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| 「そや、和樹。さっきの返事まだ聞いてないで?」 さっきの返事というと・・・、明後日までにコピー誌を描くというアレか! 「どうなんや?」 さっきも言ったけど、漫画に関するときは何時も由宇は本気だ。 だから、コワイ。 「えっと、その、あれだ。」 「和樹、物言うときは相手の目を見んかい!」 少し視線を逸らした俺に、由宇はボディブローを喰らわす。 「落ちるならその前にイエスかノーか言わんかい。」 由宇は俺の襟を掴むと上下に揺さぶる。 こ、このヤクザ娘が・・・。 でもこれは言うと、又殴られるので絶対に口には出さない。 「由宇、さっき言っていたそれだけどあたしも描くわ。」 赤く目を少し腫らした詠美が、由宇に向かって言う。 「あたしはさっきのことで決めたの。まずは和樹に追いつくって。」 そして俺にビシッと指を指す。 「分かった、あんたはこれから敵よ? 今はちょっと先に行かれているけど、 あたしはあんたに追いついてそして追い抜くの。」 「それはいいけど、何でそれが由宇の漫画に参加することになるんだ?」 詠美はチッ、チッ、チッ、と指を降る。 「簡単な事よ。あんたと一緒の本に漫画を描けば、 読んだ人はどっちが上かすぐ分かるってもんよ。」 って、おい。 「俺はまだ参加するって決めていないんだけど。」 「いいえ、あんたはもう参加するの。あたしが決めたんだから。」 詠美はキッパリという。 「そや、玲子ちゃん達も参加せぇへんか?」 「なに、なにぃ?何か面白いこと?」 「そやからな、明後日のこみパまでに一冊本を作ろうて話しや。」 「面白そうだねぇ。いいよ、参加するぅ。まゆ達はどうするぅ?」 「もちオッケーよ〜ん。今回は余裕もって新作描き上げているからねぇ。」 「千紗もお手伝いします。千紗、漫画描けないけど、コピーとか頑張ってします。」 「お夜食作らないと駄目かな?」 どんどんと由宇の周りに人が集まっていく。 マズイ。 まずすぎる。 このままでは逃げ道が無くなってしまう。 俺は助けを求め、視線を巡らす。 そして見つけたのは大志だった。 しかし、大志はニヤァと笑うと、俺をさらなる絶望の淵へと追いやる。 「同志和樹よ。お前も漫画の道で覇王を目指すなら、 こんな勝負の一つ二つを逃げてどうする? 我らの後ろにはすでに道はない。有るのは前進のみぞ。」 此奴・・・楽しんでいやがる。 そ、そうだ。 編集長なら? 俺は編集長を見る。 「で、どうでした?」 「大丈夫です。次回の分4ページ、まだ空いているそうです。」 「それは良かったわ。あ、和樹クンちょっと。」 「な、何でしょうか・・・?」 何か嫌ぁな気配がする。 「今度のこみパね、 そのレポート漫画を描いて貰おうと思って居るんだけどいいかしら?」 「えっ?」 「レポート漫画よ。 毎回ワンフェスやゲーム発表会でのレポート漫画を、 新人漫画家に描いて貰って居るんだけど、 今回偶然空いているから描いてもらえないかしら?」 その編集長の口調は絶対にノーとは言えない凄みがあった。 俺はその迫力に押され、いつの間にか『ハイ』と言っていた。 「ありがと、和樹クン。 で、そのネタなんだけど 彼女たちと組んでコピー誌を作るって言うのはどうかしら?」 ・・・。 キタネェ。 由宇とグルを組んでいる、絶対。 俺が絶対に逃げれない状況に追い込んでくるなんて。 そこで俺はハッとする。 これだ。これなら今の状況から抜け出せるはず。 「漫画を描くのはいいですけど、うちにはみんなに回す分の画材がないですよ? 今から家に取りに行っていたら電車とかの都合で 描き始めれるのは明日になってしまうし。 そうなるとやっぱり無理じゃないです?」 いくら俺が漫画を描いていても、この人数分で自由に使える量は持っていない。 由宇辺りは何時も持っているだろうけど、それでも足りないだろう。 勝った。 これで何とか抜け出れる。 しかし。 俺は甘かった。 1人。 その画材をカバーできる人物が居ることを、忘れていたのだから。 「・・・あの・・・、私持ってます・・・。」 その声を出したのは、彩ちゃんだった。 彩ちゃんは自分の持ち歩いているカートをから鞄を取り出すと、 その中から莫大な量の画材を取り出す。 「すごいやないか、彩ちゃんは。あ、これうちが使っているペン軸や。」 「そのペン軸は手にフィットして使いやすいと思います。」 「いつ見てもすごいわね、彩の鞄は。」 ・・・。 これで俺は逃げ道を完全に断たれ、 由宇の漫画に参加することとなった。 こみパ開始まで後、36時間ほどのことだった。 |
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