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| わたしもコスプレをすると言ってからは由宇ちゃんは上機嫌になっていた。 「さすがあんたはうちが見込んだ女や。 和樹のあほもあんたを選んだのがよ〜く分かる。」 「和樹は関係ないでしょ。」 「いや、関係ある。」 由宇ちゃんはそこまで言うとハッとした表情となる。 そして何か決意した表情になり、話を続けた。 「・・・うちな、正直言うと、あのあほに惚れとったのかもしれん。」 「・・・!?」 「うちだけやあらへん。 ここに集まっている女は、ある意味全員あのあほに惚れとる。」 「で、でもあの和樹だよ?」 「何言うとんねん。一番惚れて、一緒におるのはあんたや。 あいつの好いところはあんたが一番よ〜く分かっとるはずや。」 わたしは俯いてしまう。 顔も赤くなっていくのがよく分かる。 「言っとくけど、あいつに惚れとるって言っても、その形は色々や。 例えば南さんは弟としてで、千紗ちゃんは逆に兄としてや。 詠美はあいつの描く漫画に憧れとるし、うちかて同じや。 彩ちゃんも、玲子ちゃんも、編集長かて。 でもな、運命の天秤というのがあって、それの傾き方が違ったら もしかするとあいつと一緒になったのは瑞希ちゃんやのうて、 うちらやったんかもしれへんで?」 わたしは、気づいていたけど見なかった振りをしていたことがある。 それは和樹が誰にでも優しいと言うこと。 人を思いやり、その力になってあげようとする。 千紗ちゃんの印刷所を手伝ったのも、 郁美ちゃんを励まし続けたのも、 彩ちゃんを見守っているのも、 そしてあさひちゃんの相談に乗ってあげていることも。 全てが和樹の優しさから。 由宇ちゃんや詠美ちゃん達にしてもそう言うことがあったんだろう。 わたしは脅えの混じった表情で由宇ちゃんを見る。 脅え? 何に対して? ・・・分からない。 でもわたしは今、何かに脅えていた。 「心配あらへんで。言い出したうちが言うのも何やけどな。」 ゆうちゃんは「安心をし」、と肩を叩く。 「さっき、うちらの惚れているのはみんな形が違うと言ったやろ? それと同じであのあほの持つ感情も形が違うんや。」 「えっ?」 「あいつがどれだけ他の女に優しくなっても、 他の女にどれだけ力になったとしても、 それはそれや。あいつが見とるのはあんただけや。 あんただけなんやで、瑞希ちゃん。 それはうちらにはよく分かっとる。 もっと前、それこそ瑞希ちゃんとあいつがつきあう前ならともかく、 今となったら天秤がどう動いても、 最後にバランスよくなるのはあんたなんや。」 その言葉一つ一つが優しかった。 年はあんまり変わらないはずなのに、由宇ちゃんがずっと大人に見えた。 「何か恥ずかしい。まだまだ子供なんだって感じがして。」 「うちは恋愛って言うのをしたことないんや。 惚れた腫れたって言う話しもあらへんしな。 だからさっき言ったのは全部本の受け売りなんやから あんまり気にせんといてな。」 由宇ちゃんは照れた表情になり、頭を掻く。 そして真顔に戻り、 「そもそも、その体で子供はないやろ?それで子供やったらうちは何や?」 指でわたしの胸をつついた。 ・・・。 「な、なななな、何?」 「冗談や、冗談。でもうちとは全く比べ物にならへんなぁ。」 由宇ちゃんは自分の胸元を押さえ、又見比べる。 「何の話、してるのよ?」 むっつりした顔で詠美ちゃんがやってくる。 その衣装は全て替えられていた後だった。 その衣装は確か玲子ちゃんがよくしていた「翔」と言うキャラの物だったかな。 「わたしもこうなったんだから、あんた達もさっさと着替え・・・。」 詠美ちゃんの言葉が途中で止まる。 そして見ているのは、又わたしの胸。 「な、なに二人して見てるのよ?」 わたしはその胸を押さえる。 高校の頃からこういうことが多かったけど、これって慣れないと思う。 「どうしたの?」 「お姉さんどうしたんです?」 ああ、みんな集まってくる!! 「お姉さん、おっぱい大きいです、千紗もそう言う風になりたいです。」 「胸が大きくても疲れるだけよ、千紗ちゃん・・・。」 何時も着替えするときってこうなのよ。 悪気がないだけに怒鳴ることもできないし。 わたしは慣れることのない視線に耐えながら、着替えを済ませた。 何故か着替え終わるとブーイングされたけど。 うう、わたしは見せ物じゃないのよ・・・。 |
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