「二つ目は、ねぇ・・・精通は済んだ?」
彼の表情は、「何のことを言っているのだろう?」と言う表情をしていた。


◇◇◇  リツコの研究  その3  ◇◇◇


やはりシンジには、リツコの質問の内容が理解できていなかったようである。
「精通・・・それって何ですか?」
シンジの問いにリツコは、頭を抱えてしまった。
「う〜ん・・・それじゃあ・・・射精の経験は?」
「射精?」
リツコの目の前で、シンジは首を傾げている。
リツコは、がっくりと頭を落としてしまった。
そして少し気を取り直すと、質問の内容のレベルを少し落としてもう一度彼に
尋ね直した。

「じゃあ、今から私が言う言葉のどれかに聞き覚えがある?」
頭の中で、再び単語のピック・アップが開始される。
「マスターベーション、オナニー、自慰、手淫、えーっと、それから・・・え
〜い、シコシコにセンズリ!」
最後の方は、半ばヤケになっていた。

「あっ!」
シンジが、何かを思い出したように声を上げた。
「どう、どれか聞いたことがある言葉があるの?」
リツコは、嬉しくなった。
ようやくシンジとまともな会話が出来そうであるからだ。
「クラスの誰かが、今言ってた言葉のどれかを・・・」
「どれか覚えている?」
「う〜ん・・・忘れました!」
リツコは、ポッカリと大きな口を開けてしまった。

それでも諦めを見せ様としないリツコは、気を取り直してもう一度聞き直して
みた。
「わかったわ、さっきみたいに、もっとわかりやすい表現で質問するわね」
「はい」
「今までに、おちんちんから白いおしっこが出た事があるかな?」
それは、シンジを幼稚園児並みに扱った口調である。

「すごいなぁ〜、そんなものも出せるんですか?」
質問されている当の本人は、ニコニコと笑いながらまるで他人事のようであっ
た。
「私じゃなくて・・・シンジ君・・・あなたの事を・・・」
「すごいなぁ〜、赤木博士ってそんな事もできるんだぁ〜!」
リツコの体からは、完全に力が抜けていった。

「もういいわ、二つ目の質問は無しよ、三つ目に行くわ」
「は、はい!」
元気よく返事をするシンジ。
しかし、次の質問の内容を目にしたリツコは、思わず考え込んでしまった。
「う〜ん・・・」
「どうしたんですか?」
「このままシンジ君に聞いていいのかどうか・・・」
多分、理解してくれない。
かと言って尋ねないワケにもいかない。

「ボク、分からないかも知れないけど、とりあえず聞いてくださいよ」
「う〜ん・・・分かったわ、まずはそのままの質問で尋ねることにするわ」
「はい」
「それじゃあ、今までに夢精の経験は?」
シンジは、初めてリツコの質問に反応を示した。
夢精と言う言葉を耳にした彼の顔が、みるみるうちに赤く染まっていったのだ。

「あ、あるのね!」
シンジは、無言のまま真っ赤な顔で頷いた。
「い、いつ頃?」
ようやくまともな反応を見せてくれたシンジに対して、少し興奮気味のリツコ
は、身を乗り出して問い詰めた。
「本当にみんなには内緒にしてくださいね・・・」
シンジは、彼女と目と目を合わさないで言った。

「だ、大丈夫だから、恥ずかしがらずに話して!」
「はい、それは・・・」
「それは・・・?」
ゴクリ...。
リツコは、固唾を飲んでシンジの答えを待った。

「小学校・・・」
消え入りそうな声だった。
「小学校1年生の夏休みが最後です」
「小学校1年生の夏休み・・・」
シンジの予想外の答えに、リツコの目が点になった。
「シ、シンジ君、まさかとは思うけど・・・夢精の事をおねしょと勘違いして
いない?」
恐る恐る尋ね返すリツコの声には、震えが混ざっていた。

「えーっ! 夢精っておねしょの事じゃないんですか? 」
シンジは、驚いた。
対するリツコの眼差しは、どこか遠くを見ているようであった。
「この前クラスの連中が「朝起きたらパンツが濡れてた」って話しているのを
聞いちゃったから・・・」
シンジは、モジモジと恥ずかしそうにその事について話し始めた。
しかし、かなりのショックを受けてしまったのだろうか、リツコは口を開いた
まま微動だにしなかった。

「そうしたら他の友達が「そりゃあ、夢精だよ」って言ってたからてっきりそ
うだと」
シンジは、照れながら笑って誤魔化していた。
「ふぅ・・・根本的な事から聞かないとダメみたいね」
リツコは、今にもずり落ちそうな眼鏡を、指先で押し戻すと今日の最終目標を
すっぱりと諦める事にした。
相手が悪すぎる。
でもその相手の言葉に、一瞬でも喜んでしまった自分が情けない。

リツコの前のシンジは、丸出しの自分自身を隠そうともしていなかった。
完全にリツコの前で裸でいる事に慣れてしまったのか、ニコニコとしている。
「シンジ君、勃起したことは?って聞いてみてもわからないと思うから」
「はい、勃起って・・・?」
「いいから、最後まで黙って聞いて」
「は、はい・・・」
リツコは、シンジ専用のカルテに向かい黙々と事務的に最後の質問をした。

「おちんちんが、棒のように固くなった事がありますか?」
「は・・・はい」
ぽぉっとシンジの頬が、桜色に染まった。
だが、カルテとにらめっこ状態のリツコは、その微妙な変化に気がついていな
い。

「それは、どんな時ですか?」
「正直に言わなくっちゃいけないんですか?」
「はい、正直に言ってください」
シンジからはまともな返答は返ってこない。
そう完全に思い込んでいるリツコは、まだカルテしか見ていなかった。

「分かりました・・・女の人を・・・」
「はい、わかりま・・・?」
シンジの答えをカルテに書き込み始めた時に、ようやくリツコは、彼が男とし
て目覚めつつある事に気がついた。
「・・・ちょっと待ってシンジ君、今、女の人って・・・」
「はい、言いましたけど、それが?」
「よかったぁ〜!」
リツコは、シンジの両肩を掴んで今にも飛び上がりそう勢いで喜んでいた。
だが、シンジには何故それほどまでにリツコが喜んでいるのかが分からなかっ
た。

「何がよかったのですか?」
「いいから、いいから、じゃあ、今すぐその時の事を思い出して、もう一度お
ちんちんを棒みたいに固くしてくれる?」
リツコは、自分の顔を息がかかるほどまでにシンジの目の前まで近づけ、ニッ
コリと微笑んだ。
微笑むリツコを見ていると、全裸のシンジも何だか嬉しくなって来た。

「は、はい!、やってみます!」
シンジは、元気よく返事を返すと両手を握り締めて下腹部に力を込めた。
リツコは、ワクワクしながらシンジの可愛い子供のような股間のモノに見入っ
ていた。

「う〜ん・・・ふ〜ん・・・」
シンジは、顔を真っ赤にして気張っているものの、リツコが期待している肝心
の部分は、ピクリとも動かない。
「ふぅ〜・・・」
数分後、彼の股間は全く変化を見せないままシンジは大きく息をはいた。

「色々頑張ってみたんですけど、駄目みたいです・・・すいません」
シンジは、照れながら頭をポリポリとかいている。
リツコは、大きく溜め息をつき何かを決意したような目でシンジの顔を見つめ
た。

「分かったわ、シンジ君・・・ちょっと私が「いい」って言うまで目を閉じて
くれる?」
「は、はい」
「じゃあ、閉じて」
「はい」
シンジは、リツコに言われるがままその目を固く閉じた。




SnowLord's Comment

新人太郎さんの新連載、第三弾です。
うーむ、リツコはいずれ都条例で捕まりそうですねぇ(笑)
妙に無邪気なシンジが可愛いので参ってしまいます。
次回はリツコさん自身、体を張ってしまったりするのかな。
あるいは最後までは行かないかも知れないけど、期待と希望は持って続きを待ってます(笑)

みなさんも作品の感想を新人太郎さんまで、ぜひ届けましょう。
宛先は下記または、掲示板「よわシン愛好板」まで。
shinjin@tarou.club.or.jp
新人太郎の書斎

もどる