好きという気持ち。
2




 翌月曜は朝から雨だった。

 オレは、重い足取りで学校へと向かった。



 ヤマトさんに告白してしまった。
 好きだと言ってしまった。
 昨日の日曜の事は思い出したくない。

 一生、誰にも言わずにいようと思っていたのに、口からぽろりと溢れてしまった。
 しかも公衆便所なんて最低な場所で。その上、泣いてしまった。
 もう、ヤマトさんに合わせる顔がない。
 ヤマトさんだって、きっとオレの事、気持ち悪いとか思ってるに違いない。
 今まで太一さん達が男同士で付合ってるのを見て、快く思ってないみたいだったけど、結局は他人の恋愛。ホモだろうが友情に変わりなし!って、そんなカンジだったけど……オレの場合は、そのホモの対象にしてたんだから…嫌われても仕方がないよなぁ。

 畜生!!タイムマシンがあれば、昨日に戻ってやり直すのに!!
 そんな考えが頭の中でぐるぐるぐるぐるしてしまう。

 でも、いくらそんな事を考えていても仕方がない。過ぎた時間は戻らないんだから……


 
「おはよう、大輔君」
 背後から声が掛かった。今一番見たくないヤツの声だ。
「おう」
 振り返りもせずに、オレは小さく返した。
「昨日は、ごめんね」
 五月蝿い。
「本当に、ごめん……」
 五月蝿いよ。
「僕、ちょっとからかうつもりで、あんな事言ってしまって…」
 五月蝿いってば!
「大輔君を傷付けちゃって……」
「五月蝿ぇっ!!」
 振り返って怒鳴り付けた。
 学校へと向かう奴等の視線が、オレとタケルに集中した。ざわめく外野の声が、また一層オレのイライラした気分を逆撫でるようで、ムカムカした気持ちが更に広がった。
 タケルは、泣きそうな顔でオレを見ている。
 畜生、これじゃあまるでオレが悪者みたいじゃねぇか!!


 オレは、胸が苦しくて、その場を走って逃げた。





 教室に入ると、いつものように先に来ていた奴等が固まって話していた。
「おっはー大輔ぇ」
「おーっす」
 ケンタとヒロシがオレに気付いて話しかけてきた。
「な、大輔ぇ。昨日何でウチ来なかったんだよ。折角新しいソフト入ったのに」
 ケンタがつまらなそうに言った。
「最近付合い悪いぞ」
 ヒロシが苦笑混じりに言った。
 それにオレは笑い乍ら答える。
「ばーか、オレはほら、人気者だから、あちこち引張り凧なのよ。人気者はツライね〜」
 戯けてみせたオレに、ケンタもヒロシも笑い乍ら小突いてきた。

 本当に、そっちに行けば良かったと、今更乍ら思った。
 そうしたら、タケルのヤツにあんな事言われる事もなかったし、ヤマトさんに醜態を見せる事もなかっただろうに。

 でも、ヤマトさんに会いたかったから。
 ヤマトさんと色々話したかったから。

 そうだ、タケルはただのきっかけに過ぎない。
 結局言ってしまった自分が一番悪いんだ。

 タケルは謝ってきたのに、オレは自分を正当化して、それをつっぱねてしまったんだ。

 オレは、最低だ。





「お、高石おはよ!」
 タケルが教室に入ってきて、それに気付いたヒロシが声を掛けた。
「おはよう、広君、犬太君、大輔君」
 少し低い声で、それでも微笑み乍らタケルが返した。オレは、顔を合わせ辛くて思わず俯いた。でも、
「なんだ?なんか元気ねぇじゃん」
 ケンタのそんな言葉が、オレの顔を上げさせた。
 タケルはオレと目が合うと、凄く悲しそうな顔をして、また「ごめん」と言って頭を下げた。
「何だお前らまた喧嘩してんの?」
 ヒロシとケンタは顔を見合わせて、オレ達から一歩引いた。
 そして、
 それでもオレはまた顔を背けてしまった。

 自己嫌悪で吐き気がする。





 1限のチャイムが鳴ったのを良い事に、オレはタケルから逃げた。









戻る続く




わ〜わ〜更に続きます。
いやいや、本当に一応全部書き終わってるんですが、
毎回UPする前に読み返し、どうしようもなく文めためたで
悪あがきに時間がかかってしまい…(爆)


2001.03.27. 草ムラうさぎ

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