「お前たちが俺の考えや手口を学べるようにと思い、こうやって毎日の朝礼で話をしてやっているんじゃないか。お前たちにとっては仕事を予定どおりに進めることなんかより、まずは朝礼に出て俺の話を聞くことの方が大事なんだよ」 菱田社長は皆の前で、いかにも偉そうに振舞ってみせたいだけなのだ。いかにも自分を偉そうに見せかけ、そうすることで見栄を張りたいだけなのだ。皆に対して偉そうに指示を出し、自分の言葉に皆を従わせたいだけなのだ。そのためになら自分の指示が、たとえ顧客の希望と食い違っていたところで気に留めようともしないのだ。その結果として顧客が望んだとおりの雑誌ができず、顧客が不満を抱いたとしても気にしないのだ。ただ単に自分の我がままを押し通し、それによって自分が偉いのだと感じられれば満足するのだ。なにやら自分が大物ででもあるかのように錯覚しつづけていることができさえすれば、いい気になってしまうのだ。そんな独り善がりな見栄を満足させることができさえすれば、その他のことなどどうなろうとも構わないのだ。顧客の希望をかなえたり社員に対する責任を果たそうというつもりなど、はなから菱田社長の頭の中には存在しないのだ。顧客や社員に対する責任を全く自覚せず、ただ単に自分が見栄を張りたいがためだけに会社を経営しているだなんて。しかも自分に力や感性が欠けているということに気づけず、いかにも自分が他の皆に優っているかのように思いこみ威張ってみせるだなんて。それがどれだけ醜く情けないことなのか、自覚できるだけの神経すらも菱田社長は持ちあわせていないのだろうか。 「この会社は俺の力で大きくなってきたんだし、俺の力でもっているんだ。この会社では俺がスターなのであって、この俺の力や感性が会社にとってのセールス・ポイントなんだよ。だからお前たちは皆、この俺を盛りたてることに徹していればいいんだ。それを納得できないと言う奴がいるなら、この会社にいてもらう必要なんかない。武林だけでなく他の誰であれ、今すぐ辞めてもらって構わんぞ」 |