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| 部屋内の雰囲気はいっぺんに様変わりした。 何というか、良く言えば華やか。 悪く言えば胡散臭い。 俺は壁にもたれかかりながら酒を飲む。 隣には同じように壁にもたれかけている瑞希。 俺はなるべく瑞希の着ている衣装を見ずに、話す。 「まさか、コスプレの衣装とはなぁ。 いや。玲子ちゃんだったらあり得たことか・・・。」 「そうね。あの荷物を見たときに気づくべきだったわ。」 瑞希は妙に疲れた表情をする。 「何があったんだ、向こうの部屋で?」 瑞希はさらに疲れたような表情で応える。 「色々とあったのよ、色々と・・・。」 そして遠い目をし、ため息をつく。 ・・・色々あったんだな。 これ以上聞くのは止めておこう。 俺は話題を変える。 「前から思っていたんだけどさぁ、コスプレブースって、 コスプレしていない人間が行くと 場違いて言うか、間違っている気がするときがあるんだよなぁ。」 「どういうこと?」 「あの場ではコスプレしているのが当たり前で、 俺みたいにコスプレしていないのが行くと 肩身が狭い思いをするって言うことだよ。」 「ああ、そう言うことね。 確かにわたしも最近こみパに行ってもコスプレをしないから、 玲子ちゃん達に会うときにそう言う風に思うこともあるよ。 でも、急に何でそんなこと言うの?」 「ん・・・。」 俺は頬を掻きつつ、 「まさかここでその気分になるとは思っても居なかったからさ。」 と言った。 今この部屋にいる人間のうちコスプレをしていないのは、 俺、大志、長瀬さん、南さん、そして編集長の5人。 それに対してコスプレしているのは、 瑞希、詠美、由宇、千紗ちゃん、彩ちゃん、玲子ちゃん達の9人。 比率にすると約1:2。 今この場ではコスプレしているのが当たり前で、 そうじゃない俺達の方が肩身が狭いような気がする。 もっとも、そんな気がしているのは俺と、長瀬さんぐらいだけど。 編集長は寝ているし、 南さんは元々そう言うことを気にしないし。 大志に至っては・・・。 コスプレ会場でもないのに玲子ちゃんたちにポーズを取らせ、 写真をパシャパシャ撮っている。 もちろんあいつらしく、1人につき1フィルムだ。 「そう言えば瑞希は自分のを着ているんだな。」 俺は瑞希の衣装を横目で見る。 ピンク色を基本とし、フリルのたくさん付いた可愛い服。 そしておもちゃやで購入してきたステッキ。 これが瑞希が初めてコスプレした時の衣装。 「あ、玲子ちゃんはこれが一番似合うって言ってね。」 「そ・・・か。」 ハッキリ言って気まずかった。 それは瑞希にとっても同じ事だったらしい。 瑞希が最近コスプレをしないのには訳があった。 まぁ、なんだ。 こうやって同棲生活もするぐらいになると、 1度や2度、冒険もしたくなるってもんで・・・。 そのことをこの衣装を見ると思い出されるわけで・・・。 だから瑞希もその「冒険」を思い出すから封印しちゃったわけで・・・。 あっ、いかん。 いらん事思い出して顔が火照ってくるのが分かる。 冒険したことをばれたら、何言われるか分かったもんじゃない。 そう特に由宇や大志には絶対に。 俺は手に持っているコップから酒を飲む。 これで少しはごまかせればいいけど。 なんて考えていると千紗ちゃんと目があった。 千紗ちゃんは嬉しそうな顔をしながら こっちにとたとたと近寄ってきて、 「うにゃぁ。」 と言って転ける。 どうも衣装の裾を踏んだらしい。 俺は千紗ちゃんに手をさしのべる。 「慣れていない格好だから気をつけないとね。」 「はい、お兄さん。千紗、こんなお姫様みたいな服初めてです。」 千紗ちゃんが着ているのは、彼女が言うとおり ピンク色でフリルのたくさん付いた服だった。 確か5,6年前にやっていたアニメでヒロインが着ていた服だ。 これって、玲子ちゃん達の衣装だからこんな頃からしていたんだ。 その頃の衣装が残っているのは物持ちがいいというか、 作りがしっかりとしているというか。 俺は千紗ちゃんの頭を撫で、 「千紗ちゃんがさらに可愛く見えるよ」 と言ってあげる。 これはお世辞ではなく本音から出た言葉。 本当によく似合っているから仕方がない。 まぁ、元のコスプレからしたら別物だけど。 「お兄さんにそう言ってもらえると、千紗とっても嬉しいです。」 千紗ちゃんは誉めてあげたりするとそれに見合った笑顔を返してくれる。 それが見たくて俺は何度も何度も誉めたくなる。 そして千紗ちゃんはそれに見合っただけ頑張る。 千紗ちゃんの頭を撫で続ける俺の隣で、瑞希が微笑ましく見ている。 前に瑞希は、俺と千紗ちゃんはどっから見ても兄妹の様と言っていた。 俺からすると瑞希と千紗ちゃんも姉妹に見えるんだけどな。 たぶん俺と瑞希は千紗ちゃんに彼氏でも出来た場合、 娘を嫁として送る親の気分になるんじゃないかな。 それぐらい、俺達は千紗ちゃんを可愛がっていたから。 「あ、玲子さんにお礼言ってきます。千紗、感激しましたから」 あまりにも頭をなですぎたため照れたのか、 千紗ちゃんはペコリと頭を下げ、玲子ちゃんの方へ去っていった。 当然ずっと撫で続けていた俺の手はやり場を失う。 じっとその手を見る。 瑞希も何かあるのか不思議そうな表情で見る。 「なぁ、瑞希」 「えっ、何?」 「手が空いたんだけど、撫でられてみる?」 |
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