「私の不当解雇に関して提訴を行なうだけでは、それほど大きな脅威を会社側に対して与えることができません。会社側としては私に対する解雇を取り消して、その間の分の賃金を支払うだけでいいわけですから。したがって提訴を行なう際には、これまでの賃金の未払い分に関しても支払いを要求するつもりなんですよ」 「でも最大で、せいぜいが数百万円くらいの金額しか支払わせることができないのか。それだけだと何だか、こちらの気が納まらないよなあ。あの菱田社長たちがやってきたことを考えると、もっと大きな罰が与えられるというんでないと納得できそうにないぜ」 「確かに私の分の金額だけを取り上げて考えたのでは、ものたりなく感じられるのかも知れません。しかし、ここで少し考えてみてください。残業代や休日出勤の手当てが未払いのままになっているのは、なにも私だけではないんですよ。もしも皆がそろって賃金の未払い分を請求したとしたら、どうなると思われますか。どれだけの人が加わるかにもよりますが、少なくとも何千万円という金額になるのは確実でしょう」 「なるほど、いざとなったら皆でいっせいに訴訟を起こせばいいってわけだね。そうすれば菱田社長たちに対して、かなりの打撃を与えることができそうだな」 「もちろん今の時点で会社に残っておられる方としては、参加しにくいという気持ちもあるでしょう。しかし私たちとしては、その場合でも提訴を行なうつもりなんですよ。私を含めて、すでに会社を退職したり解雇されている者だけでもね。その時には小野寺さんや奥田さんたちが皆、残業代の未払い分を求める提訴に加わっていただけることになりましたので」 「大石さんたちが来る前に僕たちは、その件について話をしていたんですよ。菱田社長たちに対しては皆、いまだに恨みを拭いきれずにいる者ばかりですからね。その菱田社長に一泡ふかせることができるなら、いくらでも協力させてもらいますぜ」 |