんのことだよなぁ。 テレビではCMが終わり番組が始まる。 それは音楽番組だった。 そのゲストの1人に・・・あさひちゃんが居た。 「あ、今日は新曲の発表じゃないか。」 大志は『何を今更』という表情をした後、 番組が終わるまでこっちを向くことはなかった。 何人かのゲストが歌い終わった後、 いよいよあさひちゃんの出番となった。 新曲が明るく楽しいリズムで流れる。 この曲は、あさひちゃんが主人公を演じる新番組の主題歌になるらしい。 まだ始まるのは2,3ヶ月先なのに、 今一番の話題で、グッズも売れに売れている。 俺はあさひちゃんの歌っている姿を見て改めて思う。 あのあさひちゃんが、このあさひちゃんなんだなと。 上がり性で人前で話すことが苦手で、漫画が好きで、よく泣いて。 最近は特に忙しくなって会うことは希になったけど、 それでも何かあったときに一番に相談しに来てくれる。 以前、俺の描いた漫画がアニメになったらその声優をしたいって言っていたけど、 俺もそうなってもらえるようにがんばらなきゃな。 あさひちゃんも自分の居る世界でこれだけがんばっているのだから。 その時ピンポーンと呼び鈴が鳴る。 誰だろ? 今日来れるはずの人間は全員来ている。 ・・・。 も、もしかして・・・。 俺の脳裏には『噂をすれば・・・』と言う言葉が。 妙な期待感がある。 予感かもしれない。 俺は急いで玄関へ。 そしてドアを開ける。 ・・・。 そこには小さな箱を抱かえた女性が立っていた。 「こんばんわ!真心を届ける宅急便です!!」 「あ、ああ。いつもご苦労様です。」 元気いっぱいに挨拶するこの女性。 彼女はいつも郁美ちゃんに同人誌を届けてくれた、宅急便のお姉さんだった。 「いいえ、これも仕事ですから。確かに届けましたよ。それでは。」 来た時同様に元気良く出ていく。 ふぅ。 そう何時も思った通りいく訳じゃないか。 俺は落胆した気持ちを隠そうともせず居間へと戻る。 「和樹、何だったの?」 瑞希が戻ってくるとすかさず聞いてくる。 「宅急便だよ。えっと、差出人は・・・・え?」 予感は半分だけ合っていたようだ。 差出人は桜井あさひちゃんだった。 |
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