演歌復権への道3

21.楽曲の価値基準とは1 22.楽曲の価値基準とは2  23.時流に合う演歌
24.紅白選考の問題点1  25.紅白選考の問題点2  26.紅白選考の問題点3
27.2003紅白雑感  28.スペシャリストを前面に
29.カップリングをどう生かす 30.2004紅白世論調査
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21.楽曲の価値基準とは1

 

 ところで、今週、長山洋子さんの新曲「じょんから女節」を2回聞く機会があった。この新曲は、「艶」を意識した迫力のある声に加えて、民謡を習っていた長山さんの 得意な分野を生かすべく、長山さん自身が三味線を持って歌う、という技術の見せ場も大きいところだ。火曜日の「NHK歌謡コンサート」と、土曜日の「ふるさと皆様劇場」 でその技術を見ることができたのだが、「ふるさと皆様劇場」の方でも三味線での自身、および、バックでの演奏付き、とは正直思わなかった。というのは、「ふるさと皆様劇場」 の地方公演では、会場自体が小さく、三味線を持ちこみ、まして、バック演奏まで付けるのか?という気がしていたからだ。その意味では、長山さんは、この歌を歌うときは、 少なくとも、「新曲としては」、原則「三味線での自身、バック演奏つき」で行う、という形を取る、ということになるだろう。
 そこで、気がついたのが、「三味線での自身・バックの演奏」は、「CDでは絶対に見られない」という問題点だ。すなわち、長山さんの陣営は、この曲の良さを広める手段と して、「三味線での自身・バックの演奏」を重視している、ということになるのだが、それは、CDでは絶対に伝わらないということなのだ。ところが、「楽曲の価値基準」として 世間で一般的に知られているのは、「CDの売上枚数」で、「CDの売上枚数」だけが、作品の価値を決める「基準」として一人歩きする傾向にある、といっても過言ではない だろう。とすれば、今回の長山さんの新曲のように、「視覚効果」が非常に重要な楽曲の場合、果たして、CDの売上だけを「楽曲の価値」として判断すべきか?というのは 大変な問題になってくるわけである(この点に関しては、年末の有線大賞や、作詞大賞への波及効果も薄いと考えられる)。
 となると、「作品の価値基準」を多面的に見る必要性、という点が非常に重要だと思うのだ。もちろん、CDの売上も重要な基準になるのは間違いないのだが、その他、有線 でのりクエスト回数はもちろんのこと、公演やコンサートでの動員人数や売上高とか(それでも、超一流演歌歌手と比べても、はるかにポイントが高くなりそうなJ−POP アーティストもいそうだが)、また、一時的なランク上位のみならず、ランクイン期間の長さなど、それらの項目を合わせて価値判断をし、その情報を一般に広める、という必要性 が求められているのではないだろうか。
 
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22. 楽曲の価値基準2

 前回、楽曲の価値基準の問題について触れたが、これと同じような問題は、実はテレビ業界にも見られる。というか、テレビ業界については、「一元的な価値基準でしか番組を 評価できない」というのが大変問題になっているといえる。それが「視聴率」という基準である。
 この「視聴率」という基準だけによって、業界全体が動かされる、というのがなぜ問題か?というと、最近の番組(特に、低俗なバラエティ番組や、低俗にバラエティ化された ニュース・スポーツ報道)には、視聴者の目を(悪い意味で)ひきつけることだけを目的としているからである。番組制作者側にとって、「視聴率が取れる」ことだけが最優先で あり、「国民を有益な方向に導く」というマスコミ本来の役割を忘れているから、低俗な番組が氾濫する結果になっている、といえるであろう。「伝えるべきものを伝える」ので はなくて、「数字を取る=売れればそれでいい」という考え方なのだ。そんな姿勢が極端な形で現れたのが、フジテレビのバラエティ番組のコーナーの中で、テレビショッピング をもじって「王監督をかたどった便器」を売り出そうという場面を放映したシーンである。単純に「視聴率」だけのことを考えれば、「アダルト無修正」でも流せば視聴率は跳ね 上がるのは当然だが、これは放送倫理規定に引っかかるのでできない。しかし、今回の「王監督便器」の事件は、番組制作者側の思想としては、放送倫理規定に引っかかりさえし なければ(人の顔を便器にした、という点は、十分、倫理規定に引っかかる事案であるべきだろうが)、それに近い過激なものであっても、率の取れるものなら何でもあり、笑い が取れて、視聴者をひきつけられればそれでいい、ということで、「被害者」となった王監督のことなどほどんど考えていないのだろう。さらに、この問題が表面化して、翌週、 フジテレビの同じ番組に関して、関係者の謝罪の場面を流す(しかし、実際には番組の冒頭で少しだけ流れたらしく、その場面を見られなかった方も多かったらしい)場面を放映 したことにより、普段の視聴率よりも大きい数字が取れたようで、この点について、マスコミ全体は、単純に「視聴率が上がった」という表現をしたのも、大いに問題、といえよ う。
 それもこれも、「視聴率」という基準だけが一人歩きする業界全体の構造に問題があるのでは?と思わざるを得ない。確かに、「良質なもの」と「売れるもの」とは違う、と いうのはあるだろう。しかし、番組制作業界全体に「チェック機能」や、「制裁機能」が働いていないから、このような事件が起こる構造になっているといえるのではないだろう か?その中で、良質な番組でも、「視聴率が取れない」なる理由で打ち切りになるケースもある。全国のPTAが独自に調査する、「子供に見せたい番組、見せたくない番組」の アンケートリストについても、ニュースとして大きく取り上げられることはない(特に、民放のニュースでは見ることはできない。理由は、自局の看板番組が批判されている、と なると、自らの首を絞める結果になるからだ)。例えば、識者による、独自の番組調査で、優良番組をリストアップする、という動きを大きく取り上げる(その優良番組にスポン サーとして提供している会社に関しても、企業のイメージアップにもつながる)だけでも、業界全体の意識が変わるはずである。
 実は、「演歌」との関連で言えば、演歌番組の縮小、あるいは、放映時刻の不便化、という流れも、実は「視聴率」によるところが非常に大きい、と考えられる(NHK歌謡 コンサートなど、NHK関連の演歌番組は以前と同様だが、民放関連は極端に縮小されている)。これも、「識者による番組チェック機能」を加えれば、演歌復権、という流れ も起きても不思議ではないのだが・・・

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23. 時流に合う演歌

 先日、私は横浜のある「インディーズ音楽活動」のライブと、亀戸の夏祭りでの演歌イベントを観覧した。その中で、インディーズライブの中で、「C-express」というバンド グループの「キャリアウーマン」というタイトルの曲を聴く機会があった。この曲の詩の内容は、ある女性が、キャリアウーマンとしてバリバリ働く中で、そんな彼女も、本当は 「女の子(私は、このような表現は好きではないのだが、歌詞として出てくる)」としての心も持っていて、好きな男性には、手料理くらいは作れるように、というものである。 この詩を見て感じるのは、特に、現時代において、女性全体の社会的な状況が変わってきているということだ。その変化は、最近になって急激になっているといえよう。女性も 男性に伍してバリバリ働く、という理想像が出てきているように感じる。
 さて、この詩を見ると、最近になっても、演歌業界が出す作品が依然として変わっていないのでは?ということに気づかされる。演歌の詩の中で描かれる女性像は、現段階になっ ても、好きな男性を待ち、あるいは、妻として尽くして、男性より一歩引いて、という内容がほとんどで、女性から積極的に、能動的に、という内容の詩は少ないといえる。 これは、1つに、この業界の主たる顧客層が中高年女性で、当時の価値観が「女性は男性より一歩引いて」というところだったこと、また、2つ目には、作詞業界も同様の価値観 を持つ方が中心となって活動しているという点もあろう。しかし、このような価値観が、最近の時代では急激に変わっており、変化に業界全体が追いついていない、という面が あり、これでは、少なくとも「新規の顧客」を獲得することは難しい、という感がしてならない。既存の顧客を大事に扱うのは当然大切だが、その中で新規顧客を獲得できない業界 は衰退していくのは、自明の理であろう。

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24. 紅白選考の問題点1

 皆さんもご存知のこととは思うが、つい先日、NHKが年末の大イベント「紅白歌合戦」の出場歌手の選考について、国民1000人を対象に大規模なアンケートを実施して、 それを基準に選考する、ということが発表された。確かに、国民が選んだ人気歌手を選考する、という点だけを考えれば、NHKという、国民の視聴料で成り立っているという 公共性を考えれば本来あるべき姿だろうし、この「アンケートによる歌手選考」も、私としては、大枠では賛成できるところもあるが、今回のやり方には少々問題点もあるかと 思う。
 第一点は、NHKの「歌番組」への意向、ひいては、NHKの求める歌手、というものが国民に十分に反映される社会状況か?という点である。昨年の紅白では、演歌以上に、 一部を除く国民にはなじみのないオペラ歌手も出演していたが、初めてオペラ歌手を見て、「あ、こんな技量のある歌手もいたんだ」と思った国民も多かったと思う。本来、 NHKは、すべての国民に、あらゆるジャンルの歌を分け隔てなく、という意向で歌番組(オペラ=教育テレビで放映される、を含めて)を制作、提供してきたのだろうが、 民放のほうは、売れる=視聴率だけ稼げる歌を、という意向があまりにも極端なので、当然、番組もJ−POPに極端に偏る内容となっている。従って、アンケート結果によって は、今年の紅白はJ−POPに偏った選考になりうるのでは?という危惧である。これが、本来の人気投票の結果ならいざ知らず、問題になるのが、紅白にステータスを感じない アーティストの存在で、国民にアンケートを取って人気上位に来ても、紅白辞退、となればアンケートは何だったのか?ということにもなるのだ。
 第二点は、1000人という規模が、あまりにも小さすぎやしないか?という点である。この選考方法が初めて採用される今年、事もあろうか、極端なケースが考えられる ことになった。今年話題になった演歌の中で、水森かおりさんの「鳥取砂丘」という歌があるが、この歌が舞台になっている鳥取県は、日本の都道府県の中で一番人口が少なく、 日本の人口比率から考えると、1000人のうち、鳥取県民は5人前後なのである。ということは、1000人アンケートで鳥取県民が選ばれる期待値は4〜5人、しかも、 その選ばれた鳥取県民の年代によって、「鳥取砂丘」が選ばれるかどうかが決まることもありうるのだ。同様に、昨年から話題になっている、成世昌平さんの「はぐれコキリコ」 (舞台は富山県、人口比率から見て、富山県民は1000人のうち10人程度)にもこんなことが起こりうるだろう。すなわち、同じアンケートを2度行ったとしても、母集団 に抽出された要素の違いで、誤差が大きくなりうる、というのが問題なのだ。このようなケースを、NHK側が想定していたかどうか?という点が大きな問題だろう。せめて、 この規模の10倍、10000人なら、鳥取県民は50人、そうすれば、ある程度は年代を分け隔てなく、となるだろう。このような重要なイベントでは、極端なケースも想定 した上で、NHK側もこの時期ではなく、もう少し早い時期にアンケートの実施準備を公表してほしかった、というところがある。

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25.紅白選考の問題点2

 今年も、紅白の出場者候補がささやかれる頃になった。昨年は、「紅白改革」という名のもと、「演歌枠削減」が一番目立つ結果となった。ところが、(あくまで視聴率的だけだ が)その改革は、昨年だけで言えば失敗、という結果に終わり、今年、どのような出場者の人選をするかが、改めて注目されるところである。
 結論から言えば、私的な考えだが、昨年削減された「演歌枠」のうち、すべてとはいかないが、一部は戻ってくる、というより、「戻さざるを得ない」ではないだろうか?という のは、昨年、純粋な演歌枠としては9枠削減、という結果になったのだが、その枠のうち、かなりの枠がNHK選定の特別枠に回され、今年、その枠の扱いをどうするかが問題だから である。昨年の場合、NHK歌謡コンサート出場歌手の枠に回された新しい顔は、実は夏川りみさんだけ(復活の田川寿美さんを除く)、夏川さんも「演歌」とはいえないので、この 面でも「純粋演歌」が割りを食った形になるのだが、今年の場合、昨年にあったような「オペラ歌手」、「根強い人気歌手枠」などの特別枠をどうするのか、ということになるのだ が、候補になりそうな歌手がいるのか?ということになる。しかし、この枠をJ−POP系に回すとしても、実は、J−POPもメガヒット不作の時代で、むしろ、こちらの枠も削減 対象になっても不思議でない現状なのだ。となると、この部分も増枠、というわけにも行かないのではないだろうか?良くて現状維持、というところが関の山だろう。また、NHK サイドが紅白出場を切望する歌手でも、紅白出場に意義を感じないJ−POPアーティストも多く、辞退することも多いのである。すると、結局は、昨年削減された演歌枠を戻さざる を得ない、という結論になるのではないだろうか。
 もちろん、今年の場合も、本来の「リストラ」という意味で、血の入れ替えは行われる可能性はあるだろう。従来の常連歌手の中からも、落選歌手も複数出るだろうし、対照的に、 初出場歌手も何人か出る可能性がある。しかし、昨年、私が表現したような「デストラ」のやり方はまずありえないだろう。もし、今年も同様の手が行われれば、紅白視聴者層のうち、 高齢者層の猛反発を食うことは間違いないと思われるからだ。となると、昨年、最終候補に挙げられながら、NHKの露骨な改革へのイメージ戦略で割りを食った演歌歌手の初出場組 が、複数出ることが考えられよう。これは、演歌歌手の業界サイドからも要望が出てくる可能性があるだろう。紅白だからこそ、普段聞けない演歌の価値がある、なのだ。紅白の ステータスは、演歌歌手には非常に大きい(ギャラが上がる)ということもあるのだ。

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26.紅白選考の問題点3

 さて、ついに2003年の紅白出場者が決定した。で、結論を言えば、私の予想通り、昨年削減された「演歌枠」は一部が戻る形にはなった。しかし、この部分には、実は カラクリがあって、全体の枠が8つ増えており、昨年との比較では、演歌枠の割合で見れば同じくらいに落ち着いたのである。
 で、今回の人選を見ると、改めて「白組の層の薄さ」を見事なまでに露呈することになってしまった。具体的には、昨年の「演歌枠見直し」の影響で、吉幾三さん、山川豊さん、 そして(純演歌とは言えないが)、布施明さんが落選したが、今年はそのうち、山川さん、布施さんが復帰、しかし、初出場や、それ以前の出場歌手の復帰はなく(NHK選定の 特別枠は除く)、今年も常連クラスの層の厚さにはね返されて、若手や、新しい歌手の押し上げはなかった、という結論になってしまった(その意味では、マスコミにも取りざた されていた成世昌平さんにはぜひとも出演してほしかった。。。今年一年限りでも、新しい顔が初出場する、という点に意義があるし、いかに2年ものロングヒットも、来年まで は続くような気もしない・・・)。この選考には、NHKの番組制作者サイドにとっても本当に不本意な選考になったと思われるし、これでは、昨年、あれだけの大ナタを振って 演歌歌手を次々に落選させたのは何だったのか?という結果だろう。その点、紅組は、昨年から比較しても、田川寿美さん、中村美律子さんが落選し、水森かおりさんの初出場、 坂本冬美さんは昨年休養からの復帰、他、石原詢子さん、神野美伽さんも復帰というように、演歌の中だけを見ても枠をめぐる競争原理が働いているといえるからである。いや、 演歌のみならず、この業界全体から見ても、紅組には出場させたい歌手が多くいるのに対し、それにバランスを取るべき白組の人材不足は深刻なのだ。昨年の紅白出場組のうち、 特に白組を見てみると、2002年一年限りに終わりそうな初出場組が多く見受けられたのだが、結果的にもそれが当たってしまい、結局、本業は歌手とはいえないバラエティ系 の歌手が、今年の場合は2組選考されることになったし、流行歌系以外の特別枠も(これは白組のみではないが)紅白2組ずつくらい選考される形になった。そして、白組では、 2001年までの常連の復帰、さらには、2002年までの常連演歌歌謡曲系歌手の落選がなかったことにより、J−POP系と演歌系の年齢格差は(実際に開いたかどうかでは なく)、開く傾向がさらに進む流れになったようだ。どこかのサイトで見たのだが、「白組に出られる20〜30代前半の演歌歌手は氷川以外いないのか?」という問題は、本当 に現実の危機になっているのだ。
 (その意味で、来年に向けて、という課題からすると、白組で出場が期待できる歌手として、しかもある程度の知名度がある、という条件を満たす歌手=演歌系歌番組以外にも 特に、NHK以外のテレビ出演をしている歌手、は、私が期待している小金沢昇司さんの他は、香田晋さん、くらいしか見当たらないのかなぁ・・・こうなれば、非常手段になる かもしれませんが、白組に関しては、NHKの強権で、ファンの意向を無視することにつながるのかもしれませんが、10年歌える演歌歌手を育てるための出場枠を作るくらいの ことをしなければいけないのかもしれません。演歌歌手は、前回も書いたように、紅白出場、という地位を与えることが、歌手本人の地位の成長にもなるのです)  
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27.2003紅白雑感

 2003年紅白歌合戦も終わり、紅白に関するいろいろなデータも出てきた。また、NHK総合では初めて、紅白歌合戦の再放送が行われた点も注目だった。
 私が衝撃を受けたのは、2003年12月31日の紅白歌合戦は「視聴率」の面では低迷した、というところだった。というのは、民放の格闘技系の番組に注目のカードが多かった点は あったのだが、お互い同タイプの番組だけに、視聴率の食い合いに終わるとの前予想があったこと、また、一番マスコミ内で注目度が高かった「曙vsサップ」については、格闘技 を専門に見ているファンからすれば、ヒザの故障で相撲界を引退した曙の場合、K1格闘技を専門に闘っているサップ相手にはヒザの故障が致命的になり勝ち目がない、という 下馬評もあったのもある。それだけに、まさか、格闘技に視聴率を食われるとは予想しなかったこともあり、演歌(というより、音楽ファン)としては残念な面も多かった(ただ、 紅白歌合戦のほうも、実は当年の最新曲よりも、以前のヒット曲のリバイバル版の歌唱が多く、その当時にとっては、ファンの心をひきつけるような内容でなかった、という可能性 はありうるが)。逆に、格闘技を放送した民放各局にとって(特に、この企画の「元祖」TBSは)、各局の相乗効果が大きかった、との自信を持つ結果ともなり、今年以降も、 紅白にとっては脅威になるのは間違いないところだ。
 そして、問題はここから。瞬間視聴率で曙vsサップの一戦が紅白歌合戦の視聴率を上回った時間帯があったのだが、この一件をスポーツ紙が一面トップでデカデカと取り上げた 会社があった点だ。昨年来から「視聴率操作問題」が取りざたされ、放送倫理・番組向上機構が、「過剰なまでの視聴率偏重報道」を慎むように、マスコミ(テレビ局・新聞社など) に通知しているにもかかわらず、この有様である。
 逆に、視聴者からの意見として、2003年「紅白歌合戦」は非常に良かった、との感想が多く(無駄なアトラクションがなかった部分も評価された可能性が大きい)、総合テレビ としては異例の再放送に踏み切った点については評価できるところだ。すなわち、私が指摘する「視聴質」の面では評価が高かった、という部分で、それは、「再放送の視聴率」 (第二部=16%)にも現れた、といえるところだ。ただ、その部分については、マスコミ各誌からは大きくは取り上げられていない(視聴率が高かったことで、2003年紅白への 視聴者の評価が高かったという評論もほとんどなされていない)。本来、このような部分をマスコミは大きく取り上げて報道すべきではないのか?という感はあるところだ。
 その意味では、今年年末の紅白歌合戦は大いに注目したい。視聴率的な部分もそうだが、マスコミの「視聴率的な取り上げ方」には、(あまり過剰な取り上げ方をしないか)特に 注目している。そして、NHKには「紅白は再放送ありとは限らない」というイメージを、視聴者に送ってほしいと思う。というのは、あくまで、「再放送は視聴者の要望に応じた もの」であり、また、「あくまで12月31日の本番がメイン」だからである。このようなことが「恒例」になれば、逆に、「12月31日の紅白」がメインでなくなる恐れも大きい、と いうことを指摘しておきたい。  

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28. スペシャリストを前面に

 最近の演歌業界は、若手歌手も「NHK歌謡コンサート」などの歌番組に多く出演する傾向になってきた。島津亜矢さんや、水森かおりさんなど(無論、売上などの面で人気が あるのが大きいのだが)、NHK歌謡コンサートの出演で実績を積んで紅白歌合戦に出場する歌手も出てきて、「歌謡コンサート」の意義が大きくなってきたともいえるところだ。 他の若手歌手にも、「NHK歌謡コンサート」の出演で紅白出演候補予備軍といえる方も多くいる。さらに、若手歌手紹介特番や、中堅歌手紹介特番など、「歌謡コンサート」の 内容もここ2〜3年で大きく変わってきており、また、出場する歌手の実数が増えているともいえる。当然、競争原理も働くことになり、少し油断するとすぐ地位が落ちる厳しい 状況になった、といえるところもある。
 このような状況では、同じような内容の曲想、詩想の作品を歌っていても、競争を勝ち抜くのは難しいと思える。その意味で、「自分はこれだ!!」といえる絶対的な特長を持った 歌手が生き残れる可能性が高いだろう。音域とか、歌う姿勢、衣装、歌手本人の顔、曲想、詩想など、あらゆる特徴が考えられるのだが、その特徴を生かすようなプロデュースを してほしいと思うのだ。もちろん、「これ」といえる特長を持った歌手も、人気を得るには、その特長を生かせる詩想、曲想の歌にめぐり合えることが条件になるだろう。その 意味で、作詞家・作曲家の先生方が、歌手の特長を生かす作品を作れるかどうか、ということも大きな意味を持っているように思えるところだ。現在の業界の考え方では、歌手 本人の特徴を生かすような歌を作っているように思えない、というところがあるからだ。

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29. カップリングをどう生かす

 私は銀座の演歌イベントをよく見るのだが、歌手の方の曲紹介で見られる多くのパターンは、最新曲A面(2コーラスが多い)→(前作A面、代表曲A面、最新曲カップリング) →最新曲A面(フルコーラス)のバージョンである(間のカッコ内は順番が変わることも多い)。すなわち、カップリング曲はあまり目立たない場所におかれるケースが多いのだ。 実際にカップリング曲となると、大ヒット曲のカップリングでもなければカラオケに収録されないこともあり、いつの間にか忘れ去られることも多いのだ。しかし、俗に「B面」 といわれる曲でも、場合によってA面以上の評価を受けたり(ファンサイドからの場合と、業界サイドからの場合、両方考えられる)して、その後A面にシングルカットされること も多い。
 ここからは私の意見だが、「カップリング曲」はカップリングである以上は、A面に関連づけてメインのA面の意味を引き出すほうが良いのでは?と思うところである。そうすれ ば、A面のタイトルの意味、意義がより目立つことにもなるからだ。カップリングにA面との共通項が多くあると、メインのA面を覚えやすくなるというメリットも考えられる。 ところが、結構、A面とまったく別のタイプの曲がB面収録されていることも多く、そのようなケースでは、カップリングB面の存在意義とか、存在理由が見出せないこともある のだ。もちろん、私の意見には異論もあるかと思う。他の方からは、カップリング曲にA面と共通項が少ないまったく別タイプの曲を収録すれば、歌手の多面性が表現できる可能性 もある、という意見もあった。しかし、多面性については、カップリング以外でも、アルバムで表現することもできよう。シングルCDはそうでなくても価格的に高すぎる、という 指摘もある。その意味で、シングルの価値を上げるという意味において、カップリングの意味を考え直す、ということは必要なのでは?と考えられるのだ。

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30. 2004紅白世論調査

 年末まであと2ヶ月くらいとなり、2004年紅白歌合戦の出場者や、年末の音楽賞受賞曲の選考もささやかれる時期に来ている。とりわけ、紅白歌合戦に関しては、チーフプロ デューサーによる横領事件の絡みで不透明な選考基準が問題となったため、透明性を高めるために世論調査(全国から性別、年齢など無作為抽出された国民3600人を選出、出演 してほしい歌手を紅白2組ずつ記入する)を導入し、選出された紅白上位15組に対して優先的に出演交渉を行うという方式に改められた。
 さて、その結果が2004年10月29日に公表された。(選考結果はこちら)大きな特徴を見ると、CD売り上げに 比較すれば、意外に演歌歌手の割合が高いことに気づくと思う。白組一位には氷川きよしさん、紅組一位は天童よしみさんとともに演歌歌手である。氷川さんの場合は世代分け 隔てなく支持を集めているということが大きな要因になっているし、天童さんの場合も世代を超えたキャラクター的魅力が大きな要因になっている。そして、演歌歌手の割合が なんと半分前後(演歌系かPOP系かを分別するのが難しい歌手もいるため)を占めているし、POP系にしても、若者受けする歌手より世代の関係なしに支持を集める歌手が 上位に来ている点も特徴だろう。そして、根強い人気を誇るいわゆる「演歌の大御所」といわれるメンバーがしっかり上位に入っている点も大きな特徴である。すなわち、「演歌」 がいかに日本の文化として強く根付いているか、ということの現れでもあり、「売れない」といわれているほども演歌人気は落ちてないという結果が、この世論調査からも分かる のである。
 もちろん、日本全体が高齢化しているため高齢者寄りのアンケート結果であった可能性がある点、また、若い世代の「紅白に魅力なし」世代(格闘技系番組を見たり、外出を 行う人)が回答を行わなかった人もいる点などは考慮する必要はあろうかとは思うが、この世論調査から見ても、2002年から続く演歌歌手出演割合の削減がいかに世論とかけ離れた ものだったか、という証明にもなりうると思う。もちろん、2001年以前の割合までに演歌の割合を戻すとなると、旧基準に戻ったという世論の反発も出る可能性もあるだろうから、 2002・2003年の33%前後からは、40%前後まで戻すくらいの割合が適当だと思われる。2004年では30組ずつが出演するとなれば、紅白12〜13組くらいは演歌枠になるべきではないだ ろうか?

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