前回、堀内孝雄さんの「河」の項でも紹介したが、「人生、50からの応援歌」の3部作のうち、「人生半分」「夢なかば」に続く最終作。前2作は、非常に明るい曲想で、
いかにも応援歌的なイメージを強調していたが、今回はマイナー調の曲想の中でも、渋さ、そして、マイナー曲想の中で、力強く生きていこうという意気を感じる曲である。
この曲の特徴は、サビの部分で、バックコーラスで小・中学生くらいの生徒(の声に聞こえる)が歌っている場面である。「人生、50から」の歌、という意味では、ちょうど、
先生と生徒くらいの年のイメージが浮かんで来よう。そして、故郷の小さな学校の校庭に、桜の木が植えられていて、晩秋の日に季節はずれながら力強く咲いている、という
情景を思い浮かべることができそうだ。人生50から、という意味を考えれば、晩秋の季節をモチーフにしたというのは、人生的な時期を考える意味でも大きな意義があろう。
さて、上に、「桜が晩秋の日に季節はずれながら」と記載したが、「冬桜」という種の桜は、実は晩秋の時期に咲き、また、春にも咲く、非常に珍しい種類の桜で、群馬県
鬼石町が本場であり、私も観光で見たことがある。晩秋の夕暮れに訪れて見たのだが、そのときの情景を思い浮かべると、まさに、この曲の世界にぴったりと感じるところで
ある。
22.お母さん(金田たつえさん)
「ふるさと演歌」でおなじみの関口義明先生の作詞で、最近問題になっている「年老いた親の介護」に携わる(主に)娘の立場を描いた作品。最近、このような時事的な問題を
題材にした作品が少ない、という意味でも、希少価値があるといえよう。つい先日、NHK歌謡コンサートでも金田さん自身が「痴呆になった母の姿を思い浮かべて歌う」という
話をされていたが、穏やかで優しい気持ちを歌った作品で、とりわけ、このような体験をされた方、あるいは、現在このような立場にいる中高年の方々(特に女性)にとっては、
思い入れをしやすい曲であろう。
最近、犯罪などの社会問題が増えている原因も、若者を中心に、このような感謝の気持ちを歌った作品の「詩の心」が分からない人が増えていて、切れやすい性格で、短絡的な
思想に走りやすい傾向にある点も一因になっていると思われるのだが、まだ、若者には、親への感謝の念、が分からない部分もあるかとは思うのだが、このような作品を世に広め
ることによって、少しでも感謝の心を育てることは、社会全体にとっても非常に重要だと考えられよう。
23.狼たちの遠吠え(森進一さん)
長渕剛さんの作詞・作曲で大変話題となっている。とりわけ、昨年、紅白歌合戦で長渕剛さんが久々の出演ということもあり、リリースしてから間もない新曲としては異例の形
で、紅白の舞台で長淵さんとの共演が行われた。その効果もあり、銀座の山野楽器(この店の場合、サラリーマンなど、中高年の顧客も多い)では、なみいるJ−POP系楽曲を
抑えて、堂々のセールスNO1に輝いた時期があった。普通、紅白歌合戦では、その年の新曲、といっても、歌い収めの意味が大きく、リリースして間もない楽曲が歌われるのは
稀なケースなのだが、この楽曲があまり知られていない時期に、視聴率の高い「紅白」の舞台で、今までの演歌と大きくイメージの異なる部分がアピールされたことが、この曲の
宣伝に大きく貢献しているといえよう。
さて、「遠吠え」というと、「負け犬の遠吠え」の言葉で使われる通り、タイトルのイメージとしては人生の「敗者」的な部分が現れている、と想像でき、実際の詩の内容から
も、人生の競争に敗れた立場の悲哀を如実に顕している。それでも、人生の敗者は、その中でその人なりに頑張って、自分なりの花を咲かせればいい、というところである。この
内容は、現代の競争社会、また、リストラで苦しむ(特に)中高年男性の生き様を見事に顕している面で、時流にも合っているところだ。くしくも、SMAPの「世界に一つだけの花」
が大ヒットした前年だが、自分は世界で唯一つの特徴を持ち、一つだけの「大きな花」を咲かせよう、という詩想と対比することができそうで、また、昨年の紅白では、大トリが
SMAPの「世界に一つだけの花」だったのに対して、この詩想と対比される「狼たちの遠吠え」が前半のトリを飾ったのは、番組構成上からも大変意義があったと考えている。
24.Dream・風に吹かれて・・・(吉幾三さん)
最新曲という意味では、少し語弊があるかもしれないが、最近有名になったCMソングの2曲を紹介しよう。「Dream」といえば、新日本ハウスのCMソングとして全国の皆様にも
おなじみになっており、しかも、かなりインパクトがあったせいか、現在、ヤクルトスワローズの鈴木健選手の応援テーマ曲にもなっている。また、「風に吹かれて」は、最近の
吉幾三さんのCMソングとしては第2弾となり、ワークマンのCMソングとして使われている。
実際に、初めて「新日本ハウス」のCM(当時は、吉幾三さんの姿と、バックの歌唱がほとんどだったが、現在のCMでは、家族とのふれあいのイメージとか、携帯電話の着信音
に「Dream」が流れるシーンもある)を見たときは、吉幾三さんがこんな歌を作っているんだ、という驚きのイメージはあったのだが、現在では全国国民が知っている歌になった。
今回、「Dream」が成功したことの大きな点は、最近の演歌は国民的にもあまり知られていない(吉幾三さんのほかの最近の歌も、国民的には知られていないことが多い)だけに、
演歌歌手、及び、演歌業界としての宣伝ができたことにある。それほどインパクトがあったという意味では大きかったのだが、それだけに、この曲が話題になったその年に、
演歌歌手として常連だった紅白歌合戦から吉幾三さんが落選したことは残念だった。
さて、曲調は、「Dream」「風に吹かれて・・・」ともに、アップテンポの元気のよさが売り物で、吉さんが歌わなければ「J-POP」に分類されるのは明らかだが、詩想的には、若い
歌手が歌ったり、また、人生経験の少ない作詞家が作れるものではない。というのは、両曲とも家族的な雰囲気を映し出しており、人間としての原点を表現しているからである。
その意味で、人生経験豊富な吉幾三さんが歌っているからこそ、歌の良さが表現されているといってもいいだろう。そして、CMソングとして起用した「新日本ハウス」「ワークマン」
としても、企業として、また、業種的にも、意義深いものと思われる。
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