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母親というものは

 葉 祥明


母親というのは無欲なものです
我が子がどんなに偉くなるよりも
どんなにお金持ちになるよりも
毎日元気でいてくれる事を
心の底から願います
どんなに高価な贈り物より
我が子の優しいひとことで
十分過ぎるほど幸せになれる
母親というものは
実に本当に無欲なものです
だから母親を泣かすのは
この世で一番いけないことなのです


めぐり逢い

窓の外を真珠色の朝もやが流れ

青みをおびた湖が姿をあらわす

湖畔の樹々は 枝を伸ばして緑の影を水に映す

小鳥達が歌い 光が窓を磨き 夢から醒める朝

その朝のときめきを何といったらいいだろう

夢のほとりに あの人が佇み 優しい微笑みをくれたのだ

夢から醒めたあとも 

胸の奥にゆらゆらと 明るいかげろうがゆらめいた

湖の向こうの 白い別荘に住んでいるあの人

散歩の途中 時折顔を合わせる人

逢えた日は 一日中気持ちがはずんだ


ふるえる木いちごの花に あの人の微笑みがある

光る木の葉に あの人の微笑みがある


光よ 風よ どうあらわしたらいいだろう

眠っていたものが いきいきと目覚めて

からだのすみずみまで行きわたり

歌い出したくなる この気持ち


黄昏に
・・

秋は黄昏れ

西の空を赤く染めて 教会の屋根を黒く浮かび上がらせ

おごそかなミサ曲のように暮れていく


黄昏は追憶

暗い夜がしのびより 窓という窓に明かりが灯り

なつかしい人の優しさのような 温もりに包まれる


追憶はセピア色

枯れ葉が舞い落ちて 足にからみつき

坂道を未練のように追いかけてくる


セピア色は甘い哀しみ

遠くにいる人を想い ため息がこぼれ

甘酸っぱく胸締めつけられる ひとときの想い


甘い哀しみは秋

色とりどりの木の葉が 夕闇にとけていく

ひそやかな あの一瞬のように

どこかに隠れてしまいたい日の哀しみ


秋は黄昏れ 黄昏は秋

アンドレ。ギャニオン「インプレッション」に寄せて〜中山 恵子

霧の中

不思議だ 霧の中を歩くのは
どの茂みも石も孤独だ
どの木にも他の木は見えない
みんなひとりぼっちだ

(中略)

不思議だ 霧の中を歩くのは
人生とは孤独であることだ
だれも他の人を知らない
みんなひとりぼっちだ

願い

無言のうちに多くのことを語っている小さい手を
差しのべてくださる時
私はいつかあなたにたずねました
私を愛してくださるか、と

私はあなたに愛してくださいとは望みません
ただ、あなたがそばにいてくださることを知り
あなたが時折無言でそっと
手を差しのべてくださることを望むばかりです

ヘルマン・ヘッセ詩集より

ジェットストリームのナレーション

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