19
「なんや、和樹。こんなところで酒飲んどったんか。って、何しとんのや?」
俺はその場でうずくまって頭を押さえていた。
「馬鹿なことを言った報いよ。」
瑞希が俺に変わって答える。
「まぁいいわ。それよりもたしか明後日のこみパに出るんやったな、和樹は。」
「あ、ああ。そうだけど・・・。」
俺は由宇の姿を見て動きが止まる。
「どうしたんや、和樹?」
「お、おまえ、その格好はそのまんま過ぎだぞ」
「でも似合っとるやろ?」
由宇は勝ち誇ったようなポーズを取る。
今、由宇が着ているのは玲子ちゃんの持っていたチャイナ服。
そして髪を両お下げに結っている。
玲子ちゃんはそのチャイナ服を何かの格ゲーのキャラとして作ったのであろう。
でも、どっから見てもその意図からは外れていた。
眼鏡、お下げ、チャイナ服、そして関西弁。
そう。
何処から見ても今の由宇の格好は
美少女シュミレーションゲームに登場するメカフェチ少女だった。
「何というか、反則?」
「何が反則やねん。最初着るはずだった服の方が反則やったわ。
うちがセーラー服を着るところやったんやで?」
「セーラー服?」
「そうや。眼鏡をかけている意外は
何も共通点のないキャラの衣装や。」
「何のキャラだ?」
由宇は俺に耳打ちをする。
そして聞かされたキャラは・・・。
「それは本当に反則だな。言っちゃ悪いけど由宇とは全く違うキャラだ。」
「そうやろ?眼鏡をかけている意外はほとんど逆のベクトルにいるキャラやさかい、
 うちはこれにしたんや。これだとかなりうちに近いキャラやし。」
「そう言うことを聞かされると賢明な判断だったなと思うぞ。」
「何かそこまで言われると納得できへん物もあるけど、まぁいいわ。」
「そうそう、気にするな。で、何の用だったっけ?」
「えっとな、さっき和樹も明後日のこみパに来るって言っとったやろ?」
「言ったけどそれが?」
俺はさっきも由宇にそう聞かれていたことを思い出す。
さっきは編集長に捕まったからなぁ、由宇は。
「そう言えばさっきも聞いてきていたけど何かあるのか?」
「あのな、和樹も参加するのはいいけど今回は一般入場やろ?」
確かに。
俺は漫画家としての活動をして以来、
余程大きなこみパ以外はサークル参加をしていない。
もちろん今回も新刊を出す余裕はなかったので、申し込んでいなかった。
「待つのは疲れるけど、まぁ仕方がないな。」
俺は一般入場をするところを想像してみる。
流れる人の波。
人と人との間で身動きできない俺。
そして、あの熱気。
うげぇ。 
い、嫌すぎる。
「・・・疲れる所じゃ無いかも。」
「そやろ、そやろ。そこでや。」
由宇は自分の服の中に手を突っ込む。
そしてなにやらごそごそとした後、3枚の紙を取り出す。
「さぁくるちけっとぉ。」
由宇は某未来から来た青い猫型ロボットの口調でそれが何なのか説明した。
サークルチケット。
これが有ればサークル入場の時に悠々と中に入ることが出来る。
確かにこみぱでは1サークルにつき4枚のサークルチケットがもらえる。
そして辛味亭は由宇1人の個人サークル。
2枚のサークルチケットが余っていてもおかしくはない。
「いい加減やめろよ、その物を取り出したときの言い方は。」
「ええやんか、お約束なんやし。で、いらんか、これ?」
「そりゃ欲しいけど、ただじゃないんだろ?」
「当たり前や。うちはそこまでお人好しやないさかい。」
何時もこんな感じだからもう慣れたけど、
時々疑問に思うときがある。
由宇が特別なのか、それとも関西陣は皆こうなのか。
・・・。
由宇が特別と思いたい・・・。
「で、今回の条件は?由宇だからお金と言うことは無いだろうけど。」
「素直でええわ、和樹は。
 和樹がこのサークルチケットで入場すると言うことは、
 あんたは辛味亭の一員と言うことや。」
「売り子でもすればいいのか?」
「まだ話の途中や。
 うちのサークルではな、売り子だけしかやらんというのは雇っておらんのや。
 何らかの形で本作るのに関わっておらんとな。
 そやないと買ってくれる人に何処を頑張ったか、
 何をしたのかきっちり伝えたえられん。」
「ゆ、由宇。お前、もしかして・・・。」
俺は、由宇が何を言いたいのか分かった。
その無謀とも思える考えを。
「やっぱ和樹はよー話が分かるわ。
 そや、明後日のこみパまでに本一冊つくろな♪。」
その時の由宇の笑顔。
俺には悪魔の微笑みに見えた。
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