26
原稿が消えた。
俺達の血と涙と汗の結晶、
コピー誌の原稿が無くなっていた。
「さ、探さないと。アレがなかったらコピーさら撮ることが出来ない!」
俺達は必死に探した。
机の下、本棚、キッチン。
有るはず無いと思うところまで全て探し尽くした。
しかし。
何処からも原稿は出てこなかった。
「何よぉ、陰謀?陰謀ね!?
 いくらあたしの漫画が傑作だからって、
 それを読んじゃった人があたしの下僕になっちゃうからって、
 国家的権力が持って行っちゃったのね?」
「どんな国家権力だよ、それは。」
日頃の習慣か、由宇に鍛えられたのか俺はツッコミを入れる。
いちいちツッコミを入れるのは怠かったけど。
原稿も出てこなく、俺達は又ガックリとし、床に座り込む。
もう脱力して動く気にもならない。
何のために俺達あんなに頑張ったんだ?
今まで漫画を描いてきて、
今日みたいに身も心もボロボロになったのは1度や2度じゃない。
でもそれは雑誌に掲載されたり、
同人誌として手元にできあがっていれば、
そんな疲れなんて吹っ飛んでしまっていた。
でも、今回はそれがない。
本はおろか原稿さえどこかに行ってしまったのだから。
それまでの疲れがいっぺんに降りかかる。
もう今回のこみパはいいや・・・
と思ったとき、玄関で物音がした。
そして二人分の足音がして、その音は今いる部屋へどんどんと近づいてくる。
その音は部屋の前まで来ると止まり、ガチャリとドアを開ける。
「ほらみんないつまで寝てるの?そろそろ行かないと間に合わないわよ?」
その足音の主は瑞希だった。
手に製図用のケースを持ち、妙に晴れやかな表情をしている。
そう言えばまだ朝から会っていなかったな。
「もういいよ、今回のこみパは。本もできていないし。」
俺は脱力感から瑞希の方を見ずに応える。
「何言ってるのよ?千紗ちゃんが外で待っているわよ?」
「何をしているのだ同志和樹?
 自分で作った本だ、自分で責任を持って売らないでどうする?」
もう一つの足音は大志か。
「作ったって、原稿もないし、作ることなんかできねぇよ。」
「原稿?ああ、これね?」
瑞希は手に持っているケースから数枚の紙を取り出す。
あの見覚えのある紙は・・・。
原稿だった。
あの俺達が必死になって描いた。
すると・・・。
「もしかして瑞希達、コピーしてきてくれたのか?」
「コピー?ふっふっふ。
 我が輩と同志瑞希はそんな無駄なことは何もしていないぞ。」
・・・?
「じゃぁ、じゃぁ何で瑞希がこの原稿を持って居るんだ?
これはコピー誌の原稿じゃないか。」
「同志和樹。物事とは一定ではないのだ。
 何時も絶えず流れている。そして我らが居るこの時もな。」
わけがわからん。
俺は視線を瑞希に送る。
「外に行けば分かるわよ。
それよりも早く用意して。玲子ちゃん達もシャワー浴びなきゃ。」
「あちゃ〜〜〜、そう言えばずっとシャワー入っていないじゃない。
 う〜〜、髪ボサボサぁ。」
「玲子、こうなったらいっぺんに入るわよ。
 汗が匂ったままコスプレしていたら、コスプレ委員会の名が泣くわ。」
「いえっさ〜〜、曹長どの〜〜。て、言うわけでシャワー借りるね、和樹クン☆」
玲子ちゃん達は自分たちの荷物を取ると、そのまま4人で風呂場へと流れ込む。
キャーキャーと騒ぎながら、時折変な声がしたりする。
・・・。
な、何をして居るんだ?
まぁいい。俺は瑞希の言葉、
『外に行けば分かるわよ。』と言うのが気になったので外へ出る。
うう、太陽の日差しが厳しい。
そう言えば昨日はずっと部屋の中で漫画描いていたんだ・・・。
「あ、お兄さんこっちです。」
マンションの前の道。
そこに路上駐車されているバンの中から、千紗ちゃんが手招きをしていた。
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