15
話しは少しさかのぼる。

「料理が減ってきたな。」
和樹が唐揚げを口にしながら皿を指す。
確かに、もう最初ほどお料理はなくなっていた。
それもそうね。
わたしは今いる人数を見て納得をした。
わたしに和樹、千紗ちゃん、詠美ちゃん、由宇ちゃんに彩ちゃん。
そして玲子ちゃん達に南さん、編集長。
長瀬さんと大志もいる。
14人もいればたくさん作ったつもりでも、無くなってしまうのは当然。
でも、まだ引越のお祝いは終わりそうにないし、
料理はあった方がいいのかな。
えっと、キッチンの方にお皿に載りきらなかったのが幾つか有ったはず。
「和樹、キッチンにまだちょっと残っていると思うから見てきてくれない?」
「分かった、行ったら分かる位置にあるのか?」
「たぶんね。」
和樹は空になったお皿を幾つか手に持ち、キッチンへと行く。
ついでに流しの方に置いてくれればいいけど、其処まで望むのは無理かな。
ジュースを一口含む。
・・・そう言えば玲子ちゃんが持ってきたパーティの用意って何だったんだろ?
ゲームだけにしては荷物はまだあるし。
あの荷物の中にはいったい・・・?
不意に玲子ちゃんがこっちを向く。
わたしは条件反射で視線を逸らしてしまう。
ああ、これって挙動不審。
何にもやましいこと無いのに。
玲子ちゃんというと、首を傾げわたしの方を不思議そうに見る。
そして自分の荷物を見て、何か納得したらしく手をぽんと叩く。
「くすすすす。じゃぁ、そろそろしよーか☆」
玲子ちゃんはまゆちゃん達に言う。
主語とか無くてもまゆちゃん達は何か分かったらしく、
「そうだねぇ。そろそろいいかもねぇ。」
と応える。
何をするんだろ?
と思っていると、玲子ちゃんは女性みんなで隣の部屋に来て欲しいという。
隣の部屋は寝室で、そんな珍しい物は無いのに。
「なんや、何かするんか?」
「あっちの部屋行ってからのお楽しみ☆。くすすすす。」
あ、何かたくらんでる。
悪気はないのだろうけど、
あの独特の笑い方をするときは、
何かをしでかすときだと短い付き合いの中でも覚えた。
何をするのか興味を覚えたわたしは一緒に着いていく。
千紗ちゃん、彩ちゃん、由宇ちゃん、詠美ちゃんもそれに続く。
南さんは
「先輩がこんな状態なのでわたしはちょっと。」
と、編集長を介抱しながら申し訳なさそうな顔をしていた。
編集長とは南さんが高校生の頃、先輩後輩の関係だったと言っていた。
南さんその頃とあんまり雰囲気が変わらないんだろうなぁと、
ちょっと失礼なことを思ってしまって、わたしは心の中で謝っておく。
まぁ、無意味なことなんだけど、一応ね。

「なにをするんや、玲子ちゃん?」
「えっとちょっと待って。あ、そうだ。
瑞希ちゃん、モモちゃんの衣装まだあるでしょ?」
「え、あ、あるけど・・・。」
モモちゃんの衣装。
アレはわたしが始めてコスプレしたときに作った衣装。
まぁ、あの衣装以外は作ったこと無いのだけど。
「じゃぁ、アレ持ってきてちょうだい。
 やっぱり瑞希ちゃんはアレが一番似合うと思うし。」
似合う?
も、もしかして・・・。
「ちょ、ちょっと玲子ちゃん。もしかしてあの衣装を着るの?」
「そうよ〜ん☆」
「瑞希ちゃんだけじゃなく、みんな着替えるから大じょ〜ぶ。」
その言葉に詠美ちゃんと彩ちゃんがびくっと反応する。
「も、もしかしてあたしも着るの?」
詠美ちゃんが引きつった笑顔を見せる。
「もちろんですぅ。」
そしてキッパリと言われる。
「あ、も、もっちろん私もですか?」
彩ちゃんが恐る恐る聞く。
あっては欲しくないと思いながら。
でも。
「うん。」
たった二文字で肯定される。
玲子ちゃん達はにやりと笑う。
そして鞄の中から大量の衣装をとりだした。
わたし達はそれを見て逃げ出そうとするけど、
すでに今へと続く戸の前は封鎖されていた。
「逃がさないわよぉ。」
わたしには、その時の玲子ちゃんの笑顔が悪魔のように見えた。

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