EASY SHOW TIME
2
3.快斗
「黒羽くんは表舞台に立つ気はないのかい?」
そう聞いてきたのは今や若手No1マジシャンの真田一三だ。
…どーでも良いけど、オレ、コイツ嫌い。
ホラ、あのセリザベス号で、コイツ自分の方がオレより格上みたいに言ってたろ? 「負けませんよ」? カチンときたね。何が若手No1だよ。オレがいないからNo1ってコトになってんだよ、バーカ。
「君は一流のマジシャンと言っても過言じゃない程の腕前なのに…勿体無いね」
「まだ高校生ですから… それにあまり目立つのは好きじゃないんで」
「へぇ…若い人にしては珍しいね」
表舞台だなんてまっぴらだ。オレは高校生とキッドで手一杯だっての。メディアになんて顔を出してたら忙しすぎて目ェ回って死ぬかもね。
バイトは順調に、そして楽しく出来た。最初の一週間は真田のアシスタントをやったけど、オレのマジックはどうやら好評で、今では前座も任されている。
今日も最初の30分はオレの独断場。
そして、仮面をつけてステージに上がったオレは、最前列の小学生カップルに目が止まり、思わず小さく笑ってしまった。
4.コナン
夕方に再びやってきた九十九文乃は、事態を未だはっきり把握出来ていないオレを引っ張って、半ば強引に車に押し込んだ。蘭はそんなオレをニコニコと見守っていた。
「それじゃ文乃ちゃん、コナンくん。楽しんできてね」
「ちょ……蘭ねぇちゃん…!?」
「はーい。」
オレの次の言葉を遮るように、車は非情にも進み出した。
連れてこられたのはトロピカルランド。
「今日はね、一三お兄ちゃんがとっておきのショーを見せてくれるんだって。だから『コナンくんも誘っていい?』って聞いたら『ぜひ連れておいで』って言ってくれたのー」
そう言って文乃はオレの手を引いてマジックショーのステージへと歩き出した。
ったく、どうしてオレがガキの子守りなんてしなくちゃなんねーんだよ…
文乃は客席の最前列に腰掛けて、オレに向かってニッコリと微笑んだ。
18時30分になると幕が上がった。
前座があるらしく、一人の仮面をつけた男が舞台の中央に歩いてきた。
ふと、目があった気がした。
その男は、袖からポロポロとジャグリングのボールを出しては上手に操った。そしてそのボールを次々と空のシルクハットの中に入れ、その度に鳩が一羽ずつ飛び出した。男は鳩を肩にとまらせると今度は次々に鳩を元のボールに戻していく。
見事だとしか言い様がなかった。
男は言葉を一言も発する事なく、音楽も流れない静かな舞台の上でただ淡々とマジックを繰り広げていた。
観客の誰もが言葉を発しない。
派手さなんてないマジックなのに、見る者全ての心を奪っていた。元々マジックに興味の無いオレも、まるで心を奪われていく様だった。
どこからか現れた猫が数匹、男の足元に纏わりついていた。猫はゴロゴロと喉を鳴らしながら、男の身体に爪を立てて登りはじめた。猫は男の肩まで登ると、顔を隠していた仮面を剥ぎ取った。
…仮面の男には顔が無かった。
顔が無い男が指を鳴らすと、いつの間にか猫は消えていて、足下に落ちた仮面がカラカラと音を立てていた。
その仮面は小さな爆発を起こし、ステージが小さな煙に包まれた。
煙が晴れると其処には鳩が一羽、ポツリと居た。
その間、わずか3分。
観客席が湧いた。
鳴り止まない拍手。そして、観客の上をまるでお礼をしているかの様に鳩がグルリと一周舞った。
鳩が戻った先には、仮面の男が立っていた。
「有難うございました。あと5分でマジックショーの開演となります。皆様席を立たずにもう暫くお待ちください。 前座は私、黒羽快斗でした」
わっと湧いた観客の拍手の中、仮面を外した男の顔を見て、
…またしてもオレは驚愕した。
まだ続いちゃって…良いですか??(死)
続きは早く…とか言いながら遅くなってしまいました(><)申し訳ありません〜
更に未だ続くし…(殺)