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| 「さてそろそろ俺もシャワー入らないと。」 俺は袖口から汗の臭いをかぐ。 結構臭いするな。 まぁ、丸二日間風呂に入っていないし。 手のひらを見るとスミとかで黒くなっている。 これは、顔の方もすごくなってるな。 漫画を描いている最中に何度も目をこすったりしている。 その時に顔に墨が付いているはずだ。 「じゃぁ、親父さん。俺、シャワー入ってきます。」 親父さんは少し驚いた顔をする。 「・・・そろそろ時間は・・・」 「えっ?」 親父さんが何か言おうとするのを聞き直そうとしたとき、 みんなが凄い形相でこっちへ走ってくる。 「た、大変や、和樹!」 由宇は髪も濡れたままで、結ってもいない。 「何やっているんだ、お前。髪ぐらい拭けよ。」 「なに言うとんねん、今何時やと思っとるんや!」 え・・・? そ、そう言えば結構な時間だったはず・・・。 あれから親父さんと話したりして・・・。 「・・・俺もそれを言おうとしたのだがな。」 親父さんは時計を見る。 「すいません、今何時ですか?」 親父さんが言った時間は、もう完全に間に合わない時間だった。 「電車出てるよ、もう・・・。」 俺はガックリとする。 「タクシーは、タクシーはどうや?」 由宇が閃いたように言う。 しかし。 「無理だ、この前を通ることはほとんど無いし、今から呼んでも今日は来ない。」 こみパの日は大方のタクシーが出払っているのは以前体験済みだ。 「バスとか、他の移動手段はどうなんや?」 「間に合うことの出きるバスはもう出ていったよ。 今からだと乗り換えが必要なバスだから間に合わない。」 「否定ばっかり言っておらんで、何かあんたも考えぇや。」 「仕方がないだろ、本当のことなんだから。」 でも由宇の言うことも当然だ。 否定しているだけでは何も生み出さない。 もっと生産的な気持ちにならないと。 でも。 上手い手はなかなか浮かばない。 何か、何かいい手はないのか? 「それだったら、こいつに乗って行けば大丈夫だ。」 それは親父さんだった。 親父さんはバンを親指で指す。 「車で行って、搬入の方から回れば駐車の心配もない。まだ十分に間に合うぞ。」 その言葉を聞いた瞬間、由宇達の顔がぱっと明るくなる。 「やったで、それやったら間にあうわ。」 「やっぱり天はこの詠美様を見ているのよ。」 「じゃぁ早く行こうよ。」 「何から何まですみません、親父さん。」 「ついでだよ。どうせ俺は会場に行くんだからな。」 親父さんはそう言うとバンに乗り込み、エンジンをかける。 「皆さんこっちです。」 千紗ちゃんは後部座席のドアを開け、みんなに入ってもらうようにする。 由宇、詠美、彩ちゃんと中に入り、続けて玲子ちゃん達も入る。 大志は当然のように助手席に乗る。 そして瑞希に乗ってもらい、俺も最後に乗り込む・・・って、あれ? バンの中にはもう俺の座るスペースはなかった。 ・・・。 そうか。 今、後部座席に乗っているのは由宇達9人。 いくらバンでももう乗り込むスペースはない。 さらに俺達の本も乗せている。 今の状態でも、もうかなりきついぐらいだ。 「ほら、もっと詰めて。」 瑞希がみんなに声をかけるが、どうやってもスペースを作ることは出来ないようだった。 「そや、和樹。又、うちらの足下に乗るか?」 俺は以前、由宇達と乗ったタクシーを思い出す。 そう言えばあのときも間に合わないって言ってたな。 あの頃を思いだし、ふと笑みを浮かべる。 ・・・そだな。 俺はバンから降りる。 「俺はいいから行って下さいよ、親父さん。」 そう言ってドアを閉める。 「・・・いいのか?」 「ええ。それよりも、早く行かないと間に合いませんよ。」 がらららら。 後部座席のドアが開く。 「何言ってるのよ。和樹が行かなくてどうするの!」 瑞希だ。 「今からだったらサークル入場は無理でも、一般入場には間に合うよ。」 「だって、和樹が作った本を売るんだよ?一生懸命作った本なんでしょ?」 「そや、サークルチケットの為に本作ったんやないか。 それがあんたが一般入場してどうするねん。」 「気が変わっただけだよ。それにシャワー浴びなきゃそろそろ臭いし。 行ったら売り子するから、それまでは本の方頼むな。 ほら、行かないと間に合わないぞ?」 俺はバンに背を向けて手をひらひらと振る。 「分かったわ、会場で待っとるで。」 ドアの閉まる音。 そしてバンは出ていく。 音は遠ざかっていき、やがて聞こえなくなる。 「行ったか・・・。」 俺は自分の部屋へと歩く。 ・・・。 「行っちゃったね。」 えっ? 振り向くとそこにはよく知った顔があった。 |
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