一枚の地図

一枚の地図


               1991/10
日本列島に雨が降ると、その水は最終的には、日本海か大平洋に出る。八ヶ岳に降 る雨も同様であろう。雨は木々に伝わりゆっくり大地に染み込むか、その表層を流 れ、沢を伝わり川になる。その小さな川が合流し、大門川をつくるだろう。

今一枚の地図がある。その地図は高根町が発行した『高根町地名誌』と呼ばれる本 の26頁と27頁の間に挟まれている。高根町全戸に配布されたはずなので、持っ ている人はその地図をまず見ていただきたい。この本の本来の目的は、高根町の古 くからある地名の由来を解説したものである。その参考図として、清里にある沢の 名前とその位置が記されているだろう。沢とは川のことである。つまり清里の水系 図として読めるのだ。この水系図に県有林開発の諸施設を記入してみよう。その諸 施設と大門ダムがどのような水の流れで結び付いているかを確認しよう。

大門ダムの上に倉沢橋があり、その橋を通過して大門ダムに流れ落ちる水兼沢川 を上流に辿ると2キロもしないうちに丘の公園・ゴルフ場に突き当たるだろう。こ の地図が正確であるならば(郷土研究会編、高根町発行なのだから信憑性は高い)、 ゴルフ場の農薬が雨水と共に大門ダムに流れ込まないという保証はどこにもない。 無いという確率よりあるという確率の方がはるかに高いだろう。

清里の森には、赤井沢栗の木沢藤沢があり、つまり3本の川が流れている。 なぜそいう地形、水系の場所が別荘団地として開発されなければならなかったのか。 まったくの必要性、必然性のない開発。大門ダムの目的を飲料水確保としているな ら、絶対に手を付けてはならぬ場所を、この開発をした人間たちの眼は、そこを流 れる川を、金をかけなくてもすでに造られている天然の下水路として見立て、それ ゆえにこそ、わざわざそこを選択したのではないのか。どの道、清里の下水は大門 ダムに流れ込むしかないのだが、こういう明白な狂った開発が、平気で進行し、誰 も指摘しなかったこと、それが問題だ。

県は清里の森の生態系、水系を事前に調査したのだろうか。大門ダムと県有林開発 (丘の公園・ゴルフ場、清里の森、大泉・清里スキー場)の関係を考察した形跡が どこにも見当たらない。何を県はやってるのだ。県議会はちゃんと審議したのか。 こんなデタラメな開発をチェックできなくて、議会と言えるのか。

専門家、学者は何をしていたんだ。こんな開発はしてはいけないと発言する人間は いなかったのか。

マスコミ・ジャーナリズムは何をしていたのだ。環境を旗印にしている朝日新聞よ、 清里のよい子達と戯れている間に、こういう重大な現実を見過ごしているんだよ。