魔装機神 第1章 プレストーリー
「 風が呼んでる・・・ いつか聞いたあの声が・・・
・・・ 俺は旋風! 誰にも止められないぜ!! 」
( 「熱風!疾風!サイバスター」より )
地球空洞説は、本当だった・・・ 地底世界ラ・ギアス、そこは地上とはまた異なる文明が発達していた。 その歴史は5万年にさかのぼることが出来、 錬金学と魔術が文明の根幹を支えていた。 元々ラ・ギアスでも、現在の地上と同じく科学文明が発達していたのだが、 人々は科学文明の危険性に気づき、 良き精神学によって導き運用される超自然文明へとシフトしていったのである。 ラ・ギアスにもいくつかの国家が存在している。 神聖ラングラン王国、シュテドニアス連合、バゴニア連邦共和国の3国が その中では最も勢力を誇っている。 ラングランに重大なる予言が示された。 精神世界であるラングランでは予言の信憑性は大変高い。 「10年以内に、正体不明の力によって、ラ・ギアスは滅亡する」 人々は、あまりの予言内容に絶句した・・・ 時のラングラン第287代国王、 アルザール=グラン=ビルゼイアは名君であった。 国王にふさわしく高い魔力を持ち、決断も果断であった。 「人の心を信じ、人の力にて、悪しき力に対抗する善なる魔人を創り出す」 アルザールの全面的協力のもと、王立アカデミーは その錬金学と魔術の粋を結集して人のプラーナ(精神エネルギー)により 無限の力を生み出す人型兵器の開発に成功した。 オリハルコニウム装甲。フルカネリ式永久機関。ラプラスデモンコンピュータ。 精神科学の結晶は、大いなる地水火風の守護精霊と結びつくことにより 大いなる魔人=魔装機へと昇華した。 作り上げられた16体の魔装機のうち、4体の魔装機は特別な力を秘めていた。 精霊の中で最も位階の高い、地のザムージュ・水のガッド・火のグランバ、 そして風のサイフィスを守護精霊を宿したそれらの魔装機は、 その神にも匹敵する力により「魔装機神」と呼ばれるようになった。 しかし、魔装機神には致命的な問題点があった。 その絶大な能力を発揮するためには、想像を絶する精神力=プラーナが 操縦者には要求されるのだ。 プラーナの力は、強靱な=ハングリーな精神力を持つ者ほど大きくなる。 一見精神力の強い者で構成されているかに感じられるラ・ギアスには、 その精神の成熟性故、魔装機神を動かせるほどの強いプラーナを持つ者は 皆無だったのである。 予言の時まで、残り4年。 アルザールはついにある危険な賭けを決断した。 「異世界より魔装機神を動かせるだけの強いプラーナを持つ者を召喚する」 無論、候補者の選択は慎重に行われた。 しかし、人々は人の心の移ろい安さも十分に承知していたのであった。 特に強大な力を手に入れた者の場合は・・・ だが、今はその事に躊躇して、世界の破滅を指をくわえて眺めている時間は 無かったのである・・・。 そして地上、20世紀も終わりを告げようとしていた頃、 天涯孤独だが真っ直ぐな少年、安藤正樹は数奇な運命に導かれるのである。