「自分から辞めてしまったのでは、それこそ会社の思うつぼです。本人が自分から進んで辞めてしまった場合、会社の責任は全く問われません。たとえ実際には会社が違法に退職を強要し、それを拒みきれなくなって社員の方から辞表を出してしまったとのだとしてもね」 「そういえば自分から辞職するか会社に解雇されるかで、その後の扱いも大きく変わってくるという話を誰かに聞いたことがあったっけ」 「定年退職とかではなしに会社を辞めるケースには自分から辞職する場合と懲戒解雇、それから整理解雇とがあります。懲戒解雇というのは本人が何か懲罰に値することをしてしまった場合ですから、その後の転職や再就職が難しくなってしまいかねません。自分から辞職した場合も、別の会社へ再就職する時には前の会社を辞職した理由を訊かれる可能性が高いでしょうし。しかし整理解雇の場合は社員の側でなく、完全に会社の責任です。したがって解雇された社員の側は、何も責任がなかったと見なされるんですよ。だから転職や再就職の際に、それが理由で不利になるということは原則としてありません。それに普通の会社だと辞職や整理解雇か懲戒解雇かで、退職金が出るか出ないかも変わってくるのでしょう。アサシンの場合は就業規則に退職金の規定がありませんから、どちらにせよ退職金は全く支払われないわけですが」 「それから失業手当の支給に関しても、辞職か解雇かで違いが生じるはずだったよな」 「会社の都合による整理解雇の場合は会社から受け取った離職票を職業安定所へ提出すると、その数日後の分から失業手当の支給が開始されます。しかし社員の側が自分の都合で辞職した場合は、その三か月後にならないと失業手当が支給されません。その意味でも社員の側が自分から辞職するのではなく、会社の都合で整理解雇された形にする方が得だと言えそうですね」 |