はじめに

この文書は、T・Sさん制作のシミュレーションRPG「闇鍋企画」の感想です。未プレイの方に配慮して、私がネタバレになりそうだと判断した文章はコメントアウトしてあります。コメントアウトされた文章はソースを表示すれば読むことができるので、ネタバレを気にしない方はどうぞ。

感想

超絶おもしろかった! 先が気になるけど終わってしまうのは悲しいというジレンマを経て、エンディングを迎えたあとはちょっと虚脱状態です。

過去作品の登場人物には敵味方ともに納得のいく決着がつきましたし、「闇鍋企画」の新キャラクターも話が進むにつれて存在感を増していって、最後はしっかり見せ場をかっさらっていきました。大長編ということもあって見所が多く、短い文章ではとても語り切れない感じです。

魅力的なキャラクターも多いのですが、今作からの登場人物で特に好きなのはオーディンさんとミーちゃん、そしてシーちゃんかな。

オーディンさんの第一印象は「なにこの暴君」だったんですが、その原因が数千年にわたって一人で天界を維持してきた重圧と、それを可能にしてしまう際立った優秀さゆえの孤独と傲慢であることがわかってくると、当初の余裕のなさがしだいに変化していく様子が好ましく思えました。主人公のシーちゃんが、本人はアホの子なのに多くの人に愛され支えられているのとは対照的で、まさに裏の主人公といった感じ。ツンデレかわいい。

ミーちゃんはシー海賊団の最古参でありながら、優れた能力や才能を持つ他の仲間とは異なり、魔銃という道具なしでは魔法も使えない凡人。性格的にもぶっとんだところはなく、天界の神々に対しても畏怖のこもった礼儀正しい態度です。そんな彼女はときに引け目を覗かせながらも、親友の力になるために超人どもに混じって行動をともにし、ここぞという場面では見事なアシストで大金星を勝ち取ります。天界すべてを愛したシーちゃんと、他者に能力と服従しか求めなかったオーディンさんの違いを象徴しているのが、この子の存在だと思います。健気かわいい。

シーちゃんはアホの子でみんなのアイドル。本人に際立った能力はほとんどありませんが、どんなところにもきらきら輝く宝物を見つける天才で、悩みを抱えていたり壁を作っている人の心を、素直な言葉と態度でいつの間にか明るい場所に導いています。シーちゃんが進む方向に道ができるのは、その先にある景色を見たいと望む多くの人があとに続くからなのです。

どれほど個として優れていても、力に溺れて自他の心を見失っていれば最強になれない、というのは「昴の騎士」「魔法少女」「闇鍋企画」の三作品に共通するテーマなのでしょうね。多くの人と付き合っている者なら誰だって、独りだけの者は最強の者ではないことを、いつかは解るものだから。そう考えると、テラとオーディンさんはよく似ている気がします。

「闇鍋企画」の基本データ

タイトル
闇鍋企画
対応OS
Windows 95/98/98SE/Me/2000/XP
ジャンル
シミュレーション・ロールプレイング
価格
無料
ファイルサイズ(展開前)
78,754,560 Bytes
制作
T・S
公式サイト
http://space.geocities.jp/soukobankayamatu/yami.html
制作ツール
シミュレーションRPGツクール95
ダウンロード
http://www.freem.ne.jp/win/game/6834