演歌復権への道1

1.(第2の吉幾三さん編)  2.(ふるさと演歌編)  3.(マスコミ対応編1)
4.(マスコミ対応編2)  5.(2000年の新番組編)  6.(30代男性歌手編)
7.(ふるさと演歌編2)  8.(第2の「孫」編)  9.(紅白歌手リストラ反対編)
10.(NHK歌謡コンサート編) 演歌復権への道2へ 演歌復権への道3へ  目次へ

1. 第2、第3の吉 幾三を発掘せよ!!

 現在の音楽業界では、アーティストたちが、自作の曲や詩を作品として発表している例が多く見られる。 今はやりのR&B(例えば、宇多田ヒカル)とか、ビジュアル系(例えばGLAY)とかは、多くが、自身の作詞、作曲である。 そうでなくとも、別のアーティストが同時に作詞、作曲を手がけているものである。このようにする 利点は、詩と曲が同じ人が作っているため、曲想と詩の情感が一致するうえ、生活や、社会情勢に一致した歌が生まれやすいという点にある。 では、演歌業界はどうかといえば、ほとんどが、歌手、作詞、作曲が別々である。しかも、男性の作詞家が女性の恋の歌を詠う という例が日常茶飯事に行われている業界である。これではヒット曲など生まれる可能性は少ないといわざるを得ない。だから、川中美幸さんや細川たかしさんが ヒット曲を出したとしても、弦哲也先生の曲であり、たかたかし先生の詩でしかないのだ(川中美幸さん、細川たかしさんファンの方ごめんなさい)。
 しかし、演歌業界でも、歌手自身が作詞、作曲を手がけている例もある。その最たる例が吉幾三さんである。彼は、自身で作詞、作曲を手がけ、それを自分で歌う、 音楽業界では当然のように行われていることができるのである。だから、彼の詩や曲には他の歌手の歌にはない情感を感じ取ることができるのである。 ところが、演歌業界にはこのようなことができる歌手が少ない。多分、このようなことのできる歌手は演歌には流れないだろうと思われるためだが、 このような中でも、少数派は存在する。作曲家・堀内孝雄(彼は、荒木とよひさ先生の詩で、「はぐれ刑事純情派」のテーマソングを毎年歌っている)や、 作詞作曲家・原譲二(北島三郎)といった具合だ。このような歌手が演歌業界で次々に現れ、メジャーになっていくことが必要である。 このことに演歌の将来がかかっているといっても過言ではない。第2、第3の吉幾三が出てくること、これが、演歌業界復権の鍵を握っているのである。

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2. ふるさと演歌を大切にせよ!! 

(北国の港酒場の恋物語はもうたくさんだ!!) 

 最近の演歌を聴いていると、どれもこれも同じような曲想、詩想に聞こえてくることに落胆させられる。これが、現在の演歌低迷の一因を作っているように思えてならない。 演歌で出てくる代表的な場面といえば、北国、酒、恋愛、そして海(港)の4つであるが、演歌とは、この4つの場面を組み合わせただけのものなのかという感情を 持ってしまうのである。しかも、ひとたびヒット曲が出ると、その2番煎じ、3番煎じを狙って同じような演歌をリリースするといった現象も見られる。 例えば、川中美幸さんの「君影草〜すずらん〜」は「二輪草」の続編だし、私が大好きな、堀内孝雄さんの「続・竹とんぼ〜青春(ゆめ)のしっぽ〜」は明らかに 「竹とんぼ」の続編である。
 このようなことは、その昔からも行われていたことで、演歌に出てくるふるさとなどは、その典型的な例といえる。演歌に出てくる ふるさとの代表的な場所といえば、津軽地方だが、「リンゴ追分」から、「津軽海峡・冬景色」、「津軽平野」、「津軽の花」と続いてしまうと、青森県には津軽 しかないのかとも錯覚してしまいそうである。実際、本州最北端は、津軽半島の竜飛岬ではなく、下北半島の大間崎であるし、青森県には、八戸(三八上北)や、 十和田地方もあるのだ。それだけではなく、47都道府県それぞれにふるさとがあるはずだ。
 ところが、演歌に歌われる地方というのは、その中でも一握りしかない。 それも、前に記した北国、酒、恋愛、そして海(港)の場面との組み合わせで詠われるといったのがほとんどである。私は、現在横浜に在住しているが、 横浜の名曲が多いのは、まだ恵まれている。でも、もっと別の場面、場所を詠えないのかとも思ってしまうのである。演歌復権のためには、まず地域に根ざした歌 というのが必要だ。サッカーJリーグも、地域密着を理念に掲げているのだ。演歌業界も、地域密着を理念に掲げてふるさと演歌を大切にしてほしいと思う。 それも、47都道府県にそれぞれの地域に根ざした歌を作り、地域に愛される歌を発展させていってほしい。これは、歌謡曲では、演歌業界でしかできないことなのだ。

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3. マスコミはもっと演歌のよさを取り上げよ!!

(その1)

 1999年のテレビ演歌関連の出来事で、私が一番衝撃を受けたのは、「TBS系・流行歌99”打切り事件」であった。TBS系・流行歌99”とは、 毎月末の月曜深夜(明けて火曜)に行われた、深夜番組としては珍しい演歌番組であった。月1回だけの放送だけに、演歌ファンとしても待ち遠しい番組であった。 これだけならば、番組改編の影響だから仕方ないと諦めもつくものだが、私が激怒したのは、改編されて代わって入った番組が、レギュラー番組の再放送だったと いう点である。これには、「演歌はレギュラー番組の再放送より放映する価値がないのか」と激怒した次第である。確かに、演歌歌手は、超メジャー級になると、 ギャラが高いので、テレビ局としても深夜番組の予算を考えると、打切らざるを得ないという事情もあるのだろうが、この番組は、若手演歌歌手の登竜門になっていた という点は注視しておいたほうがいい。これで、若手演歌歌手の登竜門としてのテレビ放送、これをしてくれるテレビ局は、NHKと、テレビ東京系だけといっていい 状況になってしまった。しかも、テレビ東京系は、大都市だけのネットなので、地方で演歌にテレビで触れ合うとしたら、NHKの「ふたりのビッグショー」 「歌謡コンサート」ぐらいでしかできないところもあるだろう。これは、ほとんど視聴率だけを基準にテレビ番組を製作するという各テレビ局の考えの弊害ともいえる のではないだろうか。(続く)

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4. マスコミはもっと演歌のよさを取り上げよ!!

(その2)

 若手演歌歌手の登竜門という意味では、2000年1月11日に放送されたNHK歌謡コンサートは大きな意義を持った番組であったといえる。有名演歌歌手2名 (細川たかしさん、坂本冬美さん)の応援のもと、10人の若手演歌歌手が、自分の持ち歌を披露するといった構成であったのだが、現在の歌謡番組を見ると、 いかに演歌を取り上げるテレビ局が少ないかということが良くわかる。まず、メジャー民放ネット局が、普段の歌謡番組の中で、演歌を取り上げることはない。 演歌を取り上げても、視聴率がその部分だけ下がるということが見え見えだからだと思われるためである。例えば、テレビ朝日系「はぐれ刑事純情派」テーマソング になっている堀内孝雄さんの歌が、同じテレビ朝日系で放映されている歌謡番組「ミュージックステーション」で取り上げられたという話は、最近に限っていえば 聞いたことがない。同じ系列局で放送されている番組なのだから、番組の宣伝にもなるはずなのにもかかわらずである。ドラマで主題歌になっている数少ない演歌 であるということを考えれば、このような番組でこそ、演歌を宣伝できる数少ないチャンスであるとも思われるのである。他の歌謡番組でも、演歌の大物が出演すると いう話はあまり聞かず、結局、NHKかテレビ東京系に頼るといった状態が浮き彫りとなってしまうのである。そのため、テレビで演歌に触れる機会が極端に少ないと いう点が、人々を演歌から遠ざけ、演歌の現状を作り出しているともいえるのではないだろうか。

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5. 2000年の新番組に期待

 

 2000年4月17日(正確には、深夜番組なので、日が明けて4月18日)から、関東地区だけの限定ではあるが、フジテレビで、毎週月曜深夜に(正確には火曜に なってから)「エンカな気持ち」という番組がスタートする。内容は、藤あや子さん、香西かおりさん、伍代夏子さん、坂本冬美さんが、毎週司会を代わりながら、 男性演歌歌手をゲストに迎え、歌とトークを繰り広げるというものである。久々の演歌系新番組と言うことで、期待も非常に大きい。この番組には、従来の番組には ない、新しい試みがなされているということがいえよう。まず、フジテレビという、今までは、演歌というジャンルには一番縁遠いと思われていたテレビ局が、 そのジャンルに目をつけて、新しい傾向の番組を作ったということに意義がある。これも、「孫」の大ヒットという追い風が、演歌に吹いたということを受けて のものと思われるが、確かに、演歌の女性歌手というのは、歌以外でも、視聴率を取れそうな存在であるとは思う。なにしろ、美人が揃っているし、トークも、 他の業界ではない、大人の魅力ということが備わっているといえるからである。
 ここで、深夜番組で、関東地区のみ限定放送ということ、また、6ヶ月間だけという 期間限定もついているだろうと思われる点は、少し残念である。というのは、視聴層が若者中心という深夜番組において、大人の魅力を提供する、演歌の番組が視聴率を とれるかどうかという点、深夜でかつ6ヶ月間だけで、視聴者層を取りこめるかどうかという点などもあるが、すべて、これは、新しい試みということで、試行錯誤の 段階である。仮に6ヶ月で終わったとしても、この番組ができた、という点に意義を感じることができる。もちろん、新しい番組に、視聴者層が入り込み、 ゴールデンタイム(または、プライムタイム)に移ったり、全国放送になったり、となれば、いうことなしである。(筆者注・この番組は2000年9月にて打ちきり)

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6. がんばれ白組30代

 

 1999年の紅白歌合戦の選出メンバーは、現在の歌謡界の問題を反映している構成になった。というのは、白組の選出歌手の年代構成が、極端に偏ったためである。 30代は、確か、TUBEの前田亘輝さん一人だった。あとは、売れている10、20代の若手か、40代後半以降の演歌歌手という構成なのである。すなわち、 白組30代の歌手の層が極端に薄いということを表している。逆に、紅組の方は、30代は、ニューミュージックも、演歌歌手も、かなりのメンバーが選出されていた し、各世代から、バランスよく選出されていた。これが表しているのは、白組(=男性歌手)は、20代以下で、その場のノリのよさとか、外見とか、その当時の見た 目の魅力のある歌手がその時期は売れたとしても、所詮は中身がなく、30代になれば消えて行く運命であるということだ。すなわち、心に残る歌を歌っていない ため、時の流行に左右されやすく、波に取り残されて、忘れ去られることになってしまうわけである。10、20代の歌手は、その時期は、その場のノリのいい曲を 歌っていても、人気を保っていられるが、年を経るにつれ若さという魅力が薄れてくると、その歌の曲、歌詞、歌唱など、中身が問われるのは、当然の話であるが、 残念ながら、今の30代男性歌手には、それができる人材がいないのであろう。
 すなわち、20代で売れた歌手が、中身を極めることができなかったため、消えて 行ったことが、今の30代男性歌手不作の現状につながっているのであろう。その結果、紅白歌合戦の白組メンバーは、いつも同じ顔ぶれの演歌歌手と、その時の 売れたアーティストという構成になるのである。逆を言えば、20代で売れた女性歌手の中には、歌唱や歌詞で勝負して、30代でも売れる(または、30代で歌の 魅力が初めて出る)歌手が多い。これは、30代でも歌手としての魅力、それから、歌唱の魅力が出るからであろう。もちろん、30代になっても変わらないファンの 後押しというのもあるが、これが、男性歌手にも同じものが欲しいわけである。当然、いい曲、歌詞と心に残る歌声があれば、30代男性歌手でも、売れるはず である。このような歌手が出てくることは、今の歌謡界の活性化につながるはずである。これは、演歌に限った話ではないが、30代歌手という条件を考えれば、 演歌が一番行いやすいといえよう。

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7. ふるさと演歌編その2(演歌の似合う風景) 

 

 私の趣味の一つに、全国を鉄道で旅行し、その風景をデジタルカメラで撮影するというのがある。それも、ほとんどが夏、春の時期に青春18きっぷでの普通列車 での一人旅である。全国を18きっぷで回るためには、夜行列車(快速)を使うことが多い。それで、47都道府県のうち、南九州、北東北、北海道、四国の一部 以外は、すべて回ることができた。もし、回ろうと思えば、今上に挙げた地方も、回ってみたいと思うところである。それでは、私がなぜ普通列車での一人旅を好むか というと、普通列車には、特急列車にはない、演歌に似合う風景があるからである。特急では、景色も通りすぎるだけの存在でしかないが、普通列車なら、車窓から 眺める景色も情感たっぷりに味わうことができるからである。さらに、車内の人々も、その地域の人々であり、その雰囲気を味わうことができ、まるで自分が その地域の人になったような気分になれるのである。その風景は、まさにご当地演歌の世界といっていいものである。
 業界も、速度重視のため特急や車での 移動もいいことだが、普通列車での移動というのも考えたらいかがなものだろうか?これは、地域密着、地元ファンの開拓という演歌の理想に近いものではない だろうか。47都道府県にそれぞれの地域に根ざした歌を作り、地域に愛される歌を発展させていってほしいというのは、私の理想だが、海外を目指し、多くの ファンを得るのもいいが、地元の熱烈なファンを得ることの方が、大事なことではないだろうか。ちなみに、私の好きな路線の風景は、大糸線(特に、初春の風景 が好き)、飯田線身延線である。大体、山岳、盆地の路線が好きである。

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8. 第2の「孫」はそこにある

 

 2000年の最もヒットした演歌といえば、なんといっても、「孫」で、100万枚以上の売上を記録したのは、本当に久々とあって、この業界も盛り上がる。のかと 言われれば、そうもいかない。というのは、「孫」クラスの売上を目指そうと、歌手自身、あるいは、業者が日々がんばっているわけであるが、毎年、演歌業界では、 3000枚くらいの演歌CDがリリースされているが、「孫」のようなヒットになれるのは、その中でも1〜2枚というのがこの業界の現実である。もちろん、今の 時勢に合わない、売れない歌が多いというこの業界の苦しさもあるだろうが、そのような現実をクローズアップして、業界の現実をマスコミが報道してしまったことに よるいわゆる「アナウンス効果」によって売れないものが、さらに売れなくなるという相乗効果もあるようだ。そのためか、テレビ業界でも、演歌の番組を縮小する 流れが進んでいるようだ。
 しかし、1年にリリースされる3000枚の演歌CDのうち、売れるのは1〜2枚であっても、売れるべき歌は、もっとあってもおかしく ないのではないかと思われる。このような歌は、テレビ・ラジオによる露出が少ないのが、結果的に売れるべき歌であっても、売れないのではないかと思われること である。幸い、現代はインターネットという便利な道具があるし、活用法によっては、演歌をもっと世に送り出すことはできるのではないかと思われる点である。 もちろん、100万枚売れた「孫」の場合は、口コミでも十分に歌のよさが伝わるだろうが、「孫」とはいかなくとも、成功と言われる、10万枚くらいの売上クラス を目指せる歌の場合は、もっと露出の仕方を工夫することによって、売上を増やすことができるはずである。

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9. 紅白歌合戦・演歌歌手リストラ構想に一言

 

 先日、あるスポーツ誌が、「NHKが、紅白歌合戦出場常連の演歌歌手のうちの一部は、今年限りで卒業させる」という記事を出した。もちろん、「卒業」とは 名ばかりのリストラ構想である。現実に、売上の上がらない演歌業界に対するリストラ構想で、音楽ファンからは、支持する声が多いのが気にかかる。私は、 この案には断固として反対の立場を貫くべきだと思う。なぜならば、紅白歌合戦が、どのようなファンが支持しているかを考えれば明らかになるだろう。やはり、 紅白は、芸達者な常連のベテランがいてこその紅白であるというのが私の意見である。いかに曲が売れていなくても、「常連」で、「芸達者」であるということを 支持しているファンの人が多いからである。このような考え方を持つのは、大体が中高年の人であり、このような旧態然とした業界の体質が、紅白を硬直化させ、 若者の支持を得られない番組にしてしまったという意見もあるだろうが、やはり、紅白は、「常連」がいてこその「紅白」であり、業界の歌手たちも、「紅白出場」 というのは一つの目標であるが、それを達成すれば、「紅白の常連」になる目標が生まれるはずである。
 しかし、この業界は、入れ替わり、立ち替わりが激しいため、 歌唱力だけでは、なかなか生き残っていけないのが現状である。某アイドルグループのように、名前だけは同じなのに、メンバーが絶えず替わっているため、これが 同じグループかと錯覚するような例さえあるくらいだ。もちろん、演歌の業界も、今の時勢に合わない、売れない歌が多いという現実は、受け入れるべきだと思う。 ただ、この演歌業界は、曲というより、「歌手」の「人」で売れている例も多い。その「人」をリストラしてしまうと、「紅白に出場すべき人材」がいなくなって しまうという問題も起こってしまう。恐らく、この案が実現すれば、紅白自体の存続が危うくなってしまうだろう。特に、前も記したように、白組30代歌手の層の 薄さが致命的である。それを考えれば、白組30代歌手の発掘が至上命題になるというわけだが、演歌の歌手は、今までの業界の営業活動の成果か、「人間」として 多くのファンに愛される歌手が多い。それだけに、新たな人材発掘ができるのであれば、「リストラ」という構想もやむを得ないこともあるだろうが、「人材」の いない(はずはないのだが、どうしても「曲」が生まれない)この業界では、やはり出るまでは「常連」に頼らざるを得ない。という結論になるだろう。

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10. どうなる?NHK歌謡コンサート

 

 今日の演歌低迷の時代を受けて、「NHK歌謡コンサート」は生き残れるのか?という心配をされる方もいるのではないだろうか? 確かに、演歌番組自体が 減少傾向にある近年においては、そのような心配ももっともかとも思う。だが、「当分の間」はその心配は不要である。なぜならば、この「NHK歌謡コンサート」 は、NHKの中でも、位置付けは上位のランクに入るからである。というのは、「NHK歌謡コンサート」は単に演歌番組という意味以上の物を持っているためで、 歌手のステータスそのものを表現する重要な地位を持っているのである。そのため、原則として、NHKホールでの生中継(一部は地方ホールでの生中継・録画 もあるが)で、言いかえれば、スポーツのプロ野球、Jリーグの中継と同じような意味合いを持っており、放送の対象が一流歌手という意味になっているというわけで ある。そして、この番組は、めったなことがなければ、放映中止にはならない。例えば、天変地異とか、天皇陛下の崩御とかいう事態があれば別だが、(天変地異に よる放送変更は、公共放送としてのNHKの宿命で、紅白歌合戦でさえ、震度6以上の地震があれば中断するらしい)この番組が予定変更になったという話は、あまり 聞いたことがない。それは、放送中止・中断になれば、出演している歌手のステータスにもかかわってくるためである。だから、臨時ニュースを放送するにしても、 20時45分まではテロップで流し(それも原則チャイムなし。チャイムが鳴ると、聞いている歌の邪魔になり、当然歌手のステータスにかかわるため)その後に臨時 ニュースという段取りになる。
 ただ、心配な面もある。前回も書いたように、一流演歌歌手という存在がなくなってしまったら?ということである。まさに「紅白歌手のリストラ構想」が現実の ものになったら恐ろしい。今現在は、「NHK歌謡コンサート」の視聴率もある程度は取れているようだが、年々その視聴層は高齢化しつつあり、先細りの懸念がある ことも問題だろう。そのような場合に「NHK歌謡コンサート」が生き残れるような状態を作ること。これも必要なことになってくるだろう。

 そして、この「NHK歌謡コンサート」のある火曜日20時の時間帯。ここは、希に見る各テレビ局の番組激戦区となっていることにも注目すべきである。もちろん、 NHK歌謡コンサートは、一流歌手を呼ぶだけあって、番組作りは非常に力を入れているところであるが、各民放局も大物タレントをメインにした番組を制作し、この 時間帯の視聴者獲得を狙っているわけである。民放局で見ると、明石家さんまさん、志村けんさん、ビートたけしさん、所ジョージさん、ジャニーズのタレント、 など、ここの時間のメイン出演者は超のつく大物揃いと言える。そんな中、2001年春をもって、テレビ朝日系列の「たけしの万物創世記」が打ちきりになったのは 残念である。というのは、この「万物創世記」は、テレビ朝日が、「優良推奨番組」として紹介したこともあった、非常に内容の濃い番組だったからである。しかし、 優良番組であっても、裏にあるバラエティ番組の影で、視聴率競争に敗れて淘汰されてしまったわけである。このあたりが、番組の内容の優良さよりも、視聴率偏重で 見るの日本のマスコミの悪しき姿をさらけ出しているともいえるのだが。では、打ちきりにするのがもったいないならば、時間帯を変えればいいと思えるのだが、この 「火曜日20時」の時間帯に大物タレントの「ビートたけし」さんを起用することに意味があるため、メイン出演者の方は変えず、番組の内容の方を一新した、という わけである。
 話を「NHK歌謡コンサート」に戻すと、良質番組よりも、視聴率重視の日本のマスコミの姿を見ていると、たとえ公共放送であっても、第二の「万物創世記」に ならないとも限らない。ま、当面は大物歌手がいるだけに心配はないが、やはり、「30代の男性歌手のヒット」など、上記の演歌活性化がなければ、安泰とも いえないと思う。だからこそ、演歌の新しい風を巻き起こすことは、必ず必要になってくるはずである。  

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