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| 「ま、待て。俺はやるなんて一言も言っていないぞ。 サークルチケットだって、由宇から貰わなくてもまだ持っている人は・・・。」 俺は視線を他のみんなに移す。 玲子ちゃんは・・・サークルのみんなで丁度か。 じゃぁ、詠美は? あいつも由宇と同じ個人サークルだから・・・。 「あたしのサークルチケット?もう無いわよ。あげちゃったから」 くっ。 じゃ、じゃぁ彩ちゃんは? 彩ちゃんは参加して居るんじゃ? 「・・・ごめんなさい。今回参加していないんです。それで詠美ちゃんから・・・。」 彩ちゃんは鞄からサークルチケットを取り出す。 その隣に詠美が来る。 「彩にはうちで売り子して貰う様になってるわよ。 何時もうちで売り子してくれる人、 今回は急用で来れないって言うから困っていたのよね。」 ・・・。 ならば大志は? あいつは何時も変なルートからサークルチケットを手に入れているはず。 「いくら同志和樹の願いでも、今からでは無理だ。 今回は我が輩の分を手に入れるのでさえ苦労したからな。」 さ、最後の手段。 南さんのコネで・・・。 「和樹くん、こう言うのはやっぱりルールというのを守らないと・・・。」 こう言われるとは分かっていたけど・・・。 これで俺にはもうサークルチケットを手に入れる手段は無くなった。 俺は恐る恐る由宇を見る。 由宇の顔は、勝ち誇った笑みを浮かべていた。 「和樹、大上際が悪いで。 あんたがサークルチケットを手に入れるにはうちの手伝いをするしかないんや。」 「あのな、明後日だぞ、こみパは。今から本を作るってかなり無茶だぞ?」 由宇は「やれやれ」というジェスチャーをしながらため息を付く。 「何言っとるんや。あんたとは前に何度かつくっとるやないか。」 「あの体験があるからイヤだって言っているんだ!!」 かつて、由宇がこみパで来ているので前日にホテルへ遊びに行ったことがある。 その時に、由宇が限定コピー誌を作るのに巻き込まれた。 その時の状況はまさに惨劇と言ってもいいだろう。 一睡も出来ず、原稿を描き上げ、それをコンビニに持っていってコピーし、 それを一枚一枚畳んではホッチキスでとめる。 そしてその時作ったのは200部数。 全てが終わったとき、俺はほとんど屍のようになっていた。 「あのときは前日。今回は前前日や。ほら前より倍の時間があるわ。」 「お前は倍の時間が有れば倍の作業させるだろうが!」 「当たり前や。半額で物を売っていれば二つ物を買う。人として仕方のないことや。」 「だぁ、何で、半額で買えたって喜ばないんだ!」 駄目だ。 由宇には何を言っても無駄だ。 俺に残された選択肢は二つ。 前日に死ぬ思いするか、当日に死ぬ思いするか。 ・・・。 どっちも死ぬ思いをするのか・・・。 俺はガックリと来て膝から落ちる。 「何さっきからやってるの?パンダと喧嘩?」 「誰が喧嘩しとるねん。うちはただ和樹と本を作ろって言っとるだけや。」 詠美に事情を説明する由宇。 「そや、あんたも参加するか?」 「何であたしが由宇の作る本に協力しなきゃならないのよ?」 「何でって、うちのためや。」 詠美のもっともな疑問に、由宇は当然だという感じに答える。 「そんかわり自分で作った部数はあんたのところで売ってもかまわんで?」 「だから、なんであたしが協力するの?」 「あのな、よ〜く聞きいな。うちと和樹、そしてあんたが参加した本やで? 売れるで、これは。伝説さえ作るかも知れへん。」 『売れる』とか『伝説』と言う言葉にピクピクッと反応する詠美。 「で、でも何であんたがあたしを誘うのよ?わ、ワナ?罠なのね?」 「何言うとんの?うちがあんたを誘うわけはただ一つ。 うちはあんたの描く漫画を認めてるって事や。そうでなきゃ、うちは誘わへんで。」 その言葉に詠美は一瞬驚いた顔をし、そして怒りの表情となる。 「嘘よ、嘘よ絶対! だって、前はあんなにあたしの描く漫画のこと馬鹿にしたじゃない。 あたしが壁際に移っても、あたしの描く漫画がどれだけ売れても あんたは認めなかったじゃない。」 前のことを思い出してきているのか詠美は涙目になっている。 感情が突っ走ってきている証拠だ。 でも。 これに関しては由宇の考えていることは分かった。 それは俺も感じていたことだから。 それこそが詠美と彩ちゃんが一緒に漫画を描くのを反対しなかった理由だった。 |
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