あす期待の複合団体前半、荻原ら最終調整 出場メンバー決まる/長野五輪
ノルディック複合はあす19日に団体戦の前半ジャンプが行われるが、荻原健司(北野建設)を中心とする日本チームの調子も上がってきた。
18日に行われた公式練習では、荻原健が1回目、95メートル50の大ジャンプ。弟の次晴も2回目に94メートルを飛び完全復活をアピールした。
荻原健は、「調子は上々。状況さえ公平であればいいジャンプをお見せできるはず。自分たちのジャンプができるよう全力を尽くす」と話した。
外国勢では、最大のライバル・ノルウェーが、ジャンプでの調子を崩している。エースのビークこそ、K点越えジャンプを見せたが、ルンベルクやスカールは不調。4人そろわない。オーストリア勢もエースのシュテヒャーがジャンプの調子を崩して浮上のきっかけをつかめないでいる。
その中で不気味なのは米国勢。ロドウィックを中心に調子を上げてきた。米国勢は夏に白馬で合宿するなど、長野五輪に照準を絞っているだけに、
その実力は侮れない。
◆荻原兄弟と森、富井
ノルディック複合全日本の上杉尹宏監督は、18日、団体戦(19日前半ジャンプ、20日後半距離)の出場メンバーとして荻原健司(北野建設)、荻原次晴(北野建設)、森敏(野沢温泉ク)、富井彦(雪印)の4人を発表した。飛躍順の詳細は未定だが、荻原健は4番手となる。
◆古川、ジャンプ練習で転倒
18日の最終公式練習のジャンプで転倒、右手中指をはく離骨折し出場メンバーから外れた。
[長野五輪]第13日 複合 団体前半ジャンプで日本伸びず21秒差の5位
団体戦の前半飛躍(ノーマルヒル、K点=90メートル)は、初優勝を目指すフィンランドがトップに立った。サンパ・ラユネンが2回目、94メートル50の大ジャンプを見せた。2位はオーストリア、3位には強豪ノルウェーがつけている。1―3位は、後半距離のタイム差に換算して8秒以内にひしめく混戦。
3連覇がかかる日本は、森敏(野沢温泉ク)が90メートル50の好ジャンプを見せるなどして1回目に2位につけたが、2回目に伸び悩み5位。トップとは21秒差で、メダルを獲得するには2位との差17秒、3位との13秒を覆さなければならず、苦しい戦いとなった。
◇
日本は大ジャンプを期待された荻原兄弟が2回ともK点を越えられず、前半でリードする必勝パターンが作れなかったのが響いた。
金メダルは、トップスタートのフィンランドと8秒遅れの3位につけたノルウェーの争いか。フィンランドは昨季のワールドカップ(W杯)総合王者のラユネンが引っ張るが、個人金のビークら距離が強い選手をそろえるノルウェーがやや有利だ。
森敏「1回目はうまく飛べた。2回目は助走で滑っていないのが分かったが、その中で自分のジャンプをするしかなかった」
富井彦(げん)「緊張したけれど、抑えることが出来た。自分の仕事が出来たと思う。85メートルは飛びたいと思っていた。いいジャンプだった」
荻原次晴「ノルウェー、フィンランドはやっぱり強い。でも、これなら日本も勝てる。後ろが気楽に走れるような状況を作りたい」
荻原健司「五輪初出場の3人が良くやってくれた。自分のジャンプは2回目が良くなかった。ちょっと欲が出たかな。ただ、チャンスはあると思うので、
あすはゴールするまで全力滑走する」
〈ノルディック複合団体の競技方法〉
1チーム4人が2日間で初日に前半ジャンプ(ノーマルヒルを各2回)、2日目に後半距離(フリーの5キロ×4)を行う。
距離はトップとの得点差をタイム差に換算(9点を1分とし、10分の1以下は切り捨て)して、2日目の時差スタート。ゴールする順番がそのまま順位となる。
1998/02/19 読売新聞
[聖火]複合団体前半で意地見せた森、富井 大舞台で"飛躍"/長野五輪
森、富井の若い1、2番手コンビが、持てる力を発揮した。
ノルウェーのルンベルクやオーストリアのシュテヒャーら各国のエースに交じって先ぽう役となった森は、1回目、2位につける90メートル50のK点越えジャンプ。富井は、1回目に87メートル50を飛んで世界戦初挑戦の重圧をはね返すと、2回目にはバックからの風を受けながら、なんとか85メートルまで距離を伸ばした。
団体戦の飛躍順は、森、富井、次晴、健司。この1、2番コンビを決めるには首脳陣の苦悩があった。前日の朝まで、古川、森、次晴、健司の順に固まっていた。個人戦の前半ジャンプで4位に立ち、チームの雰囲気を盛り上げた古川を先ぽうにして、他チームにプレッシャーを与えようとしたのだ。だが、この案は、不運な事故で崩れた。前日の公式練習で古川が転倒負傷したためだ。
まず、迫られた決断は、負傷の古川に代えて大竹と富井のいずれを投入するか。「大竹には、W杯での実績があるが、調子を落としている。
富井は、実績こそないが、白馬に来てから上り調子。ただ、大観衆の前で、世界経験のない富井が力を発揮できるのか?」(斉藤智治ヘッドコーチ)。この結論は早かった。「苦労をともにしてきた選手。最後まで富井を信じよう」
次の決断は、1番手にだれを置くか。ライバルがエース級を置くのは明らかだ。日本にとって次晴を3番手に温存できれば、心強い。
ただ、それに代わる1番手に、森、富井では若過ぎる。斉藤コーチは考えた。「個人戦で失敗した森にかけよう。あいつには意地があるはずだ」。2人は期待に十分こたえた。
後半距離とともに、複合日本の未来にまで明るい光を投げかける、若い2人の活躍だ。(下山田郁夫)
1998/02/19 読売新聞
ノルディック複合 団体ジャンプ 日本5位、トップと21秒差
(白馬村八方・白馬ジャンプ競技場)
9:30 スタート
四人が2回飛んだ平均点で争う団体の前半飛躍を行い、フィンランド(マンティラ、マンニネン、ヌルメラ、ラユネン)が、2回目にラユネンの94・5メートルなどで226・5点で首位に立った。
1回目で2位につけた日本(森、富井、荻原次、荻原健)は2回目も安定したジャンプをしたが、距離を伸ばせず223・3点で5位、後半距離のスタートでフィンランドに21秒差をつけられた。
エースのシュテヒャーが最長不倒の96・5メートルを飛んだオーストリアが首位と4秒差の2位。距離に強いノルウェーが8秒差の3位、チェコが9秒差の4位と上位は混戦。
◇
ノルディックスキー複合団体は二十日午後一時から、白馬スノーハープで後半距離を行う。5キロを四人がリレーする20キロで優勝を争う。
十九日の前半飛躍はフィンランド(マンティラ、マンニネン、ヌルメラ、ラユネン)が226・5点で首位。オーストリアが4秒差、ノルウェーが8秒差で続き日本(森敏=野沢温泉ク、富井彦=雪印長野、荻原次晴、荻原健司=ともに北野建設)は223・3点で5位だった。日本とフィンランドのタイム差は21秒。
斉藤智治コーチは荻原次を第一走者に起用、森、富井彦の順で、アンカーのエース荻原健につなぐオーダーを決めた。
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▽団体前半飛躍
(1)フィンランド 226・5点
マンティラ88メートル、91メートル
マンニネン88・5メートル、90メートル
ヌルメラ84・5メートル、86メートル
ラユネン86・5メートル、94・5メートル
(2)オーストリア 225・9点(タイム差4秒)
(3)ノルウェー 225・3点(8秒)
(4)チェコ 225・1点(9秒)
(5)日本 223・3点(21秒)
森90・5メートル、85・5メートル
富井87・5メートル、85メートル
荻原次89・5メートル、88メートル
荻原健89メートル、86メートル
(6)フランス 215・8点(1分11秒)
(7)ドイツ 215・3点(1分15秒)
(8)ロシア 206・5点(2分13秒)
(最長不倒はシュテヒャー=オーストリア=の96・5メートルでジャンプ台記録)
1998/2/19 信濃毎日新聞
[長野五輪]第14日 複合 団体で日本が未来につなぐ5位 ノルウェー優勝
後半距離リレー(4×5キロ)が行われ、3大会連続のメダルを目指した日本は5位に終わった。
これまで2大会連続銀メダルだったノルウェーが2位に1分18秒9の大差をつけ、団体戦初優勝を飾った。2位には前半飛躍トップのフィンランドが入り、6番目にスタートしたフランスが3位。3位スタートのノルウェーは第1走者で首位に立つと、個人戦金メダルのビャルテエンゲン・ビークらの快走で圧勝した。
1998/02/21 読売新聞
ノルディック複合団体 ノルウェー「金」 日本5位
(白馬村・スノーハープ)
13:00 スタート
5キロを四人がリレーする団体の後半距離20キロは、前半飛躍で3位につけたノルウェーが第一走者のスカールでトップに立ちそのまま逃げ切って一九八八年カルガリー大会から実施された同種目で初優勝を果たした。
前半首位のフィンランドが2位。フランスが前半6位から3位に入った。
二連覇していた日本は、前半飛躍と同じ5位だった。第一走者の荻原次(北野建設)第二の森(野沢温泉ク)で3位まで上げ、第三走者の富井彦(雪印長野)は一時2位になったが、後半疲れて6位へ。アンカー荻原健(北野建設)の追い上げも及ばず、三大会ぶりにメダルなしに終わった。
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▽団体
(1)ノルウェー
(飛躍(3)225・3点、距離(2)54分3秒5)
スカール 13分38秒6
ブローテン 13分29秒1
ビーク 13分40秒1
ルンベルク 13分15秒7
(2)フィンランド タイム差1分18秒9
((1)226・5点、(5)55分30秒4)
(3)フランス 1分41秒9
((6)215・8点、(3)54分42秒4)
(4)オーストリア 1分53秒1
((2)225・9点、(8)56分0秒6)
(5)日本 2分7秒3
((5)223・3点、(7)55分57秒8)
荻原 次晴 13分55秒6
森 敏 14分4秒5
富井 彦 14分46秒9
荻原 健司 13分10秒8
(6)ドイツ 2分10秒5
((7)215・3点、(4)55分7秒0)
(7)スイス 2分30秒1
((10)199・3点、(1)53分40秒6)
(8)チェコ 2分53秒2
((4)225・1点、(10)56分55秒7)
【評】日本の願う展開にならなかった。フィンランド、ノルウェーが最初から飛ばす気配。集団にはならず、荻原次はチェコと転倒でタイムロスしたオーストリアを抜き3位で中継した。フィンランドはワックスを失敗したのか、二走でノルウェーが早くも独走態勢。日本は森が頑張り、いったん抜かれたオーストリアを抜き返し、中継では3位を保って
フィンランドの直後に迫った。後方からは距離が強いフランスも追い上げ、2位争いが激化した。
三走富井はバタバタした走りのフィンランドをかわし、序盤で2位まで浮上。だがオーバーペース。追い付いたフランスを交えた三つどもえの競り合いで疲れ、急激にペースダウン。反動が大きく、オーストリア、ドイツにも抜かれて6位に落ちた。これをアンカー荻原健が追った。しかし、フィンランドは走力のあるマンニネンが盛り返し、フランスとオーストリアが競り合いながらペースを維持したため、ドイツをかわして5位に上げるのが精いっぱいだった。
1998/2/20 信濃毎日新聞
ノルディック複合 富井ら見せ場「挑戦を買ってやりたい」
富井彦が2位に上がった。降りしきる雨の中、大型画面に見入る大観衆から歓声があがった。飛ばし過ぎの反動で後半に苦しむ富井。今度は画面に向かって「富井頑張れ」「負けるな富井」のゲキが飛んだ。
リレハンメルの金メダルチームから阿部雅司、河野孝典が抜けた。それからは、荻原健司だけが注目され、弧軍奮闘で引っ張った。だが、五輪では新顔の三人が主役で見せ場をつくった。健司一人のチームではなかった。
荻原次晴が落ち着いた走りで二つ順位を上げると、森敏が「ツンさん(次晴)のいい走りをつなげよう」と、気合を引き継いだ。オーストリアとの競り合いを制し、前を行くフィンランドに迫る。メダル圏内だ。
一番若い富井も手と脚がバランスよく回転。上り坂で、とうとう2番手に出た。「フィンランドに食いつくつもりが、フィンランドがどいて(よけて)しまった」のだという。後ろからもフランスが迫っていた。「けん制し合っても仕方ない。行くしかない」。ライバルを引っ張るように集団の先頭を突っ走った。
反動はあまりにも大きかった。「ラスト1キロは体がまったく動かなかった。意識がもうろうとして、早くつなごうと気力だけだった」。6位に落ち、メダルの夢が遠のくタイム差がついた。
レース後、富井は泣きじゃくった。落ち着きを取り戻した後、「今考えると、気持ちが先行したと思う。今後の試合につながるようにしたい」と反省を込めて振り返った。
だが、上杉監督は責めるどころか「頭の中は、とにかく前に行こうだけだったと思う。上りであれだけ一気に追った。酸欠状態だったでしょう」とかばい、「彦がキーポイントになっちゃうけど、前向きにやった。今後につながる。世界の舞台で限界を超えて挑戦したのを買ってやりたい」と評価した。
若手の奮闘を受け、アンカーの荻原健は「メダルのチャンスがあるかもしれない。一つでも順位を上げてゴールするしかない」と力走。「応援してくれた一人ひとりに感謝したい。たくさんの人たちに見てもらいすごく幸せを感じている」と話した。斉藤ヘッドコーチは「二週間前に集まった六人。この六人で、よくここまでやったなと思う。試合の後で『おめでとう』『感動をありがとう』と言ってもらい、我々の力で感動を与えられたんだなと、うれしかった」と締めくくった。
(1998年2月21日 信濃毎日新聞掲載)
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